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―高配当利回りのバリュー株でキャピタルゲインも狙える銘柄をリストアップ―
2024年相場は個人投資家にとって強力なフォローウインドが吹く。新しい少額投資非課税制度(NISA)がスタートすることで、個人投資家のニューマネーを呼び込むことが予想されるが、同時にベテラン投資家も新たに生じる投資資金の潮流を見極める必要がある。成長投資枠で個別株を買う際にも「戦略」が求められる。
●格段に有利さが増した新NISA
決められた口座で毎年一定金額の範囲内で購入した個別企業の株式や投資信託などの金融商品で利益を得た場合に、税金がかからないというのがNISAという制度だ。今から10年前の2014年1月に開始されたものだが、これが今年からパワーアップして投資家にとって格段に有利な内容となる。旧NISAは「つみたてNISA」が40万円、「一般NISA」が120万円だが、新NISAは「つみたて」部分が3倍の120万円に引き上げられ、「一般」に当たる成長投資枠、つまり個別株に使える枠が2倍の240万円に引き上げられる。非課税期間も制限がなくなるため、売却するまで配当金も課税されないという長期投資家にとって垂涎の制度となる。
また、生涯投資上限(総枠)も旧NISAでは「つみたて」が800万円、「一般」が600万円だったが、新NISAは「一般」に当たる成長投資枠が1200万円と2倍に増額され、「つみたて」との合計で1800万円まで税金がかからないという制度に変わった。これまでは税金を免除してもらう場合、2つの制度のどちらかを選ばなければならなかったが、新制度では併用も可能となる。したがって合計1800万円までなら「つみたて」を利用しながら個別株も買えるということで、株式市場への個人投資家参戦を促す強力なトリガーとなる可能性が高い。
●キャピタルゲインorインカムゲイン
では、新NISAを活用して個別銘柄に投資する際に、どういうスタンスで臨めばよいのか。大別して2つの道筋がある。一つは時価総額の小さい銘柄で将来的な成長性が高いと思われるものに投資して、長期保有によるキャピタルゲイン(株価の値上がり益)を狙う作戦。成長投資枠の総枠が1200万円なので、それを小型のグロース株に集約させ時間を味方につける考え方だ。
そしてもう一つはバリュー株で下値に対する懸念が少なく、配当などの株主還元に積極的な銘柄に資金を投入する手法。こちらはインカムゲイン(長期保有の過程で定期的に獲得できる利益)に照準を合わせたもので、どちらかと言えばリスク回避に重点を置いた安全志向型である。この場合は時価総額の大きい“誰でも知っている銘柄”が好まれやすい傾向がある。
●人気上位は超有名企業のオンパレードだが…
どちらを選ぶかは投資する側の考え方次第だが、過去のデータではバリュー株の範疇にある銘柄に軍配が上がっている。ネット証券大手の店内データによると昨年の旧NISAで選好された銘柄の上位は1位がトヨタ自動車 <7203> [東証P]、2位がJT <2914> [東証P]、3位が三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]だった。言うまでもなく知らない人はいない超有名企業で、トヨタはPER8倍台、JTは配当利回りが5%超、三菱UFJはPBRが0.7倍台とバリュー株としての要素を十分に内包している。トヨタはともかく、JTや三菱UFJは今後の収益成長性という点でそれほど期待はできないが、その知名度と安定性、そしてインカムゲインに対する期待が人気の原動力となっている。
なお4位以下を列記すると、4位・商船三井 <9104> [東証P]、5位・日本郵船 <9101> [東証P]、6位・NTT <9432> [東証P]、7位・みずほフィナンシャルグループ <8411> [東証P]、8位・武田薬品工業 <4502> [東証P]、9位・日本製鉄 <5401> [東証P]、10位・日本郵政 <6178> [東証P]、11位・ソフトバンク <9434> [東証P]の順であった。株価との兼ね合いで、リアルタイムでランキングが変動するのは当然だが、「例年上位に選ばれている銘柄は大体同じような銘柄」(同証券マーケットアナリスト)という。有名企業で高配当が好まれていることを物語っている。
ただ、時価総額上位にランクインしている知名度の高い企業であれば安心感はあるかもしれないが、キャピタルゲインの観点ではあまり妙味がない。今回の新年特集では、プライム市場に上場する高配当利回り銘柄の中から、あえて新NISAド本命の大型株を外し、株価上昇のダイナミズムを内在させた有望株を中小型中心に7銘柄選出した。
●新NISA向けワケあり高配当株7選
◎伯東 <7433> [東証P]
伯東は電子デバイスや電子機器を取り扱う独立系のエレクトロニクス商社で、幅広い商品カテゴリーが特長だが、特に化合物半導体(パワー半導体)の製造装置分野で実績が高い。世界的な脱炭素への取り組みを背景に電気自動車(EV)シフトが加速しており、車載用パワー半導体関連が収益の牽引役を担う形で中期的な成長期待が強い。24年3月期は営業37%減益予想ながら、25年3月期は車載向け半導体の寄与で増収増益路線への復帰が有力視される。半導体周辺銘柄でグロース株の素地を持ちながら5%超の配当利回りは魅力。株価は6000円台指向。
◎東京鐵鋼 <5445> [東証P]
東京鉄は建築用棒鋼を主力とする電炉メーカーで、ネジ節棒鋼の「ネジテツコン」は高い商品シェアで収益に貢献している。また、鉄筋の機械式継ぎ手でも国内トップシェアを誇る。原料コストの上昇はあるものの製品値上げ効果が浸透し、24年3月期は営業利益段階で前期比倍増近い伸びで85億円を見込んでいる。これはリーマン・ショック前の07年3月期以来17期ぶりの高い水準となる。株価も07年以来17年ぶりの高値水準にあるが、PER6倍台、PBR0.7倍台と割安で、配当利回りも5%近くあり依然上値余地は大きそうだ。
◎安藤・間 <1719> [東証P]
安藤ハザマはハザマが安藤建設を吸収合併して誕生したゼネコンで、大型土木を強みとするが、超高層ビルなどの建築分野でも高実績を誇る。業績は足もと停滞期にあるが、国土強靱化の国策テーマに乗ることもあり24年3月期以降、人件費や建設資材コストをこなして再び増益トレンドに復帰しそうだ。25年3月期には売上高が過去最高を更新する公算が大きい。また、株主還元に非常に積極的で、増配を繰り返すなか今期は60円配を計画、配当利回りは5.4%前後に達する。株価は早晩昨年来高値1279円奪回を意識する展開へ。
◎イノテック <9880> [東証P]
イノテックは半導体商社でメーカー機能も有しているのが特長で、半導体設計ツールとメモリーテスターが収益の主柱を担っている。半導体市況の底入れで収益環境の風向きは変わりつつある。24年3月期営業利益は前期比8%増の25億円を見込む。PER11倍台、PBRも1倍を割り込んでいるが、配当増額に積極的で前期は減益にもかかわらず、5円増配を行っている。今期配当は前期と並びの70円を計画するが、利回りに換算して4.2%前後と高い。株価は動き出せば速く、昨年11月27日につけた上場来高値1735円奪回を目指す。
◎バンドー化学 <5195> [東証P]
バンドーはVベルトの大手メーカーで業績は目を見張る高変化をみせている。自動車用ではエアコンやコンプレッサーなどエンジン補機駆動用の伝動ベルトで高い商品競争力を有し、分散技術を発展させたゴムやエラストマーの加工技術にも定評があり、顧客ニーズを開拓している。23年3月期営業利益は前の期比3倍強となる急拡大をみせたが、続く24年3月期も前期比5%増の87億円予想と成長トレンドを継続する。PER、PBRともに割安感が強いほか、株主還元に積極的で今期は68円配当を計画。4.4%前後の配当利回りは魅力で一段の上値が期待できる。
◎タマホーム <1419> [東証P]
タマホームは低価格帯を軸とする住宅メーカーでフリープランの木造注文住宅を主力に展開する。首都圏郊外や地方を主要エリアとしているが、戸建て販売棟数では大手に引けを取らない実績を持つ。成長に重点を置いた経営戦略も評価され30年までに売上高1兆円(前期実績2560億円)という野心的な目標を掲げている。24年5月期売上高は強含み横ばい見通しながら、営業利益は6%増の141億円予想と増益基調をキープする。増収増益基調が続くなか、株主還元も積極的に推進、今期年間配当は185円を計画し4.7%近辺の利回りは魅力。
◎明和産業 <8103> [東証P]
明和産は化学品や樹脂を主力に扱う三菱系の中堅商社 で、24年3月期業績予想は期中に売上高と営業利益を減額した。増収はキープするものの営業減益見通し。ただ、持ち分法適用会社の収益回復が寄与して最終利益は従来予想と変わらず、前期比28%増益を見込んでいる。株価は大底圏にあるが、バーゲンハンティングのチャンス。25年3月期は売上高のほか、営業、経常、最終利益いずれも増益が濃厚。PBRは0.7倍台で配当利回りは4%を超える。底値圏を離脱すれば、滞留出来高の多い800円近辺までは比較的上値は軽そうだ。
★元日~4日に、2024年「新春特集」を一挙、"27本"配信します。ご期待ください。
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