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18兆円の巨大市場出現へ「生成AI関連」中期大化け期待10銘柄 <株探トップ特集>

配信元:株探
投稿:2023/10/14 19:30

―オープンAIが鳴らした号砲、人類の10倍の英知が全世界を席巻する日―
 
 週末13日の東京株式市場は主力株中心に目先利益確定の売りに押され、日経平均株価は4日ぶりに反落した。米長期金利上昇を背景とした米株安に追随した形ではあるが、日経平均はその前日までの3営業日で合計1500円も水準を切り上げており、ここは上昇一服場面をはさんだ方がむしろ健全ともいえる。国内では今月末から3月期決算企業の上期決算発表が徐々に本格化してくるが、総じて業績は好調との見方が強く、ここは弱気になる場面ではなさそうだ。押し目は買い下がって報われる公算が大きい。

 選挙を視野に入れて政府が打ち出す政策にも力が入り始めた。特に、世界的に関心の的となっている 生成AI市場の拡大は、国家的にもその育成やルール作りに本腰を入れる必要性が高まっている。日本は今年のG7議長国として、生成AIの利活用や規制のあり方を議論する枠組みを示した「広島AIプロセス」で主導的な立場を明示しており、これからその真価が問われる季節へと移行する。

 政府が今月下旬に策定する新経済対策では、人工知能(AI)の基盤技術の開発強化策や、AI活用を中小企業や医療分野で普及させるための具体策を講じる方針が明らかとなっている。株式市場でも生成AI関連株が再び活況を取り戻すタイミングが近づいている。今回のトップ特集では同関連株に改めてスポットを当て、ここからの株価変身妙味に富んだ有力株を発掘してみたい。

●オープンAIが鳴らした号砲

 米国の新興企業オープンAIが今から約1年前の昨年11月にリリースした「Chat(チャット)GPT」は世界に強烈な衝撃を与えた。チャットGPTはAIが独自に文章を自動作成するソフトで、その文章のレベルがこれまでになく高度でなおかつ要約や翻訳もお手のものという代物であり、リリース後わずか2カ月という短期間で月間ユーザー数は1億人を突破する超人気となった。

 チャットGPTは、米アルファベット傘下のグーグルが開発した自然言語処理技術でAIが膨大な文書データを学習する「大規模言語モデル(LLM)」をベースに高度な文章生成を実現させたものだが、これまでのようにAIを操作するにあたって必要だったプログラミング言語を用いず、我々が日常会話で使う言語でAIに指示することが可能となったことが大きな革新であった。これによって一般の人々とAIの距離感が一気に縮まったことはいうまでもない。

 オープンAIは会社としては歴史の浅いニューフェースだが、既にその名が歴史に刻まれつつあるキーカンパニーといっても過言ではない。ITの巨人マイクロソフトが目の色を変えて巨費を投じていることからもそれは証明されている。マイクロソフトはオープンAIの技術を自社のサービスに実装することで商機を見事に捉えた。

●時価総額を大膨張させた生成AIの化身

 当然ながら、GAFAMの他の面々もマイクロソフトを独走させるわけにはいかず、グーグルは今年3月に対話型AI「Bard」を一般公開して対抗、アマゾン・ドット・コムは4月に独自のLLMである「Amazon Titan」を発表している。また、メタ・プラットフォームズは独自のLLM「LLaMA」を展開し、7月には法人向けにマイクロソフトと提携して新モデル「Llama2」の提供を始めている。

 そして生成AI関連の特需を満喫しているのが米画像処理半導体大手のエヌビディアだ。米国株市場でも生成AIのテーマにおける中核銘柄に位置付けられ、多くのアナリストから非常に高い評価を獲得している。同社はデータセンター向けAI半導体の代名詞ともなっているGPUで、約8割という圧倒的な市場シェアを誇っている。いわばチャットGPTをはじめとする各社AIツールの計算機能をまとめて引き受けている構図ともいえ、これが米株市場において同社株が時価総額を大膨張させ、1兆ドルクラブ入りを果たした背景ともなった。株価は一時米長期金利上昇に伴うハイテク株売りの潮流に揉まれ400ドル近辺まで下押したが、その後は再び上値指向を鮮明としている。なお、同社の23年5~7月期決算では最終利益が前年同期比9.4倍という変貌ぶりで過去最高を更新、マーケットの耳目を驚かせた。ここからの成長伸びしろも大きいとみられている。

●東京市場でツートップを担う半導体2銘柄

 日本株市場では、このエヌビディアのGPU特需と収益面で連動している代表的な銘柄として位置付けられているのがGPU向けテスターをほぼ独占的に提供しているアドバンテスト <6857> [東証P]だ。GPUの演算回路の数、いわゆるコア数はCPUと比べてケタ違いに多いこともポイントで、このコア数の膨張がテスター需要を見た目以上に押し上げることになる。

 このほか、半導体切断・研磨装置で世界トップシェアのディスコ <6146> [東証P]も、最先端パッケージやハイエンドメモリー向けで、今後は生成AI向け特需が大きく収益にオンされてくる可能性が高く、間接的ではあるがエヌビディア関連の一角として東京市場で存在感を高めている。この2銘柄は半導体製造装置関連のなかでも、他社と一線を画す生成AIの勝ち組銘柄との位置付けが不動であり、ファンド系資金などの実需買いが入っていることをうかがわせる。

●ソフトバンクGの覚悟が暗示する近未来

 そして忘れてはならないのがソフトバンクグループ <9984> [東証P]の存在である。同社の孫正義会長兼社長は今月4日に行われた講演で、AIと半導体、ロボティクスを融合した「AI革命」を主導する立場を改めて表明、人間の知能を超越した汎用人工知能(AGI)が「10年以内に現実化し全人類の英知の10倍を達成する」と強調し、その旗振り役を担うことへの意気込みを示した。

 米オープンAIが鳴らしたAI革命の号砲は、海を渡り日本にもはっきりと届いた。倫理的・法律的な問題など対処すべきハードルは残されているが、世界的な開発競争が激化するなか、もう後戻りはできない。孫氏いわく「AGIに取り組んだ企業、人物が10年後、20年後に人類のリード役となる」とし、生成AIで1万件にのぼる特許を出願したことも明らかにしている。

 生成AIの市場規模は今から4年後の2027年にはおよそ18兆円の巨大マーケットに成長するとの試算がある。そして、この4年の月日によって東京株式市場に上場する銘柄群のパワーバランスも激変する可能性が高い。今回のトップ特集では、中長期的に株価を大変身させるDNAを持っている可能性に照準を当て、選りすぐりの10銘柄をエントリーした。

●株価変貌の期待を内包する生成AI関連10選

さくらインターネット <3778> [東証P]

 さくらネットは独立系のデータセンター大手だが、現在はクラウドサービスが収益の主軸で売上高の6割近くを占める。経済産業省からクラウド基盤の整備を目的とした「クラウドプログラム」の供給確保計画で認定を受け、生成AI開発の基盤づくりにおいて同社が整備するスーパーコンピューターの経費の半額を国が助成するという国策関連企業として脚光を浴びた。エヌビディアのGPUを2000基搭載した生成AI向け大規模クラウドインフラの整備に動く計画だ。業績も好調を極め24年3月期営業利益は前期比33%増の14億5000万円で過去最高を更新する見通し。中期的には6月20日の年初来高値1750円を通過点にする展開も。

マクニカホールディングス <3132> [東証P]

 マクニカHDは独立系の 半導体商社だが、売上高は前期実績ベースで1兆円台を突破しており半導体商社として国内トップクラスに位置する。技術発掘力の高さに定評があり、AI関連事業を重点分野とする経営戦略を推進する。AI関連ソフトウェアの販売に傾注し、生成AI関連の雄であるエヌビディアと代理店契約を結んでいることは見逃せないポイント。業績は21年3月期を境に躍進、24年3月期営業利益は伸び率こそ鈍化するものの前期比7%増益の660億円と過去最高を連続で更新する見込み。株価は直近にきて上場来高値圏に浮上しており、戻り売り圧力のない青空圏を走る展開に。

東京エレクトロン デバイス <2760> [東証P]

 東エレデバは半導体を主力とする電子部品商社で、社名からも分かるように半導体製造装置トップの東京エレクトロン <8035> [東証P]が同社の3分の1強の株式を保有する。AI用半導体の需要は今後うなぎ登りとなることが予想され、東エレク傘下の同社の活躍余地は大きい。24年3月期業績は、前期急拡大の反動で小幅減収減益見通しながら、会社側予想は保守的。最終利益は84億5000万円(前期比4%減)の予想を上振れ連続の過去最高更新も視界に入りそうだ。生成AIを安全に利用するための法人向け有償トレーニングサービスなども展開している。株価は最高値街道を突き進み4000円台へ。

PKSHA Technology <3993> [東証S]

 パークシャはAI分野に特化したベンチャーでディープラーニングを活用して業務効率化を実現するアルゴリズムモジュールと、アルゴリズムソフトウェアの開発を主力とする。自然言語処理、画像認識などを強みに企業向けソリューションを提供、急拡大する生成AI市場を追い風に、チャットボットなど高利益率のストック型サービスであるAI SaaS事業で商機を捉えている。業績はトップラインの拡大が顕著で営業利益も22年9月期に前の期比2.4倍と変貌したが、今期以降も成長トレンドが続く見込み。株価は18年1月に最高値8365円(修正後株価)を形成するなど天井が高い。

エンプラス <6961> [東証P]

 エンプラスは精密樹脂加工の電子デバイスメーカーで半導体や光通信分野で実績が高い。半導体の出荷検査に欠かせないコンタクト技術で世界屈指の実力を有し、光学デバイスは生成AI関連のサーバー向け(トランシーバー向け)レンズ需要が急増中で業績に貢献している。23年3月期営業利益は前の期比2.5倍化したが、24年3月期はその反動もあって営業2割減益(70億円)を見込む。しかし、25年3月期は半導体市況の回復を背景に2ケタ増益で切り返す可能性が高い。中期的には生成AI向けを主軸にレンズなど高機能デバイスが成長エンジンとなり収益変貌への期待大、株価も最高値圏を目指す動き。

アイル <3854> [東証P]

 アイルは中堅・中小企業(製造業)向けを中心に受発注などの販売管理システム開発を手掛けるが、業績は絶好調に推移しており、24年7月期は売上高が前期比6%増の169億円、営業利益が同13%増の40億円予想といずれも連続での過去最高更新を見込む。パッケージソフトが堅調な需要を取り戻し、クラウドインフラなどのWebソリューションでも企業のDXニーズを取り込んでいる。売上高ストック比率の増加により利益率も向上している。M&A戦略にも前向きで在庫管理分野での生成AI活用で連携を摸索している状況だ。最高値4075円奪回から一段高も視野に入る。

サイネックス <2376> [東証S]

 サイネックスは地方行政情報誌の発行やふるさと納税代行業務など、地方創生支援ビジネスを幅広く展開する。自治体向けでは住民の質問にAIが自動応答する総合案内サービス「AIチャットボット」の導入を進めており、ここ日本のさまざまな地域・自治体で契約締結の動きが相次いでいる。現状で既に契約数は100件を超えており今後の需要開拓にも期待が大きい。業績も堅調で24年3月期営業利益は前期比7%増の5億2000万円を予想、続く25年3月期も増収増益基調を堅持しそうだ。ここ急動意した後に押し目を形成しているが、PBR0.5倍台は割安で、下値を丹念に拾い4ケタ大台乗せを待つ。

TDSE <7046> [東証G]

 TDSEはビッグデータ解析やAI技術を活用したソリューションを行うほか、AI製品を提供し、企業のDX推進を支援する。チャットボットなどをはじめ生成AIの活用をサービス強化の一つとして推進している。22年3月期と23年3月期は、売上高・営業利益いずれも急拡大傾向を示しており、今期は営業6%増益予想といったん踊り場を迎えるが、来期以降は再び2ケタ利益成長路線への復帰が期待できる。株価は安値圏もみ合いからの離脱が近いと思われ、ボックス上限の2400円どころをブレークすれば上げ足が強まる公算大。

エクサウィザーズ <4259> [東証G]

 エクサWizはAI・DX導入支援ビジネスを展開する。生成AI分野にも積極的で、チャットGPTなどの生成AIサービスを活用するための企業向け研修サービスを行うほか、大規模言語モデルなどを活用して、企業の業務改革や生産性向上を支援する生成AIサービス開発・販売会社を10月に設立し事業を開始している。投資先行で24年3月期は営業赤字が続く見通しながら、トップラインは22年3月期から大幅増収基調が続いている。損益面も25年3月期以降、黒字転換する公算がある。株価の値動きは荒いが400円近辺は底値圏で値ごろ感があり、待ち伏せ買い妙味を内包している。

ヌーラボ <5033> [東証G]
 
 ヌーラボはプロジェクト管理ツールやチャットツールを活用した業務円滑化支援ビジネスを展開している。プロジェクト管理ツールでは働くすべての人が簡単に使える「Backlog」で高水準のニーズを開拓し、生成AIを利用して課題やコメントの要約を行い使い勝手を良くするなどの高付加価値化にも余念がない。業績はトップラインの拡大トレンドが鮮明、利益も前期は人件費や広告費などのコストでいったん落ち込んだものの、24年3月期は営業利益段階で前期比2.2倍の2億1800万円と過去最高を見込む。更に25年3月期は利益の伸びが加速する見通し。株価は1000円台を地相場とする展開へ。

株探ニュース
配信元: 株探
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