明日の株式相場に向けて=10兆円国策支援でAI関連が再始動へ
きょう(12日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比157円安の3万9376円と3日ぶりに反落。前日の欧州株市場が久々に全面高商状となり、米国株市場でもNYダウが300ドルあまりの上昇をみせ、終値で初となる4万4000ドル台で着地。こうなると、東京市場でも日経平均4万円大台が視野に入る予感はあったのだが、思惑通りには進まないのが今の相場だ。後場に入ると先物から売り仕掛けが入って急速に値を消し、一時は400円近い下げに見舞われる場面もあった。個別株は相変わらず決算プレーによる乱高下が相次いでいる。しかし、決算発表は今週14日木曜日に最も集中しており、同時にこの日でピークアウトとなる。業績内容の良い銘柄と悪い銘柄がおおむね振り分けられ、好実態株に仕切り直しの買いが向かう時間帯へと移行する。
前日に特別国会が召集され、衆参両院は本会議で石破茂首相(自民党総裁)を第103代首相に指名したが、その石破首相は同日夜に行われた記者会見で、2030年度までに半導体やAI分野へ10兆円以上の公的支援を行う方針を表明、メディアでも大きく報じられた。もっとも今年度もしくは来年度に何兆円というのではなく、30年度までに10兆円以上というのが何ともアバウトな印象で、株式市場でも距離感がつかめなかったのか、残念ながら反応は極めて限定的なものにとどまった。
それよりは、前日の米株市場でNYダウなど主要株価指数が揃って最高値を更新した一方、半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が値を崩したことがネガティブ材料としてのしかかった。米半導体株安を受けてディスコ<6146.T>やアドバンテスト<6857.T>、レーザーテック<6920.T>、東京エレクトロン<8035.T>といった半導体製造装置の主力どころは軒並み売りに押される展開を強いられた。
この背景には前週末に報じられた、米商務省が台湾の半導体受託生産最大手TSMC<TSM>に対し、中国向け先端半導体の出荷を停止するように命じたというニュースが影響している。この報道は、米国よりも日本の半導体セクターの方が強い向かい風に晒される話である。半導体製造装置で世界トップシェアのメーカーがひしめく日本にも、遅かれ早かれ米国から対中規制強化の圧力が強まることは回避できそうもない。そうした思惑が投資マインドを急速冷却する格好となった。石破首相による“10兆円支援”のリップサービスが簡単にスルーされるあたり、今の東京市場上空の雲行きの怪しさを暗示しているようにもみえる。なかなか半導体主力銘柄の復活がままならない状況下、“野中の一本杉”となって最高値圏を邁進していたアドバンテスト<6857.T>の株価も変調をきたし、今後利食い急ぎの動きが表面化するようだと少々厄介である。
石破首相が表明した公的支援の延長線上には最先端半導体の量産を目指すラピダスの存在が意識されている。ラピダスの活躍はAI市場の佳境入りと同じ時間軸で進むことが予想される。今はまだ理想買いの段階ながら、ハード分野(AI用半導体)への買いが一服する一方でソフト分野の銘柄、いわゆるAI関連の中小型株に再び投資マネーの視点が映るタイミングにある。例えば、その号砲を鳴らしたのがブレインパッド<3655.T>。同社株についてはきょう取引時間中の好決算発表が人気化の直接的な材料となったが、まだ第1四半期時点でそこまで目を見張る内容ではなく、ストップ高カイ気配に張り付いたのは意外で、AI関連株に対するマーケットの潜在的な物色ニーズを暗示した。この時期の個別株攻略は、決算発表通過後の銘柄に照準を合わせるのが基本だ。今の相場の流れを視野に、AIによるデジタルプラットフォームを運営するABEJA<5574.T>、AIコードレビューやAI画像診断分野で実績を重ねるフィックスターズ<3687.T>、AIエンジンを活用した顔認証プラットフォームで先駆するトリプルアイズ<5026.T>などをマークしてみたい。
このほか番外として、好決算をまだ株価が織り込んでいないと思われる中低位株に着目。バイオマス発電及び省エネ支援ビジネスを展開するエフオン<9514.T>、プリント配線板のトップメーカーである日本CMK<6958.T>などに上値余地がイメージされる。
あすのスケジュールでは、10月の企業物価指数が朝方取引開始前に発表されるほか、午前中に30年物国債の入札が行われる。海外では10月の米消費者物価指数(CPI)に対するマーケットの注目度が高い。このほか10月の米財政収支も開示される。(銀)
出所:MINKABU PRESS
前日に特別国会が召集され、衆参両院は本会議で石破茂首相(自民党総裁)を第103代首相に指名したが、その石破首相は同日夜に行われた記者会見で、2030年度までに半導体やAI分野へ10兆円以上の公的支援を行う方針を表明、メディアでも大きく報じられた。もっとも今年度もしくは来年度に何兆円というのではなく、30年度までに10兆円以上というのが何ともアバウトな印象で、株式市場でも距離感がつかめなかったのか、残念ながら反応は極めて限定的なものにとどまった。
それよりは、前日の米株市場でNYダウなど主要株価指数が揃って最高値を更新した一方、半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が値を崩したことがネガティブ材料としてのしかかった。米半導体株安を受けてディスコ<6146.T>やアドバンテスト<6857.T>、レーザーテック<6920.T>、東京エレクトロン<8035.T>といった半導体製造装置の主力どころは軒並み売りに押される展開を強いられた。
この背景には前週末に報じられた、米商務省が台湾の半導体受託生産最大手TSMC<TSM>に対し、中国向け先端半導体の出荷を停止するように命じたというニュースが影響している。この報道は、米国よりも日本の半導体セクターの方が強い向かい風に晒される話である。半導体製造装置で世界トップシェアのメーカーがひしめく日本にも、遅かれ早かれ米国から対中規制強化の圧力が強まることは回避できそうもない。そうした思惑が投資マインドを急速冷却する格好となった。石破首相による“10兆円支援”のリップサービスが簡単にスルーされるあたり、今の東京市場上空の雲行きの怪しさを暗示しているようにもみえる。なかなか半導体主力銘柄の復活がままならない状況下、“野中の一本杉”となって最高値圏を邁進していたアドバンテスト<6857.T>の株価も変調をきたし、今後利食い急ぎの動きが表面化するようだと少々厄介である。
石破首相が表明した公的支援の延長線上には最先端半導体の量産を目指すラピダスの存在が意識されている。ラピダスの活躍はAI市場の佳境入りと同じ時間軸で進むことが予想される。今はまだ理想買いの段階ながら、ハード分野(AI用半導体)への買いが一服する一方でソフト分野の銘柄、いわゆるAI関連の中小型株に再び投資マネーの視点が映るタイミングにある。例えば、その号砲を鳴らしたのがブレインパッド<3655.T>。同社株についてはきょう取引時間中の好決算発表が人気化の直接的な材料となったが、まだ第1四半期時点でそこまで目を見張る内容ではなく、ストップ高カイ気配に張り付いたのは意外で、AI関連株に対するマーケットの潜在的な物色ニーズを暗示した。この時期の個別株攻略は、決算発表通過後の銘柄に照準を合わせるのが基本だ。今の相場の流れを視野に、AIによるデジタルプラットフォームを運営するABEJA<5574.T>、AIコードレビューやAI画像診断分野で実績を重ねるフィックスターズ<3687.T>、AIエンジンを活用した顔認証プラットフォームで先駆するトリプルアイズ<5026.T>などをマークしてみたい。
このほか番外として、好決算をまだ株価が織り込んでいないと思われる中低位株に着目。バイオマス発電及び省エネ支援ビジネスを展開するエフオン<9514.T>、プリント配線板のトップメーカーである日本CMK<6958.T>などに上値余地がイメージされる。
あすのスケジュールでは、10月の企業物価指数が朝方取引開始前に発表されるほか、午前中に30年物国債の入札が行われる。海外では10月の米消費者物価指数(CPI)に対するマーケットの注目度が高い。このほか10月の米財政収支も開示される。(銀)
出所:MINKABU PRESS
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