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―AI、アバターなど最先端技術が救うニッポンの“おもてなし”―
人手不足が深刻だ。少子高齢化の加速で労働力が減少傾向にあることに加え、ここにきては訪日客が急増しており人手不足に拍車が掛かっている。特に接客に関わる業務は、人員の確保だけではなく窓口スペースの設置などコストも重荷となっている。これを、人工知能(AI)やアバターを活用した「遠隔接客」で解決しようとする動きが加速している。注目される「遠隔接客」関連株の動向を追った。
●オーバーツーリズムも人手不足を助長
最近、耳にするのが人手不足倒産という言葉だ。特に、コロナ禍で人員削減を行った企業は、現在では慢性的な人手不足に陥っているといわれる。なかには業績が堅調な企業であっても、人材が確保できないことにより倒産してしまうケースさえも出ている。こうしたなかで、熱い視線が注がれているのが、深化を続けるAIやチャットボット、そして身近になったアバターなどを活用した遠隔接客だ。人手不足が企業活動にも影響する状況下、株式市場でも早晩スポットライトが当たりそうだ。
帝国データバンクが今月14日に発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2023年10月)」でも、「23年に人手不足を要因とする倒産は、10月時点で206件となり、既に年間ベースで過去最多を更新した」としており、その深刻さが伝わってくる。正社員の人手不足企業の割合は、業種別では インバウンド需要が好調な「旅館・ホテル」(75.6%)がトップとなり、2位が「情報サービス」(72.9%)、「飲食店」も62.6%で7番目となった。同調査では「インバウンドなど観光需要が活況だったことによって人手不足も顕著に表れた」と分析している。
日本政府観光局が15日発表した10月の訪日外客数(推計)は251万6500人となり、新型コロナウイルス感染拡大前の19年同月の水準を初めて上回った。オーバーツーリズムが問題になるなか、労働市場にも大きな影響を与えている。世界に誇る日本の“おもてなし”だが、ここにきては人材の確保が厳しさを増しており、手厚い接客も十分に行えない状況だ。
●ローソンは「アバター」活用進める
こうしたなか、ローソン <2651> [東証P]がアバター事業を展開するAVITA(アビータ、東京都品川区)と協業し、東京、大阪に続き6月には九州エリア初となるアバター接客を店舗に導入し話題を呼んでいる。新たな接客と多様な働き方の実現を目指すもので、アバターを活用した実証実験となる。店内設置のモニターに投影されるアバターを通じて客とコミュニケーションをとり、応対業務に当たっている。1人のオペレーターが、複数店を受け持つなどの効率的な人員配置で、人手不足対策としても有効だ。今後は外国語を話せるオペレーターによる訪日客の接客なども目指し、拡大するインバウンド需要にも対応する構えだ。ローソンでは「(アバターの導入で)時間や場所、性別、さまざまな障害などにとらわれない働き方の多様化が可能になるとみている。実験の検証を行い、他のエリアや他店での実施を検討していきたい」(広報)と話す。
ある、遠隔接客システムを手がける企業でも「アバターによる接客は、ようやくさまざまな施設で見かけるようになった。これから本格的な普及期に入るとみている」と話す。アバター接客は、まだ発展途上の分野といえ未上場企業も多いが、今後市場の急拡大も予想されるだけに、先んじて取り組む企業には目を配っておく必要がありそうだ。
●円谷フィHDの子会社も参戦
今月1日、円谷フィールズホールディングス <2767> [東証P]傘下のデジタル・フロンティアが、ユニキャスト(茨城県日立市)と共同開発したアバター遠隔接客サービス「KSIN(けしん)」について、新たな販売協力パートナーとして個室ブース「One-Bo(ワンボ)」を展開するプラザホールディングス <7502> [東証S]傘下のプラザクリエイトと協業で合意したと発表。個室内でアバターによる接客対応ができる新空間となる。接客スタッフの表情をカメラで撮影しリアルタイムにアバターに反映するもので、そのためアバターを使用しつつも人間に近い表情で、客と自然なコミュニケーションを実現することができるという。興味深い点は、株式市場でも注目度の高い遊技機販売大手の円谷フィHDの傘下企業が共同開発したことで、同社の幅広いフィールドでの活躍に期待が掛かる。このKSINだが、5月にはクリーク・アンド・リバー社 <4763> [東証P]が販売パートナーとして決定している。C&Rは映像・ゲーム分野の派遣と制作が主力だが、幅広い分野に活躍領域を広げており、これも販路拡大に向けて力強い味方となりそうだ。
保険代理店大手のアドバンスクリエイト <8798> [東証P]は今年2月には、前出のAVITAとの提携を拡充し、アバター販売代理店契約を締結したと発表。直近では、10月2日に、AVITAと共同開発したアバターシステムが、東京海上ホールディングス <8766> [東証P]傘下の東京海上日動火災保険が100%出資している東京海上日動パートナーズ東海北陸で試験導入されたと発表。保険代理店では2社目となり、着実に販路を広げていることがうかがえる。
ヒト・コミュニケーションズ・ホールディングス <4433> [東証P]も、グループ企業がアバターなどを活用した遠隔接客事業で攻勢を掛けている。傘下のUsideUが提供するアバター遠隔接客システム「TimeRep(タイムレップ)」は、商業施設、ホテル、公共施設などのさまざまなシーンで導入実績を誇っている。今年4月には、さいたま市のTimeRepを活用した「マイナポイント申請サポート業務」において、延べ2000人を超える利用者に行ったアンケートの結果、「かなり満足」「満足」と回答した割合が85%を超えたと発表。利便性の高さが評価されており、今後の展開に活躍期待も高まりそうだ。
●USENHDなど進化する接客ツール
アバターの活用以外でも、さまざまな遠隔接客の取り組みが進展している。USEN-NEXT HOLDINGS <9418> [東証P]傘下のUSENは、店舗運営事業で、外国語に対応したリモート接客ツール「USENモバイルインターフォン」を展開。客がQRコードを読み取ると自動翻訳付きの通話やチャットが利用でき、背面カメラで映像を見ながら遠隔で接客が可能だ。訪日客が急増するなか、利便性の高いサービスはユーザーのニーズを捉えることになりそうだ。
店舗のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるピアズ <7066> [東証G]は、6月に子会社がTOPPANホールディングス <7911> [東証P]傘下のTOPPANが提供する「VoiceBiz(ボイスビズ)」へオンライン接客システム機能を提供開始。また、同月にはオンライン接客でのチャットGPTを活用したリアルタイムサジェスト機能の開発を開始すると発表している。8月には、同社グループの接客ビッグデータを活用し、接客時の「声調」(声色・口調・語気など)をAIにより分析評価するサービスを新たに開発・提供すると発表するなど攻勢を強めている。
このほかでは、クラウド録画サービスを手がけるセーフィー <4375> [東証G]は、7月に遠隔接客サービス「RURA(ルーラ)」を開発・提供するタイムリープ(東京都千代田区)への出資を行ったと発表。連携強化で「人手不足」という大きな課題を解決することを目指すという。また、ウェブ接客ツール「Branch Pop(ブランチポップ)」を提供するアピリッツ <4174> [東証S]にも注目しておきたい。
株探ニュース
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