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―求められる新しい働き方への適応、技能人材不足の解決にも一役―
世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を宣言して1年以上の月日が経過したが、現在でも各地でクラスター(感染者集団)が発生するなど収束の兆しは依然としてみえない。こうしたなか、テレワークをはじめとした新しい働き方が急速に進んだが、製造業や建設業など現場での作業が生産性や品質の基本となっている業種では“3密(密閉、密集、密接)回避”が難しいケースも少なくないとみられる。この課題を解決する手段のひとつが、離れた場所からリアルタイムで現場の作業者に指示を出すことができるメガネ型端末「スマートグラス」だ。
●現場業務が抱える課題とは
スマートグラスとは、メガネのように装着して使用するウェアラブルデバイスのひとつで、さまざまなセンサーや通信機能が搭載されている。実際にみている光景に文字や資料などの情報を重ねて表示でき、医療や工場、建設現場での作業指示、歩行案内などの日常生活支援といった幅広い分野での利用が進んでいる。
例えば、NEC <6701> はNECプラットフォームズ甲府事業所でローカル5Gを活用した製造現場のリモート化を進めており、これは現場作業者が装着したスマートグラスを通じて映像や音声を共有することによって遠隔からリアルタイムで作業支援を行うもの。また、KDDI <9433> は3月に日本科学未来館(東京都江東区)で、スマートグラスなどを使った「デジタル化された展示空間を構築する技術」の実証実験を実施した。
スマートグラスはコロナ禍で遠隔ニーズが高まっていることに加え、技能人材不足や技術伝承といった課題を解決するツールとしても注目されている。少子高齢化に伴う労働人口の減少が大きな社会問題となっているなか、若手のスキルアップの機会が十分に確保されず、ノウハウの属人化に悩む企業は少なくない。こうした場合、スマートグラスを活用することにより、現場で起きていることを熟練技術者が別の場所にいながら把握し、適切な指示を出すことが可能なため、生産性を向上することができる。今後は業務用のほか、ゲームなどエンターテインメント領域でも需要が高まることが見込まれ、関連企業のビジネス機会は更に広がりそうだ。
●ブイキューブ、サン電子など注目
ブイキューブ <3681> は、自社の拠点間情報共有システム「V-CUBEコラボレーション」とスマートグラスを組み合わせた「遠隔作業支援ソリューション」を提供している。同社は2020年11月に発表した中期経営計画で22年12月期の連結営業利益目標35億円(20年12月期実績は10億4600万円)を掲げているが、その背景にあるのがリモート化の急激な浸透。今年3月には遠隔作業支援ソリューションを導入している顧客からの要望を受け、さまざまな形状のヘルメットに固定可能な米リアルウェア製スマートグラス専用の装着具を開発した。
オプティム <3694> はスマートグラスやスマートフォン、タブレットのカメラを用いて現場の映像を共有し、各種支援機能を使って現場作業をサポートできる遠隔作業支援サービス「Optimal Second Sight」を展開。ウェブ会議システム「Zoom」やコラボレーションプラットフォーム「Microsoft Teams」との連携が可能なため、現場で起きている事象をWeb会議参加者全員で確認することができる。
IDホールディングス <4709> グループのインフォメーション・ディベロプメントは、スマートグラスを利用して遠隔地から映像と音声で作業を支援・確認できるクラウドサービス「IDEye」を手掛けている。今年1月には米子工業高等専門学校で実施されたスマートグラスを使ったオンラインによるショッピング・リハビリテーションの実証実験に「IDEye」を提供しており、今後も多種多様な業態との連携を検討するという。
サン電子 <6736> [JQ]はスマートグラス「AceReal One」、業務支援アプリケーション「AceReal Apps」、ソフトウェア開発キット「AceReal SDK」をワンストップで提供するトータルソリューション「AceReal」事業を展開。今年2月からは、より現場に適した新たな遠隔支援ソリューション「AceReal Assist」の販売を開始している。
このほか、スマートグラスLIVE中継ソリューション「グラスライブ・コネクトfor作業支援」のエヌアイデイ <2349> [JQ]、メガネ型ウェアラブル「JINS MEME」を販売するジンズホールディングス <3046> 、スマートグラスの画面上に保守・メンテナンスなどの作業に関する付加的な情報を表示する「作業支援AR」を手掛けるサイバネットシステム <4312> に注目。
スマートグラスに搭載可能な遠隔業務支援システム「nvEye’s」を扱うJMACS <5817> [東証2]、多機能ハンズフリースマートグラス「T-4PO Construction」を展開しているロゼッタ <6182> [東証M]、顧客ごとに最適なスマートグラスやウェアラブルカメラソリューションを提供するサービス「LiveSupporter」を手掛けるsantec <6777> [JQ]などにも商機がありそうだ。
●メニコンはコンタクト型で連携
また、米モジョ・ビジョンとスマートコンタクトレンズの共同開発契約を結んでいるメニコン <7780> の動向からも目が離せない。モジョ・ビジョンが開発に取り組んでいる拡張現実(AR)を利用した「モジョ・レンズ」は、視界や目の動きといったコミュニケーションを阻害することなく、ユーザーの自然な視野に画像や記号、テキストを重ねて表示することが可能。今回の連携では、モジョ・ビジョンがスマートコンタクトレンズのマイクロエレクトロニクスからシステムまでを開発し、メニコンが最適な素材と製造方法の開発を担当するという。
半導体レーザ及び応用製品の企画・設計開発・製造・販売を行うQDレーザ <6613> [東証M]は、メガネブランド「Zoff(ゾフ)」を運営するインターメスティック(東京都港区)とスマートグラスの共同開発・商用化に着手しており、今後の展開が期待される。
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