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三井物産のニュース
*15:08JST STIフードHD Research Memo(8):重点施策によって生産、調達、販売を強化
■重点方針と重点施策
2. 重点施策
STIフードホールディングス<2932>は重点方針を再確認する一方、(1) 生産キャパシティ増強への取り組み、(2) FRDジャパンの陸上養殖事業への参画、(3) 海外店舗への展開、(4) 北米進出への取り組み――の4つを重点施策とした。もちろん、主力顧客であるセブン-イレブンとの取引拡大や新たな販路の拡大にも注力していく考えである。
(1) 生産キャパシティ増強への取り組み
同社は、STIミヤギのデイリーラインをさらに増強する一方、関西エリアで検討している近畿工場について、工場の新設をいったん取り止め、投資効率を重視して既存工場のM&Aを検討しているところである。デイリーラインを増強したSTIミヤギの石巻工場は、もともと缶詰や冷凍食品の工場だったため、人の確保と熟練度の向上にやや時間がかかったが、2023年9月に1品の生産を開始、今後は生産ラインを増やして品目数を拡大する段階に入った。STIミヤギ の生産能力増強により、東北3,000店弱のセブン‐イレブン向けにローカルメニューを提供するだけでなく、近畿エリアの生産体制構築の遅れをカバーすることができる。また、熟練度の向上につれ生産数が増加しても稼働率が60%強を維持するなど、既存各工場における生産効率が上昇しており、同社は持続的な2ケタ成長に耐えられる生産体制となってきた。
課題の近畿エリアの生産体制では、すでに滋賀に土地を取得、需要が拡大する関西圏のセブン-イレブン向けのみならず、進出する可能性のある北米や首都圏の新工場を見据えたモデルプラントとして、コンパクトで省人化された工場を新設し、AI化や自動化、海外展開や海外人材を考慮した多言語化を進める計画だった。しかし、建設コストが高騰したことから想定していた投資収益が期待できなくなったため一旦中止し、関西での需要増にフォーカスし、既存工場を居抜きでM&Aする従来の方式も並行している。M&Aにより既存の工場を居抜きで取得して再生するのは、一般的に、古い仕組みや旧来の人海戦術の改善、排水処理など設備の整備、フードロスや菌管理、ノウハウの蓄積(標準化)、合理化など点でハードルが高く、特にセブン-イレブンのような年々高度化するニーズに合わせることは至難である。しかし同社は、居抜き工場の再生が得意なうえ人材も確保できるため、今般の建設コスト高騰への緊急的な対応策として並行することとなった。すでに数ヶ所M&A候補を検討しているようだ。
(2) FRDジャパンの陸上養殖事業への参画
サーモンは日本食ブームをきっかけに全世界、とりわけ北米で需要が急増しており、生食用サーモンの96%を輸入に依存する日本をはじめ、供給が間に合っていない状況である。このため養殖に頼りたいが、海面養殖は環境負荷が大きく、新規ライセンスの取得が困難である。陸上養殖であれば建設する場所を選ばず世界のどこにでも進出が可能だが、技術的ハードルが高かった。しかし今般、三井物産<8031>の社内ベンチャープラントであるFRDジャパンが、千葉県にあるテストプラントでサーモンの陸上養殖に成功した。これを受けて同社は、FRDジャパンによる商業プラントに出資することになった。技術供与や1次加工などでの事業参加を目指しているが、同社製品を原材料として使う可能性もあるようだ。2027年には収益寄与が期待されるうえ、SDGsの観点からも楽しみな事業である。
(3) 海外店舗への展開
セブン-イレブンとは、為替リスクなどをヘッジする意味合いもあって海外での取引を拡大させている。アジアに関しては、2021年12月期に福岡工場から台湾向けに出荷を開始、好評につき台湾全域6,000店に向けて焼魚の販売を本格化した。現在は、輸出だけの「点」の取引から、全店展開できる商品の開発や食材提供など「面」の取り組みへの進化を目指して、現地のセブン-イレブンと協議中である。このほか、フィリピンや上海への進出も視野に入れている。
(4) 北米進出への取り組み
海外では、米国のセブン-イレブン(以下セブンインク)が急成長している。セブン&アイ・ホールディングスの子会社で、日本のセブン-イレブンの兄弟会社にあたるが、M&Aにより積極拡大を続けるなど成長力が非常に強く、すでに日本のセブン-イレブンを上回る利益をあげている。こうした成長に乗ることは大きな魅力だが、さらに米国では健康食としてサーモンなど魚食が定着しつつある。しかし、高価なうえ商品化がほとんどなされておらず、サーモンや魚卵など同社のシーフード技術を活用する余地が非常に大きい市場といえる。このため、セブン&アイ・ホールディングスからも米国への早期進出を促されており、当初は取引先を持った工場を買収して早急に北米展開する方針だったが、リサーチするなかで時期尚早との見方もあり、現状は工場を取得するか輸出で対応するか進出方法を検討中である。
(5) セブン-イレブンとの取引拡大
国内セブン-イレブンとの取引拡大は、同社の成長ドライバーであり、重点施策以上に当たり前になすべきことである。セブン-イレブンは取引先に、供給力や品質、コンプライアンスなどに関する厳しい条件だけでなく、常に新商品や付加価値を高めたリニューアル商品を投入することを求めている。できなければ棚から商品が外されてしまうが、できれば2万店を超えるネットワークで販売できるスケールメリットを享受できる。同社に対してもセブン-イレブンの目は厳しいが、高い技術を持った唯一の水産系ベンダーとして新商品の投入やリニューアルを継続的に実施していることから、同社は継続的に取引を拡大し売上高を増やしているところである。
(6) 新たな販売拡大
同社の販売先はセブン-イレブン向けが86.0%と大半を締め、しかも年々構成比が上昇している。一方、セブン-イレブン店舗でリーチできない消費者にアプローチするという考え方から、セブン-イレブン以外の企業に対しても商品を販売している。また、自社サイトやアマゾンなど他社サイトにおいて、石巻工場で生産した自社ブランド「STONE ROLLS(ストンロルズ)」のさば缶シリーズや、自社ブランドの魚のおかずシリーズである「ichibi」を販売、焼津発の「FIRE PORTS(ファイヤポーツ)」ブランドの缶詰も本格展開を開始した。ほかに、総合スーパー向けに缶詰を販売するなど販路の拡大・多様化を指向しており、今後もセブン-イレブン以外の取引先を増やす方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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2. 重点施策
STIフードホールディングス<2932>は重点方針を再確認する一方、(1) 生産キャパシティ増強への取り組み、(2) FRDジャパンの陸上養殖事業への参画、(3) 海外店舗への展開、(4) 北米進出への取り組み――の4つを重点施策とした。もちろん、主力顧客であるセブン-イレブンとの取引拡大や新たな販路の拡大にも注力していく考えである。
(1) 生産キャパシティ増強への取り組み
同社は、STIミヤギのデイリーラインをさらに増強する一方、関西エリアで検討している近畿工場について、工場の新設をいったん取り止め、投資効率を重視して既存工場のM&Aを検討しているところである。デイリーラインを増強したSTIミヤギの石巻工場は、もともと缶詰や冷凍食品の工場だったため、人の確保と熟練度の向上にやや時間がかかったが、2023年9月に1品の生産を開始、今後は生産ラインを増やして品目数を拡大する段階に入った。STIミヤギ の生産能力増強により、東北3,000店弱のセブン‐イレブン向けにローカルメニューを提供するだけでなく、近畿エリアの生産体制構築の遅れをカバーすることができる。また、熟練度の向上につれ生産数が増加しても稼働率が60%強を維持するなど、既存各工場における生産効率が上昇しており、同社は持続的な2ケタ成長に耐えられる生産体制となってきた。
課題の近畿エリアの生産体制では、すでに滋賀に土地を取得、需要が拡大する関西圏のセブン-イレブン向けのみならず、進出する可能性のある北米や首都圏の新工場を見据えたモデルプラントとして、コンパクトで省人化された工場を新設し、AI化や自動化、海外展開や海外人材を考慮した多言語化を進める計画だった。しかし、建設コストが高騰したことから想定していた投資収益が期待できなくなったため一旦中止し、関西での需要増にフォーカスし、既存工場を居抜きでM&Aする従来の方式も並行している。M&Aにより既存の工場を居抜きで取得して再生するのは、一般的に、古い仕組みや旧来の人海戦術の改善、排水処理など設備の整備、フードロスや菌管理、ノウハウの蓄積(標準化)、合理化など点でハードルが高く、特にセブン-イレブンのような年々高度化するニーズに合わせることは至難である。しかし同社は、居抜き工場の再生が得意なうえ人材も確保できるため、今般の建設コスト高騰への緊急的な対応策として並行することとなった。すでに数ヶ所M&A候補を検討しているようだ。
(2) FRDジャパンの陸上養殖事業への参画
サーモンは日本食ブームをきっかけに全世界、とりわけ北米で需要が急増しており、生食用サーモンの96%を輸入に依存する日本をはじめ、供給が間に合っていない状況である。このため養殖に頼りたいが、海面養殖は環境負荷が大きく、新規ライセンスの取得が困難である。陸上養殖であれば建設する場所を選ばず世界のどこにでも進出が可能だが、技術的ハードルが高かった。しかし今般、三井物産<8031>の社内ベンチャープラントであるFRDジャパンが、千葉県にあるテストプラントでサーモンの陸上養殖に成功した。これを受けて同社は、FRDジャパンによる商業プラントに出資することになった。技術供与や1次加工などでの事業参加を目指しているが、同社製品を原材料として使う可能性もあるようだ。2027年には収益寄与が期待されるうえ、SDGsの観点からも楽しみな事業である。
(3) 海外店舗への展開
セブン-イレブンとは、為替リスクなどをヘッジする意味合いもあって海外での取引を拡大させている。アジアに関しては、2021年12月期に福岡工場から台湾向けに出荷を開始、好評につき台湾全域6,000店に向けて焼魚の販売を本格化した。現在は、輸出だけの「点」の取引から、全店展開できる商品の開発や食材提供など「面」の取り組みへの進化を目指して、現地のセブン-イレブンと協議中である。このほか、フィリピンや上海への進出も視野に入れている。
(4) 北米進出への取り組み
海外では、米国のセブン-イレブン(以下セブンインク)が急成長している。セブン&アイ・ホールディングスの子会社で、日本のセブン-イレブンの兄弟会社にあたるが、M&Aにより積極拡大を続けるなど成長力が非常に強く、すでに日本のセブン-イレブンを上回る利益をあげている。こうした成長に乗ることは大きな魅力だが、さらに米国では健康食としてサーモンなど魚食が定着しつつある。しかし、高価なうえ商品化がほとんどなされておらず、サーモンや魚卵など同社のシーフード技術を活用する余地が非常に大きい市場といえる。このため、セブン&アイ・ホールディングスからも米国への早期進出を促されており、当初は取引先を持った工場を買収して早急に北米展開する方針だったが、リサーチするなかで時期尚早との見方もあり、現状は工場を取得するか輸出で対応するか進出方法を検討中である。
(5) セブン-イレブンとの取引拡大
国内セブン-イレブンとの取引拡大は、同社の成長ドライバーであり、重点施策以上に当たり前になすべきことである。セブン-イレブンは取引先に、供給力や品質、コンプライアンスなどに関する厳しい条件だけでなく、常に新商品や付加価値を高めたリニューアル商品を投入することを求めている。できなければ棚から商品が外されてしまうが、できれば2万店を超えるネットワークで販売できるスケールメリットを享受できる。同社に対してもセブン-イレブンの目は厳しいが、高い技術を持った唯一の水産系ベンダーとして新商品の投入やリニューアルを継続的に実施していることから、同社は継続的に取引を拡大し売上高を増やしているところである。
(6) 新たな販売拡大
同社の販売先はセブン-イレブン向けが86.0%と大半を締め、しかも年々構成比が上昇している。一方、セブン-イレブン店舗でリーチできない消費者にアプローチするという考え方から、セブン-イレブン以外の企業に対しても商品を販売している。また、自社サイトやアマゾンなど他社サイトにおいて、石巻工場で生産した自社ブランド「STONE ROLLS(ストンロルズ)」のさば缶シリーズや、自社ブランドの魚のおかずシリーズである「ichibi」を販売、焼津発の「FIRE PORTS(ファイヤポーツ)」ブランドの缶詰も本格展開を開始した。ほかに、総合スーパー向けに缶詰を販売するなど販路の拡大・多様化を指向しており、今後もセブン-イレブン以外の取引先を増やす方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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