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日経平均は3日続落。304.37円安の27974.72円(出来高概算4億7000万株)で前場の取引を終えている。
15日の米株式市場でNYダウは続伸し、53ドル高となった。機械のハネウェル・インターナショナルや医療保険のユナイテッドヘルス・グループが上昇し、NYダウを押し上げた。ただ、全体としては利益確定売りに押される銘柄も多く、台湾積体電路製造
(TSMC)の決算が市場予想を下回ったことで、特に半導体関連株の下落が目立った。
また、日本国内での新型コロナウイルス感染者数の増加や、ファーストリテ<9983>に業績修正を嫌気した売りが出たことも重しとなり、本日の日経平均は239円安からスタート。寄り付き直後には27847.35円(431.74円安)まで下落する場面があったが、下値では押し目買いも入り、28000円を挟み軟調もみ合いの展開となった。
個別では、前述のファーストリテが4%近い下落。今期営業利益予想を下方修正し、ネガティブ視されている。米半導体株安を引き継いで東エレク<8035>やアドバンテス<
6857>の下落もやや目立つ。その他売買代金上位ではレーザーテック<6920>、任天堂<7974>、ソフトバンクG<9984>などがさえない。また、エーザイ<4523>は米大病院が認知症治療薬の使用を見送るとの報道で売られ、東証1部下落率上位に顔を出している。
一方、日立<6501>が2%超、郵船<9101>が3%超上昇し、トヨタ自<7203>は小じっかり。また、好決算・業績上方修正の中小型株に物色の矛先が向かい、Jリース<7187>、ベイカレント<6532>、サーバーワークス<4434>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。
セクターでは、鉱業、医薬品、精密機器などが下落率上位。一方、海運業、鉄鋼、証券などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の43%、対して値上がり銘柄は51%となっている。
日経平均は連日で3ケタの下落となり、28000円水準での攻防といった様相だ。前日のNYダウは上昇したが、ハネウェルやユナイテッドヘルスの押し上げ寄与が大きく、全体としては「弱さを感じる」投資家が多かったという。それに半導体関連株が連日軟調となり、日本株にとってもNYダウ上昇の恩恵は限定的だ。また、東京都の新型コロナ新規感染者数が連日で1000人を超えたのに歩調を合わせるかのように、ここ2日ほどクレディ・スイス証券が日経平均先物を売り越している。商品投資顧問(CTA)など海外短期筋による売りだろう。東京五輪開幕を前に新型コロナ感染状況には神経質にならざるを得ないところか。ただ、短期の値幅取りを狙った個人投資家の中小型株への物色意欲は根強いようで、東証1部全体としては値上がり銘柄の方が多い。
ここまでの東証1部売買代金は1兆円あまり。相変わらず値動きの割に膨らんでおらず、取引参加者は広がりに欠くと考えざるを得ない。
さて、前日の当欄ではマヨネーズ値上げへのぼやきなどを記述したが、もちろんこれらは単に筆者の身の上を語りたかったわけではない。本日は補足を加えつつ、より重要な投資論点についても挙げておきたい。
消費者マインドのような数値化しづらい「心理」というものをとらえるのは極めて難しい。具体例を挙げれば、コロナ禍直前、2019年10-12月期の日本の国内総生産(GDP)は、「消費増税による反動減は限定的」という大方の予想に反し、前期比年率-7.4%(物価変動を除く実質ベース)まで落ち込んだ。「増税分は社会保障の財源に充てられる(=将来不安の後退)から消費行動には中立的」との識者の見立ては、確かに経済学のセオリーどおりではある。結果的にそうならなかったのは、一部で指摘されたような「消費者が合理的でなかった」ためでなく、「財政の信認」の問題だろう。
余談だが、経済分析についてはする側される側の所得水準や経済圏の隔たりが大きくなってしまったことも、市中心理をとらえづらくなった背景にあるのかもしれない。
そして今回、経済減速の足音を意識する機関投資家が増えつつあるのは、前日取り上げたバンク・オブ・アメリカ(BofA)の7月のグローバルファンドマネジャー調査からわかるとおりだ。しかし、この調査結果の続きも極めて重要である。大方のファンドマネジャーは心理的に経済の減速を意識しつつも、株式や商品の大規模な買い持ち
(ロング)を維持しているという。明確な景気悪化のシグナルやショックらしいショックがないためだろう。
こうしたファンドマネジャーの投資行動は理論的にも説明可能だ。資金提供者とファンドマネジャーを「プリンシパル・エージェント関係」ととらえれば、ファンドマネジャーの行動を決定づけるのは報酬・懲罰体系である。ファンドマネジャーは「一定期間でベンチマークを上回るパフォーマンスをあげる」ことが求められ、かなわなければ解約・資金引き揚げの憂き目にあう。そこから導かれるファンドマネジャーの最適行動は「相場にぎりぎりまで乗り続け、市況悪化となれば一気に降りる」である。昨年前半、踏み上げ相場で痛手を受けたファンドマネジャーが多いだけに、こうした傾向はより強まっているだろう。
ただ、これはなにも海外市場や機関投資家だけの話というわけではない。東京証券取引所が13日発表した9日申し込み時点の信用取引の買い残高(東京・名古屋2市場、制度・一般信用合計)は3兆6041億円と、2018年3月以来およそ3年4カ月ぶりの高水準だという。また、日経レバETF<1570>の純資産総額は短期的な市況変動で増減しつつも、足元3000億円以上の水準を維持している。なお、13日には4183億円とコロナショック直後の2020年4月9日以来の大きさとなった。個人投資家らの買い持ち高も膨らんだままであることがわかる。
とらえづらくじりじり悪化する心理と裏腹に、なお高水準の買い持ち高。これを踏まえ、アップサイドへの期待とダウンサイドリスク、どちらが大きいか冷静に見極める必要がある。
(小林大純)
<AK>
15日の米株式市場でNYダウは続伸し、53ドル高となった。機械のハネウェル・インターナショナルや医療保険のユナイテッドヘルス・グループが上昇し、NYダウを押し上げた。ただ、全体としては利益確定売りに押される銘柄も多く、台湾積体電路製造
(TSMC)の決算が市場予想を下回ったことで、特に半導体関連株の下落が目立った。
また、日本国内での新型コロナウイルス感染者数の増加や、ファーストリテ<9983>に業績修正を嫌気した売りが出たことも重しとなり、本日の日経平均は239円安からスタート。寄り付き直後には27847.35円(431.74円安)まで下落する場面があったが、下値では押し目買いも入り、28000円を挟み軟調もみ合いの展開となった。
個別では、前述のファーストリテが4%近い下落。今期営業利益予想を下方修正し、ネガティブ視されている。米半導体株安を引き継いで東エレク<8035>やアドバンテス<
6857>の下落もやや目立つ。その他売買代金上位ではレーザーテック<6920>、任天堂<7974>、ソフトバンクG<9984>などがさえない。また、エーザイ<4523>は米大病院が認知症治療薬の使用を見送るとの報道で売られ、東証1部下落率上位に顔を出している。
一方、日立<6501>が2%超、郵船<9101>が3%超上昇し、トヨタ自<7203>は小じっかり。また、好決算・業績上方修正の中小型株に物色の矛先が向かい、Jリース<7187>、ベイカレント<6532>、サーバーワークス<4434>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。
セクターでは、鉱業、医薬品、精密機器などが下落率上位。一方、海運業、鉄鋼、証券などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の43%、対して値上がり銘柄は51%となっている。
日経平均は連日で3ケタの下落となり、28000円水準での攻防といった様相だ。前日のNYダウは上昇したが、ハネウェルやユナイテッドヘルスの押し上げ寄与が大きく、全体としては「弱さを感じる」投資家が多かったという。それに半導体関連株が連日軟調となり、日本株にとってもNYダウ上昇の恩恵は限定的だ。また、東京都の新型コロナ新規感染者数が連日で1000人を超えたのに歩調を合わせるかのように、ここ2日ほどクレディ・スイス証券が日経平均先物を売り越している。商品投資顧問(CTA)など海外短期筋による売りだろう。東京五輪開幕を前に新型コロナ感染状況には神経質にならざるを得ないところか。ただ、短期の値幅取りを狙った個人投資家の中小型株への物色意欲は根強いようで、東証1部全体としては値上がり銘柄の方が多い。
ここまでの東証1部売買代金は1兆円あまり。相変わらず値動きの割に膨らんでおらず、取引参加者は広がりに欠くと考えざるを得ない。
さて、前日の当欄ではマヨネーズ値上げへのぼやきなどを記述したが、もちろんこれらは単に筆者の身の上を語りたかったわけではない。本日は補足を加えつつ、より重要な投資論点についても挙げておきたい。
消費者マインドのような数値化しづらい「心理」というものをとらえるのは極めて難しい。具体例を挙げれば、コロナ禍直前、2019年10-12月期の日本の国内総生産(GDP)は、「消費増税による反動減は限定的」という大方の予想に反し、前期比年率-7.4%(物価変動を除く実質ベース)まで落ち込んだ。「増税分は社会保障の財源に充てられる(=将来不安の後退)から消費行動には中立的」との識者の見立ては、確かに経済学のセオリーどおりではある。結果的にそうならなかったのは、一部で指摘されたような「消費者が合理的でなかった」ためでなく、「財政の信認」の問題だろう。
余談だが、経済分析についてはする側される側の所得水準や経済圏の隔たりが大きくなってしまったことも、市中心理をとらえづらくなった背景にあるのかもしれない。
そして今回、経済減速の足音を意識する機関投資家が増えつつあるのは、前日取り上げたバンク・オブ・アメリカ(BofA)の7月のグローバルファンドマネジャー調査からわかるとおりだ。しかし、この調査結果の続きも極めて重要である。大方のファンドマネジャーは心理的に経済の減速を意識しつつも、株式や商品の大規模な買い持ち
(ロング)を維持しているという。明確な景気悪化のシグナルやショックらしいショックがないためだろう。
こうしたファンドマネジャーの投資行動は理論的にも説明可能だ。資金提供者とファンドマネジャーを「プリンシパル・エージェント関係」ととらえれば、ファンドマネジャーの行動を決定づけるのは報酬・懲罰体系である。ファンドマネジャーは「一定期間でベンチマークを上回るパフォーマンスをあげる」ことが求められ、かなわなければ解約・資金引き揚げの憂き目にあう。そこから導かれるファンドマネジャーの最適行動は「相場にぎりぎりまで乗り続け、市況悪化となれば一気に降りる」である。昨年前半、踏み上げ相場で痛手を受けたファンドマネジャーが多いだけに、こうした傾向はより強まっているだろう。
ただ、これはなにも海外市場や機関投資家だけの話というわけではない。東京証券取引所が13日発表した9日申し込み時点の信用取引の買い残高(東京・名古屋2市場、制度・一般信用合計)は3兆6041億円と、2018年3月以来およそ3年4カ月ぶりの高水準だという。また、日経レバETF<1570>の純資産総額は短期的な市況変動で増減しつつも、足元3000億円以上の水準を維持している。なお、13日には4183億円とコロナショック直後の2020年4月9日以来の大きさとなった。個人投資家らの買い持ち高も膨らんだままであることがわかる。
とらえづらくじりじり悪化する心理と裏腹に、なお高水準の買い持ち高。これを踏まえ、アップサイドへの期待とダウンサイドリスク、どちらが大きいか冷静に見極める必要がある。
(小林大純)
<AK>
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