クロス取引(つなぎ売り)のやり方や手数料をわかりやすく解説|お得に優待をゲットしよう

著者:みんかぶ編集室 更新:
クロス取引のやり方や手数料をわかりやすく解説

投資の醍醐味のひとつ「株主優待」
ただ、「株主優待で貰ったもの以上に株価の動きで損するのでは?」となかなかチャレンジできない人も多いはず。

そこで、この記事では株価を気にせず「お得に」株主優待をゲットする方法「クロス取引」についてわかりやすく、丁寧に解説していきます。

株主優待のゲット方法と魅力

【準備編】株主優待のゲット方法と魅力

QUOカードや商品券、グルメに旅行券など企業によって様々なお得な特典が受け取れる株主優待。

そんな株主優待は「権利付き最終日※」までに必要な株数を購入し、翌日まで保有することで受け取ることができます。

権利付き最終日までに株を購入

※「権利付き最終日」とは株主優待の権利がもらえる最終日のこと

ただし、株主優待狙いの取引でも株価の変動による影響を受けます。
優待狙いで買った株が値上がりすれば、優待だけでなく利益もゲットできて一石二鳥ですが、逆に損失を出してしまうと、せっかくの株主優待による恩恵が小さくなってしまいます。

ここで登場するのが今回のメインテーマ「クロス取引」です。

クロス取引とは買いと売りを同時に行い、株価の変動による利益と損失を相殺することで、お得に優待を受け取る方法です。

通常取引とクロス取引の違い

※30万円分の取引をGMOクリック証券で行った場合。
※優待換算額は2021年11月時点でのビジョナリーHLD参照。

次の【基礎編】では、クロス取引についてより詳しく解説していきます!

クロス取引とは?やさしく解説

【基礎編】クロス取引とは?やさしく解説

クロス取引は「現物取引」と「信用取引」を組み合わせた取引

クロス取引は、
  • ・現物取引で株を買う→株主優待の権利ゲットする役割
  • ・信用取引で株を売る(空売りする)→株価の下落を帳消しにする役割
この二つを同時に行うことで、株価の変動による利益と損失を相殺します。
(例)株価が2000円の銘柄でクロス取引(100株)をして、株価が1900円になった場合
現物買いの損益:-100円×100=▲10,000円
信用売りの損益:100円×100=+10,000円
合計損益:0円!
株価下落リスクを抑えたクロス取引(つなぎ売り)

このような株価下落リスクを抑えたクロス取引は「つなぎ売り」とも呼ばれます。
ただ、普段は信用取引を行わないという人もいると思うので、「信用取引」についても軽く補足をしておきます。

信用取引には「制度信用」と「一般信用」がある

信用取引には「制度信用」と「一般信用」がある

信用取引では、証券会社に保証金を担保として預けることで、資金や株式を借りて取引することができます。
現物取引とは異なり、資金だけでなく「株式」を借りることができるため、空売りも可能になっています。
そして、信用取引には「制度信用」「一般信用」の二種類が存在します。

制度信用と一般信用の比較
制度信用 一般信用
返済期限 6か月以内 証券会社により異なる
対象銘柄 証券取引所が指定した銘柄 証券会社により異なる
逆日歩(空売りコスト)* 発生する可能性あり なし
在庫制限** なし あり

制度信用とは、証券取引所のルールで取引される信用取引のこと。
一方で、一般信用とは各証券会社が定めたルールで取引される信用取引を意味します。

株主優待狙いのクロス取引では、逆日歩という「空売りによるコスト」がかからない「一般信用」で取引するのが一般的です。

*空売りが活発に行われ、証券会社が保有している株式が足りなくなったときに、証券会社は新たに株式を調達してきます。その調達にかかる費用を「逆日歩(ぎゃくひぶ)」といい、投資家が負担する必要があります。
**一般信用では証券会社ごとに株の在庫を確保しており、空売りできる株数に制限があります。

クロス取引の手数料(コスト)はいくらかかる?

クロス取引の手数料(コスト)はいくらかかる?
優待狙いのクロス取引にかかる手数料は主に以下の4つです。
クロス取引の手数料 概要
現物取引の売買手数料 現物買い/売りにかかるコスト
信用取引の売買手数料 信用買い/売りにかかるコスト
空売りの貸株料 信用取引で株を借りる際に発生するコスト
逆日歩(制度信用の場合) 貸し出す株が不足した際に発生するコスト

ここで、注目したいのが「貸株料」「逆日歩(ぎゃくひぶ)」です。
空売りをする場合、証券会社から株式を借りるレンタル料がかかります。
これが貸株料です。

約定金額に対して年利数%という形で定められ、日割りで計算します。ネット証券では返済期限の長さに応じて1~4%の貸株料が設定されています。

(例)計算式:(約定代金×貸株料(年利)×日数)÷365(日)
・貸株料:0.80%
・約定代金:20万円
・日数:5日間
(20万円×0.80%×5日)÷365日=約21円
貸株料合計:約21円
※GMOクリック証券の場合

一方で、逆日歩は制度信用取引において、証券会社の株式が不足した場合、証券会社が新たに株式を調達するためにかかる費用です。
この逆日歩の金額は毎日変動し、取引が終わるまで正確な金額が分かりません。
株式の不足が著しい場合には、逆日歩が高額となることもありますのでクロス取引が初めての人は「一般信用」を利用するのがおすすめです!

とはいえ、イメージがなかなか湧かない方も多いと思うので、手数料の安さで定評がある「GMOクリック証券」でシミュレーションしてみたいと思います。

(例)30万円分のクロス取引(一般信用を利用)する場合
条件
・貸株料は0.80%
・保有日数5日
・逆日歩なし
この条件の場合、トータルの手数料は、
・現物取引の手数料:260円
・信用取引の手数料:187円
・空売りの貸株料:30万円×0.80%×5/365≒32円
「260円+187円+32円=479円」になります。
※GMOクリック証券の場合

クロス取引ではこの手数料の負担だけで、優待を手に入れられるということです。
最後に、クロス取引のメリットを整理しておきましょう。

メリット①クロス取引では株価が下がっても損失が出ない

株主優待が人気の銘柄は、権利付き最終日の翌日に売られやすく、値下がりリスクが比較的大きくなります。
通常の現物取引では値下がりした分の損失が出てしまいますが、クロス取引の場合、前述の通り損失リスクをほぼ0にすることができます。

メリット②手数料のみの負担で株主優待をゲットできる

現物買いと信用売りを同時に行うので優待はしっかり受け取れます。
コストとしてかかるのは手数料のみで、損失を被るリスクもなく、お得に優待がゲットできるのがクロス取引の一番おいしいポイントです!

クロス取引のやり方!お得に優待をゲットしよう

【実践編】クロス取引のやり方!お得に優待をゲットしよう

それでは、実際にクロス取引のやり方を詳しく解説していきます!

STEP1:一般口座、信用口座を用意する

クロス取引には一般口座と信用口座が必要なので、信用取引をしたことがないという方は、新たに信用口座を開きましょう。
クロス取引におすすめの証券会社は後ほど紹介しますので、口座選びの参考にしてみてください!

STEP2:欲しい株主優待を決める

企業によって様々な優待が用意されているので、興味のある株主優待があるか調べてみましょう。

株主優待を探す

そして、自分が欲しい優待銘柄を選んだら、「いつクロス取引をするか」を考えます。

いつクロス取引をするかを決める

一般信用では権利付き最終日前に株が足りなくなり、空売りができなくなってしまう優待銘柄もあるからです。
人気の銘柄は権利付き最終日の数日前からクロス取引を行うようにしましょう。

ただし、信用取引では保有日数に応じて、貸株料がかさんでいくので事前に手数料を計算するのをお忘れなく。
その際、必ず株主優待の価値よりも手数料の方が高くならないようにすることが重要です。

「試算したコスト<優待商品の価値・値段」になるのは権利付き最終日の「何日前まで」なのかを調べておくと、より計画がスムーズにできます。

(例)
・固定コスト:現物・信用取引手数料:500円
・変動コスト:貸株料:30円/日
・優待品の価値:2000円

この場合、50日間株を借り続けると「1,500円(30円×50日)」+「固定コスト500円」=▲2,000円となり、利益が0円になってしまいます。

なので、最長でも49日前以降にクロス取引しないといけないことがわかります。

こうして、「利益が出る最低ライン」を調べておくのもコツの一つです!

STEP3:寄り付き前(株式市場が開く前)に現物買いと空売りの成行注文を同時に行う

寄り付き前(株式市場が開く前)に現物買いと空売りの成行注文を同時に行う

お目当ての銘柄が決まったら、実際に注文をします。
株式市場が開く前に、現物買いと空売りの成行注文を同時に行います。株式市場が開くと始値(はじめね)で注文が約定し、注文完了です。

STEP4:権利付最終日まで保有

あとは、権利付き最終日が終わるまで保有し続けるだけです。
後場終了(15:00)と同時に注文を出すと権利付与されない場合もあるので、念の為翌日に行うのがポイント。

優待を受け取る権利が確定したら、権利付き最終日の翌日に現物売りと買い戻しの成行注文を行い、取引完了になります。

STEP5:目的の株主優待ゲット!

数か月後に株主優待が送られてきて、お目当ての優待ゲットとなります!

クロス取引の禁止事項・デメリットはある?

簡単に行えるクロス取引ですが、やり方を間違えると不公正取引とみなされてしまうことがあります。そうならないために、いくつかの禁止事項を覚えておきましょう。

禁止事項①ザラ場中(株式市場が開いている時)にクロス取引を行わない

株式市場が開いている時のクロス取引は、株価形成に影響を与える可能性が高く、法律で禁止されている「仮装売買」とみなされる可能性があります。

クロス取引では株式市場が開く前に発注するようにしましょう。

禁止事項②買い注文と売り注文の数量は同じにする

買い注文が売り注文を上回るような不均衡なクロス取引は、株価形成に影響を与える可能性があります。
クロス取引を行う際は、買い注文と売り注文の数量を同じにして、時間を開けずに発注しましょう。

クロス取引をする際は上記のことを念頭に置いて行いましょう。
また、メリットの多いクロス取引ですが、デメリットもあります。

デメリット①保有日数に応じて手数料がかさむ

クロス取引では空売りを行うため、貸株料が発生します。貸株料は保有日数に応じてかさんでいくので、手数料が優待利益を圧迫してしまうことがあります。

デメリット②制度信用では逆日歩が発生することがある

制度信用の場合は逆日歩が発生する可能性があることもデメリットといえます。
逆日歩は取引が終わるまで正確な金額が分からないため、株の不足状況によっては高額となってしまうこともあります。

手数料の負担だけで、優待が受け取れるものの、手数料が高すぎては優待利益が目減りしてしまいます。そのため、手数料が抑えられる証券会社を選ぶことが重要になります。
そこで、次からはクロス取引におすすめの証券会社を紹介していきます!

クロス取引に関するQ&A

Qクロス取引をしつつ配当金はもらえますか?

クロス取引では配当金はもらえません。
現物取引では配当金を受け取ることができますが、反対に信用取引では配当調整金を支払う必要があります。受け取る配当金と支払う配当調整金が相殺されるということを覚えておきましょう。

Qいつクロス取引するのがおすすめですか?

株主優待の価値とクロス取引にかかる手数料を比較して検討しましょう。
クロス取引を早く始めるほど、手数料もかさんでしまいます。必ず「株主優待の価値>手数料」となるタイミングでクロス取引を行うようにしましょう。

Qクロス取引でやりがちな失敗や気をつけたいことを教えてください

クロス取引では指値注文は使わないようにしましょう。
指値注文を使うと、片方だけが約定してしまうこともあり、うまくクロス取引が出来ない可能性があります。クロス取引では相場が開く前に成行で発注しましょう。
また、現物買いと信用売りの数量が同じになっているかをよく確認するようにしましょう。

Qクロス取引はいくらあればできますか?

クロス取引に必要な資金は以下の3点です。

・現物で株を買うための資金
・信用売りの証拠金(約定代金の30%以上かつ30万円以上)
・手数料

例えば、100万円分のクロス取引をする場合

・現物で株を買うための資金:100万円
・信用売りの証拠金:30万円以上
・手数料:数百円~数千円

トータルで130万円以上の資金が必要となります。
必要な資金は銘柄によって異なりますので、「株主優待を探す」を参考に必要な金額を見てみましょう。

この記事の著者
MINKABU PRESS
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資産形成情報メディア「みんかぶ」や、投資家向け情報メディア「株探」を中心に、マーケット情報や株・FXなどの金融商品の記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコンテンツなど幅広く提供しています。
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