日経平均は小反発、景気後退懸念くすぶる材料がちらほら

配信元:フィスコ
投稿:2023/01/27 12:19
 日経平均は小反発。18.43円高の27381.18円(出来高概算5億4407万株)で前場の取引を終えている。

 26日の米株式市場でダウ平均は205.57ドル高(+0.60%)と5日続伸。米10−12月期国内総生産(GDP)が予想を上回ったため、景気後退懸念が緩和し、買いが先行。金利上昇も限定的で、投資家心理の改善に伴い終日堅調に推移した。前日に決算を発表したテスラが急伸するなどハイテクも堅調で、ナスダック総合指数は+1.75%と3日ぶり大幅反発。米国株高を引き継いで日経平均は65.66円高からスタート。しかし、心理的な節目の27500円を手前に失速すると、一時マイナスに転じる場面もあった。引け後に発表された米インテルの決算などが重しになったとみられる。一方、国内企業決算の反応は強弱混在で、今後の内容を見極めたいとの思惑もあり、下げ渋ると、その後は膠着感の強い展開となった。

 個別では、外資証券による業界見通しの引き下げを背景に郵船<9101>商船三井<9104>川崎汽船<9107>の海運大手が揃って大幅続落。米インテルの低調な決算を受けてアドバンテスト<6857>ディスコ<6146>、SUMCO<3436>などの半導体関連のほか、イビデン<4062>新光電工<6967>などハイテクの一角が下落。決算が嫌気され、ペガサス<
6262>、ゴールドクレスト<8871>東邦チタニウム<5727>が急落し、大阪チタ<5726>は連れ安。富士電機<6504>も一過性費用の計上による営業減益や産業向け半導体受注の減速が嫌気されて大きく下落。

 一方、ファーストリテ<9983>、日本電産<6594>ファナック<6954>など値がさ株の一角が堅調。丸紅<8002>伊藤忠<8001>住友商事<8053>の商社のほか、コマツ<6301>クボタ<6326>ナブテスコ<6268>など景気敏感株の一角もしっかり。安川電機<6506>は外資証券によるレーティング格上げが観測され大幅高。日産自<7201>は仏ルノーとの資本関係見直しなどの進展が好感され上昇。三菱自<7211>マツダ<7261>なども買われているほか、成長戦略を発表したスズキ<7269>も高い。東京都区部の消費者物価指数(CPI)の結果を受けて日本銀行の政策修正期待が高まったか、三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>、みずほ<8411>なども上昇している。

 決算では業績・配当予想を上方修正した信越化<4063>のほか、業績下方修正もあく抜け感が強まったローランド<7944>が大きく上昇。小糸製作所<7276>も業績下方修正も悪材料出尽くし感から切り返して反発。日東電工<6988>は低調な決算ながらも自社株買いなどが下支えし、大きく下げ渋った。

 セクターでは銀行、化学、卸売が上昇率上位となった一方、海運、精密機器、医薬品が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の47%、対して値下がり銘柄は46%となっている。

 前日の米株式市場は堅調な推移が続き、ハイテク株を中心に上昇。機関投資家がベンチマークとして使用する代表的なS&P500種株価指数は、日足チャートで5本連続の陽線を形成し、上値抵抗線だった200日移動平均線を超えてから、同線上での推移が4日目となった。過去の高値同士を結んだレジスタンスラインも超え、テクニカル的にはトレンド転換を示唆するかのような強さを見せている。

 一方、本日の東京市場は米株高の追い風を素直に反映しきれず、主要株価指数は前日終値近辺でのもみ合いにとどまっている。日経平均が27500円を超えられずに伸び悩んでいるあたり、上値の重さが強く意識される。また、前日は電気自動車テスラが急伸するなど、米ハイテク・グロース株は好調だったが、本日のマザーズ先物も冴えない動き。ここのところの米金利低下や米株高の流れを追い風に、今週は上昇が続いてきたが、米連邦公開市場委員会(FOMC)を来週に控える中、さすがに様子見ムードが強まってきたか。

 前日も米国市場では重要な経済指標や企業決算があったが、総じて景気後退懸念を残す内容となった。米国の10−12月期国内総生産(GDP)速報値は前期比年率+2.9%と市場予想(+2.6%)を上回ったものの、GDPの約7割を占める個人消費は同+2.1%と予想(+2.9%)を下回った。また、GDPから変動の大きい純輸出と在庫を除いた実質国内最終需要は、同+0.8%と、前四半期の+1.5%から大きく減速した。

 ほか、好調が見込まれていた電子決済処理ネットワークのビザとクレジットカード大手のマスターカードの10−12月決算では、カード決済額が市場予想ほどには伸びず、こちらも個人消費の減速を懸念させる内容となった。

 さらに、半導体大手インテルが10−12月期決算は、売上高が前年同期比−32%の大幅減収で、純損益は赤字に転落。PC用チップを扱うクライアントコンピューティング部門の売上高は同−36%だったが、こちらは民生向け市場の落ち込みからある程度は想定線である。ただ、データセンター部門の売上高も3割超える減収となったのはネガティブな印象が否めない。サーバー市場向けなどは年後半からは回復するとの見方を示しているようだが、1−3月期見通しも市場予想を大幅に下回る内容で、全体的に疑念が残る。

 来週はFOMCが開催される。年内の利下げはないと主張する米連邦準備制度理事会(FRB)と、年後半の利下げを予想する市場との間の開きは依然として大きく、FOMC後のパウエル議長の会見などが攪乱材料となる可能性もあろう。日経平均の一段の上昇には新規の好材料が必要だろう。なお、本日引け後にはファナック、ミスミG<9962>日立建機<6305>などの決算が予定されている。米国では12月個人消費支出(PCE)・個人所得、12月PCEコアデフレータのほか、アメリカン・エキスプレスなどの決算が予定されている。
(仲村幸浩)
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配信元: フィスコ

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