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半導体沸騰相場の号砲鳴る! 天空を翔ける「ラピダス関連5銘柄」 <株探トップ特集>

配信元:株探
投稿:2024/04/06 19:30

―全体相場波乱も“待ってましたの買い場”提供、半導体関連に新たな成長神話の舞台―

 ひとたび、信用収縮が起こると、ダムが決壊するように加速度的な資金流出が始まるのが相場の怖いところ。しかし、そうした場面では、企業のファンダメンタルズなど実態面で本当に逃げるべきなのかどうかを冷静に考える必要がある。ともすれば、突発的な急落は投資家にまたとない買い場を提供しているかもしれないからだ。見ての通り新年度相場は出足からつまずく形となったが、相場が大きく揺れた時に拙速にロスカットして、後で「実は買い場だった」と悔やむケースがこれまでに何度も繰り返されてきた。ここはおそらく弱気に支配される場面ではなく、押し目買いの好機として捉えるのが相場巧者のマインドである。足もとのムードに流されず、したたかに半導体関連の有望株に着目したい。

●米利下げ期待の剥落と中東リスクが直撃

 週末5日の東京株式市場は大荒れの地合いとなった。その前日の米国株市場ではNYダウが530ドルあまりの急落をみせ、昨年3月下旬以来約1年ぶりとなる下げ幅の大きさを記録。また、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数も230ポイント近い下げとなり下落率でダウを上回った。このリスクオフの大波が東京市場にも押し寄せ、日経平均株価は朝方から大きく下値を試す展開を余儀なくされた。日経平均の下落幅は一時1000円に迫る勢いとなり、一気に3万9000円台を割り込む水準まで突っ込んだ。大引けはやや下げ渋ったとはいえ、800円近い下落で3万9000円台には戻せずこの日の取引を終えた。

 米国株市場では、一度は立ち去ったと思われたインフレの影が再び忍び寄り投資家の警戒心が高まっている。ここFRB高官の発言に全体指数は神経質な値動きを強いられていたが、4日はミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が年内の利下げが見送られる可能性を示唆する発言をしたことで、投資家心理を急速に弱気に傾けた。

 東京市場でも米株乱調を目の当たりに緊張が走ったが、株価の下落圧力は大方の予想を超えた。これは、米国における早期利下げ期待の剥落だけでなく、もう一つのネガティブ材料が重なったことによる。中東の地政学リスクだ。イスラエルによるイラン大使館空爆によって両国の対立が一段と先鋭化、イランが報復攻撃を行えば、紛争拡大から原油供給にも支障をきたす。いうまでもなく原油価格の高騰を招くことになり、これによってインフレ圧力が更に高まり、米利下げ期待が雲散霧消するという負の連鎖が想起される。投資マネーの株式市場からの退避を助長したのは、こうした思惑の連鎖があったと思われる。

●ピンチはチャンス、半導体は絶好の買い場に

 しかし、では相場の長期上昇トレンドは終焉を迎えたのかといえばその公算は極めて小さいといってよい。地政学リスクによって相場の大勢波動が転換するというケースがほとんどないことは過去が証明している。例えばロシアとウクライナ間の紛争もかなりのインパクトで相場を揺さぶったが、結果として世界的な株高の潮流に変化はなかった。むしろ暗躍した売り方(ヘッジファンドなどの空売り筋)が踏まされる形で上昇相場の糧となったというのが歴史に刻まれた答えであり、今回もそれを踏襲する可能性は高い。

 もとより日米ともに企業業績は好調である。日本の場合、23年度の企業全体ベースの営業利益は12%前後の2ケタ成長が見込まれているが、24年度も伸び率こそ鈍化するとはいえ2ケタ近い伸び率で成長トレンドを堅持するとみられている。過度な悲観に与するのはチャンスを逃す。

 では、足もとで遭遇しているリスクオフ相場がガス抜きとなり、結果として絶好の押し目買い場を提供したとするならば、これが最も福音となり得るのはどこか。それは中長期的に疑いなき成長シナリオが描かれる半導体セクターの一角であろう。 生成AI市場の急拡大はもはやバブルと揶揄するような段階は通り過ぎている。生成AIが更なる進化を遂げる過程で最先端半導体に対するニーズが高まっており、この開発及び製造、そして量産に至るまでのプロセスが日米欧や中国など主要各国の国家的テーマとして認知されている。

●最先端2ナノ品の量産担うラピダスに再脚光

 そうしたなか、日本では最先端半導体の量産を目指すラピダスが改めて脚光を浴びている。トヨタ自動車 <7203> [東証P]、ソニーグループ <6758> [東証P]、NTT <9432> [東証P]、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]といった錚々(そうそう)たる大手企業が出資し設立、回路線幅2ナノメートル以下の半導体を開発し製造するというのが与えられた使命で、2027年の量産実現を計画している。

 政府も積極的な支援体制を敷いており、今週2日に経済産業省が5900億円を上限とする追加支援を発表した。今回の追加支援を合わせ累計で最大9200億円の国費投入となるが、量産実現までの総投資額は5兆円規模とみられており、資金調達のために近い将来のIPOなども視野に入っている。

●半導体戦略と共鳴する生成AIの爆発的成長

 そして、このラピダスの存在を輝かせているのは、やはり生成AIの爆発的な成長スピードが背景にある。同社が最先端半導体の量産を開始するのは27年を予定しているが、生成AI市場(グローバルベース)はその3年後の30年に日本円にして32兆円規模に達するとみられている。これは23年比で約20倍の水準となる。同社の活躍の舞台は極めて大きい。マンパワーの確保も重要であり、量産開始までに1000人規模の社員確保を目標に掲げている。かつて半導体立国として名を馳せた日本の復活は、“ラピダスの双肩”にかかっているといっても過言ではない。

 米中対立を背景とした米国政府の意思も反映されていると思われるが、岸田政権は過去には見られなかったスピード感で半導体戦略に取り組んでいる。台湾の半導体受託生産最大手のTSMC誘致もその一環だが、何といっても日の丸半導体連合で最先端分野を開拓することこそが日本にとっての悲願である。今まさにその一歩を踏み出した局面であり、数年後、ラピダスが縦横無尽に活躍するシーンに期待が募る。そして同社活躍のシナリオと接点を持つ企業は株式市場でもスポットライトを浴びることになる。

 半導体関連株の人気は市況の動向に左右されやすい部分はあるが、ここは中長期的な視点で“成長の種子”を内包する銘柄に着目したい。今回のトップ特集では、ラピダス関連の位置付けで業績飛躍の可能性を有する有望株を5銘柄厳選した。

●ラピダス関連で要注目の5銘柄はこれだ

ソシオネクスト <6526> [東証P]

 ソシオネクスは高度な技術力を売り物に先端品を手掛ける半導体設計の大手で、顧客のニーズに対応して設計したカスタムSoCをファブレス形態で供給する。データセンター向けや車載用で強みを持っており、最先端半導体である回路線幅2ナノ品の設計・開発ではTSMCや英半導体設計大手アームと協業で取り組んでいる。一つのチップにさまざまな性能要素を積むのではなく、それぞれの性能要素で製造した個別チップを組み合わせて一つの半導体チップを完成させるという「チップレット集積」に傾注し、同分野のキーカンパニーとして頭角を現している。一方、2ナノ品の量産を計画するラピダスも、微細化による性能向上には限界があることから新技術であるチップレットに照準を合わせており、近い将来にソシオネクスの技術に光が当たる可能性が高い。ソシオネクスの24年3月期営業利益は前の期比45%増の315億円を見込むが更なる上振れが視野に入る。グローバルニッチトップの実力を背景に株価も大幅な水準訂正が期待され、最高値5666円(分割後修正値)の更新も時間の問題となりそうだ。

ジェイ・イー・ティ <6228> [東証S]

 JETは昨年9月にスタンダード市場に新規上場したニューフェースで、半導体洗浄装置の開発・設計・製造・販売及びアフターサービスをワンストップで手掛け、韓国や台湾といったアジア地域で需要を開拓中だ。多数のウエハーを一括洗浄するバッチ式洗浄装置では世界でも高い競争力を誇る。また、同社株式の65%弱を保有する筆頭株主は韓国の半導体関連設備のグローバル企業であるゼウス。既にJETはラピダスから受託した次世代半導体製造技術の基礎研究開発業務を完了させ、新たに枚葉式とみられる試作装置の研究開発業務を受託するなど実力を開花させている。業績は20年12月期以降、増収増益トレンドが鮮明。24年12月期は営業5%増益と伸び率は鈍化するがピーク利益更新が続く見通しで、25年12月期は再び2ケタ以上の高成長路線に復帰する公算大。株価は4000円大台回復から、今年2月6日につけた最高値4313円30銭(分割修正後株価)奪回の可能性が高い。

エア・ウォーター <4088> [東証P]

 エアウォータは産業ガス大手で、医療用でトップシェアを有するほか、鉄鋼業界向けや半導体業界向けでも高い実績を持つ。国策的な支援体制にあるラピダスだが、エアウォータは千歳工場のパイロットライン向けに特殊ガスや特殊ケミカルをはじめとした半導体材料輸送の取りまとめ業者に選定されたことで、存在感を一気に高めている。24年3月期は営業利益段階で前の期比16%増の720億円と2ケタ成長見通し。進捗率から会社側計画は未達の可能性もあるが、過去最高更新見通しにあることに変わりはない。更に25年3月期もピーク利益更新基調が続く公算が大きい。北米のヘリウムガス供給会社の事業を買収し、将来的な半導体分野の需要獲得を見据え、北米事業の戦略強化を図っている点は見逃せないポイントとなる。株価は2200~2400円の高値ゾーンでもみ合っているが、早晩ここを上放れ、18年1月につけた上場来高値2543円を視野に入れる強調展開が見込まれる。

大日本印刷 <7912> [東証P]

 大日印は総合印刷会社で業界屈指の存在だが、高度な印刷技術をベースにリチウムイオン電池用パウチなど産業資材のほか、電子部材関連にも横軸展開しており、半導体関連では回路形成に使う部材であるフォトマスクで高水準の需要を獲得している。特に最先端半導体である2ナノ品のフォトマスクについて同社は27年度に国内で量産する計画にあり、これは部材の国内調達が必須条件となっているラピダスが需要先として想定されている。足もとの業績は堅調で、24年3月期営業利益は前の期比9%増の670億円予想と11年3月期以来13年ぶりの高水準が見込まれている。そして25年3月期も増収増益基調が続く見通しで、営業利益は700億円を超えることが濃厚だ。株価は3月25日に4791円の年初来高値形成後、いったん調整を入れているが25日移動平均線を足場にリバウンド局面が期待できる。中期スタンスで5000円台での活躍が期待できそうだ。

荏原 <6361> [東証P]

 荏原はポンプメーカー最大手で、ごみ処理やリサイクル(資源循環ソリューション)など環境関連装置で高い実績を誇るが、セグメント別では半導体研磨装置など半導体製造分野の収益貢献度が高い。政府が国策としてラピダスを資金支援する背景には、回路線幅2ナノの最先端品の開発製造が重要な意味を持っていることが挙げられる。そのなか荏原は2ナノ品に対応した半導体研磨装置の開発にメドをつけたことが伝えられており、ラピダスとの将来的な連携の可能性が意識される状況にある。業績は21年12月期以降2ケタ増収で大幅増益トレンドを続けている。24年12月期は伸び率こそ鈍化するものの売上高9%増、営業利益も小幅ながら増益を確保する見通しだ。株価は1万3000~1万4000円ゾーンのもみ合いを続けているが、株価指標面で割高感は感じられず、信用買い残も低水準で戻り売り圧力は限定的なだけに意外高の可能性も内包する。





株探ニュース
配信元: 株探
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