元祖SHINSHINさんのブログ
芥川賞「爪と目」
今回の選評は、川上弘美と山田詠美がヤケにおとなしかったので、
ずいぶんと物足りないものを感じた。
この二人が大いに暴れてくれないと、オモロクない。
何故なのか考えてみると。
川上弘美がおとなしかった理由。
藤野可織「爪と目」の文体に理由があるのではないかと、疑っている。
序盤は少しぎこちない文体なのだけれど、
「はぁ」という文句が連続で冒頭に出てくる辺り、
これはもう、川上弘美の「先生の鞄」そのものなのだ。
そこでの川上弘美の文体が、あまりに強烈だったのでオイラは忘れようがないのだ。
そのせいか、川上の藤野に対する評価はとても好意的だ。
オモロイことに中盤になると、だんだんと文体が村上春樹してくる。
中盤の出来はイイと思うのだが、
文体の威力という面からみると、
川上弘美と村上春樹を足して「2」ではなく「50」くらいで割ったような感じになっている。
そういう違和感がつきまとっている。
それくらい、この二人の作家が、周囲に影響を与えているということだろう。
大昔だと、滝沢馬琴が流行った時、第二、第三の馬琴が続出したのと同じような現象なのだろう。
(「日本小説技術史」渡部直己)
オイラのくだらない直感的な批評は置いといて、
技術的な選評が、強者作家達から挙がってきており、
他の作品をオイラたちは読んでいないから、
想像で補わないと行けない部分も多いけれど、
色々と勉強になる。
宮本輝「深読みの功罪」の内容と、
村上龍の「選評」で、「今回は、低調だった」という内容に、
考えさせられるものがあった。
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他の記事では、
夢枕獏の「私は泣きながら小説を書いています・・・」という話が微笑ましいのと、
瀬戸内寂聴の若かりし日の鬼女ぶりが、怖いっすw
PS:山田詠美はちょっとだけ暴れていた。ちょっとだけ。。
「女の描き方がなっちょらん!」という内容だったが。
もっと暴れてくれ~、ハードボイルドな選評をくれ~。
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