円安背景に頑強展開、薄商いのこう着は継続

著者:冨田康夫
投稿:2016/08/30 19:51

明日の東京株式市場見通し

 31日の東京株式市場は、薄商いのこう着状態は続くものの、外国為替市場での円安・ドル高基調を背景に、日経平均株価は頑強展開となりそうだ。

 市場関係者からは「9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ観測が浮上していることで、円高進行懸念が払拭されている。加えて、日銀による上場投資信託(ETF)買い入れが相場の下支え要因として認識され、下落リスクが限定的となり、下値の固さがこう着相場を招いている面もある」としている。

 30日の東京株式市場は、薄商いのなか前日終値近辺でのもみ合いに終始した。日経平均株価終値は、前日比12円13銭安の1万6725円36銭と小幅反落した。東証1部の売買代金は1兆6783億円と薄商いで、日経平均株価の1日の変動幅は74円と小幅にとどまった。

30日の動意株

 アエリア<3758>=後場後半にストップ高。
同社はきょう、角川ゲームス(東京都渋谷区)との共同事業第1弾となるiOSおよびAndroid向け次世代育成シミュレーションゲーム「STARLY GIRLS-Episode Starsia-」を発表。16年内の国内サービス開始を目指すとしており、期待感が高まるかたちとなっているようだ。このゲームは、配信・運営をアエリア子会社のアエリアゲームズ、企画・開発を角川ゲームスが担当する。なお、きょうからゲーム内有料通貨などさまざまなプレゼントを入手可能な3大事前登録キャンペーンを開始している。

 クリーク・アンド・リバー社<4763>=後場一段高で年初来高値を更新。
同社株はあす31日付で東証2部から東証1部に指定変更となり、TOPIX連動ファンドなどによる買い需要を見込んだ思惑が高まっているもよう。また、8月19日に中国のアイデアレンズ社などと共同でVR(仮想現実)およびAR(拡張現実)における日本市場進出のための新会社を設立したと発表するなど、VR・AR関連銘柄としての関心も高いようだ。

 アルファクス・フード・システム<3814>=後場一時ストップ高。
同社は午後1時ごろ、「飲食店経営管理システム」拡張機能の「自動発注システム」に関して、特許庁に特許出願したと発表しており、これを好材料視した買いが入った。「自動発注」は、各飲食店において手作業が前提となっている食材発注を自動化するシステム。飲食店では、仕入れた食材を調理し、メニューとして販売するため、仮にPOSシステムを導入してメニューの売れ筋が把握できていても、発注は食材単位で実施する必要があることから、現在も食材の発注は手作業となっている。一方、「自動発注」は、あらかじめ提供するメニューに使用される食材の量(メニューレシピ)を登録し改変していくことで、POSシステムなどから集計されるメニューの出数から当日の在庫も考慮し、自動的に食材あるいは備品の正確な補充を実現するようになっている。

 丸山製作所<6316>=大幅高。
クボタ<6326>は29日、農業害虫の駆除や病害予防などを目的とした農業用ドローンを開発し、市場参入すると発表。プロドローン(名古屋市)がドローン本体の設計・試作、丸山製が散布機の設計・試作を担当するとしており、これが材料視されているようだ。クボタは17年夏にはモニター販売を実施し、ユーザーニーズを取り込み本格販売する予定。将来的にはドローン単体としての価値の提供だけでなく、農薬散布以外にも多用途で活用できるドローンを開発し、精密農業への取り組みに貢献するとしている。

 ダブル・スコープ<6619>=続伸。
同社はリチウムイオン2次電池用セパレーターを生産するが、世界的なエコカー需要を背景にEV向けなど中期的な需要創出が期待されている。直近では国内大手証券が同社の主戦場でもある中国でのエコカー需要が盛り上がりを欠いていることを指摘、見切り売りを誘発していたが、1カ月で5割近い下落をみせたことで、市場では値ごろ感も指摘されていた。米国ではカリフォルニア州の排ガスゼロ車規制が強化される動きにあるほか、欧州では独フォルクスワーゲンの排ガス試験の不正発覚に伴い、これまで以上にプラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)が存在感を高めており、つれて同社株も改めて見直し機運が浮上する可能性がある。

 オンコリスバイオファーマ<4588>=急伸。
同社は29日の取引終了後、現在、HIV感染症治療薬として研究開発を進めている「OBP-601」(Censavudine)について、製造方法に関する欧州特許出願の特許査定を受けたと発表しており、これを好材料視した買いが入っている。「OBP-601」は、HIVの複製に必須である逆転写酵素を阻害するHIV感染症治療薬。同社では06年6月に、同剤の物質特許を保有する米イエール大学と全世界における独占的ライセンス契約を締結し、パイプラインに導入していた。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想