2022年相場の見通し&2021年振り返りと年間ランキング
2021年の東京株式市場は、新型コロナウイルスの感染状況を横にらみにしつつ、欧米を中心に加速しているインフレが懸念材料として意識され、たびたび不安定な相場展開となりました。
秋口にかけては、自民党総裁選や衆院選挙など国内要因で大きな値動きをみせ、日経平均株価は約31年ぶりの高値圏に浮上する場面がありました。
1月上旬
米財政出動への期待膨らむ
決選投票にもつれ込んでいた米ジョージア州上院選で民主党候補が勝利し、「トリプルブルー」が実現。バイデン米政権下での大型財政政策に対する期待が膨らむ。
2月中旬
新型コロナワクチン承認
国内で米製薬大手ファイザー製の新型コロナワクチンが承認。経済正常化期待が高まり、日経平均株価は約30年ぶりに3万円大台回復。
3月下旬
米10年債利回り急上昇
米債券市場で新型コロナワクチンの普及や追加経済対策に伴う景気回復期待が先行し、10年債利回りが急上昇。インフレ懸念による米ハイテク株売りの流れを受け、東京市場も不安定な動きとなった。
5月中旬
インフレ懸念再浮上
依然としてインフレ懸念がくすぶるなか、米ハイテク株が再び下落。日経平均株価は連日の大幅安となった。
7月中旬~下旬
デルタ株に警戒感
新型コロナの変異株であるデルタ株が世界的に拡大。全体相場の地合いは徐々に悪化していった。
8月下旬
感染急拡大とテーパリング観測
国内でデルタ株の感染が急拡大し、緊急事態宣言の対象地域拡大や期間延長による経済への影響が懸念された。加えて、FRBによるテーパリング(量的緩和縮小)前倒し観測を受けた米株安も波及し、日経平均株価は2万7000円台を割り込んだ。
9月上旬~中旬
政局相場入り
9月に入りマーケットの関心は自民党総裁選・衆院選を巡る話題に向かった。3日に菅首相が自民党総裁選への不出馬を表明すると、次期政権が打ち出す政策への期待感から相場は急上昇、日経平均株価は31年ぶりの高値圏まで回復した。
10月上旬
中国不動産リスク表面化
中国不動産大手・恒大集団のデフォルトリスクが嫌気され、リスク回避姿勢が強まった。商品市況高を背景としたインフレ懸念も改めて意識され、リスクオフの流れが加速した。
11月下旬
衆院選受けリスク選好
注目された衆院選は自民党が議席数を減らしたものの、単独での絶対安定多数を確保。再びリスク選好の流れが強まった。
11月下旬
オミクロン株初確認
南アフリカで新型コロナの新たな変異株(オミクロン株)が確認されたとの報道が嫌気され、一気にリスクオフへと傾く。
12月中旬
米FOMCでテーパリング決定
米FOMCでテーパリングの前倒し終了が決定され、利上げ加速の方針が示された。米国株市場ではハイテク株比率の高いナスダックを中心に軟調展開となり、これを受けて東京市場もさえない展開を余儀なくされた。
2021年相場前半の振り返り 株価に影響を与えたニュースとは
2021年前半の株式相場は、米国株市場でバイデン米政権下での大型財政出動に対する期待感からリスクオンの流れが強まり、これを受けて東京市場も買い優勢でスタートしました。
2月には国内で米製薬大手ファイザー製の新型コロナワクチンが承認され、経済正常化期待が高まるなかで日経平均株価は約30年ぶりとなる3万円大台を回復。
しかし、その後は上値追い継続とはなりませんでした。米10年債利回り上昇に伴うインフレ懸念の台頭により、米国株市場でハイテク株比率の高いナスダック総合指数が調整局面入りとなると、日本株もこれに追随する動きを余儀なくされました。
たびたび急落に見舞われ、5月には連日の大幅安で一時2万7000円台前半まで下落しました。6月にかけて再度2万9000円台半ばまで値を戻しましたが、長引く緊急事態宣言に伴う景気回復の遅れが意識され、上値の重い展開が続きました。
年後半は政局相場入りで上昇基調強まり約31年ぶり高値回復
年後半に入り、相場の地合いは悪化していきました。7~8月に開催された東京五輪・パラリンピックと時を同じくして世界的にデルタ株の感染が急拡大、株式市場はリスクオフ姿勢を強めました。
国内の感染状況が厳しさを増すなか経済再開期待は急速にしぼみ、加えて米連邦準備制度理事会(FRB)によるテーパリング前倒し観測も浮上。
8月下旬に日経平均株価は一時2万7000円台を割り込み、この年の年初来安値をつけました。ただ、ここが「陰の極」となり、全体相場は大きく切り返しに転じることになります。
9月に入ると、マーケットの関心は自民党総裁選・衆院選の動向に向かいました。
同月3日に菅首相(当時)が総裁選への出馬を見送る方針にあることが明らかになると、この日の日経平均株価は584円高と急伸。次期政権への政策期待を背景に株価上昇は続き、約31年ぶり高値となる3万670円まで一気に水準を切り上げました。
その後、米インフレ懸念や中国不動産リスクの表面化により2万7000円台前半まで押し戻されたものの、売り一巡後は衆院選での自民党勝利を受け再びリスク選好の流れが強まりました。
このまま落ち着いた年末相場になるかと思われましたが、新型コロナ変異株のオミクロン株という新たな懸念材料が急浮上。FRBによる早期利上げ観測も加わり、相場環境に不安感が漂うなかでの年の瀬となりました。
2022年の相場はどうなる? 焦点は「FRBの利上げ時期を巡る動向」
さて、2022年の相場はどうなるのでしょうか。オミクロン株の感染状況には目を配りつつも、マーケットの話題の中心はFRBをはじめとする各国中央銀行の金融政策となりそうです。
FRBがテーパリング終了と早期利上げ方針を示したこともあり、これまで過剰流動性を追い風に上昇を続けてきた株式相場は一つの節目を迎えることになりそうです。
神経質な展開を強いられる局面が訪れることも想定されますが、コロナ禍からの経済回復を背景とした良好な企業業績が相場の下支え役となるでしょう。
政治面では、夏に参院選が予定されています。
選挙の結果、岸田政権長期化の確度が高まった場合、国内政治の不安定化リスクが後退する一方、金融所得課税強化などの規制リスクが高まる可能性もあり、プラスマイナス双方の材料を巡るマーケットの反応が注目されます。
海外では、11月の米中間選挙に世界の耳目が集まることになるでしょう。現状では民主党が上下両院の多数派を確保していますが、共和党との議席数の差はわずかです。
中間選挙は与党に厳しい結果となることが多く、「ねじれ議会」となった場合は米政治の停滞リスクが意識されることになりそうです。
このほか話題となりそうな投資テーマを押さえておくこともポイントです。
まずは、半導体や再生可能エネルギー、電気自動車(EV)関連といった投資家の人気が高いテーマに引き続き注目です。
また、デジタルトランスフォーメーション(DX)、人工知能(AI)、量子コンピューターなども折に触れ株式市場をにぎわせることになるでしょう。「フェイスブック」から「メタ・プラットフォームズ」への社名変更が話題を呼び、投資テーマとして高い関心が続くメタバースもマークしておく必要がありそうです。