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―業績目標達成に自信あり、上方修正&低PERで株価の水準訂正高が期待できる7社を選出―
業績上方修正する企業が相次いだ21年3月期の上期決算発表シーズンが終わった。10月1日から11月13日の期間に、21年3月期通期の経常利益予想を引き上げた企業は457社だった。初めて通期予想を開示した企業を除くとおよそ4社に1社に上る。コロナ禍で落ち込んだ需要が中国などで回復してきた製造業に上方修正する動きが目立ったほか、先行き不安から保守的に算出した計画を見直す企業も多くみられた。折り返し地点での見通し引き上げは先行きへの自信の表れともいえ、こうした企業は一段の業績上振れが期待できる銘柄として注目したいところだ。
今回は上期決算の発表直前または発表時に通期業績予想の上方修正に踏み切った企業のうち、株価指標面で割安感が強く株価の水準訂正余地が大きいとみられる銘柄群にスポットライトを当てた。
●下期回復シナリオに期待高まる
11月13日までに上期決算を発表した3月期決算企業2325社を集計したところ、直近3ヵ月の7-9月期(第2四半期)業績は経常利益ベースで前年同期と比べ15%減益だった。ソフトバンクグループ <9984> 1社で1兆円を超える押し上げ効果があったものの、同社を除いても減益率は23%にとどまり、新型コロナウイルス感染拡大の影響が直撃した4-6月期の51%減から減益幅が縮小した。上期の業績動向や下期見通しを踏まえて、21年3月期通期予想を上方修正する企業も多く、下期回復シナリオへの期待感が高まっている。
7-9月期決算を業種別にみると、東証33業種のうち前年同期比で増益だったのは情報・通信、海運、その他製品、食品など9業種。残りの24業種は減益となったが、輸送用機器や機械など減益でも収益の回復傾向がうかがえる業種が散見される。一方、陸運、空運、鉄鋼は第1四半期に引き続き赤字に沈んでおり、業種間で格差が出ている。個別企業に目を向けると、金額ベースではソフトバンクGがダントツだったほか、巣ごもり需要を追い風にゲームが絶好調だった任天堂 <7974> やソニー <6758> 、中国で自動車販売が回復しているホンダ <7267> などが上位に入った。
今回は業績上方修正が評価され株価が上昇基調にある銘柄の押し目買い候補として、株価指標面に割安感が強い銘柄に注目した。以下では、21年3月期の経常利益予想を上方修正した企業の中から、株価が1株あたり利益の何倍まで買われているかを示す「PER」(株価収益率)が低位で、株価の水準訂正が進むことが期待できる7社を紹介していく。
●ウィルGは今期4回目の業績上方修正なるか
ウィルグループ <6089> は派遣先企業に常駐正社員と派遣スタッフをチームで派遣する“ハイブリッド派遣”を強みに前期まで高成長路線を突き進んできたが、21年3月期は新型コロナウイルスの影響で成長一服を見込む。9日に発表した20年4-9月期の税引き前利益は20億8500万円(前年同期比2.8%減)と減益だったものの、従来予想の17億円を大きく上回って着地。アパレルや販売支援、食品以外の工場分野はコロナ禍のあおりを受けた一方、コールセンターや介護・保育分野が好調だったことに加え、新規投資計画の見直しや雇用支援補助金の計上なども寄与し、計画上振れを果たした。併せて、今期3回目となる通期税引き前利益予想の増額修正に踏み切ったが、上期実績の修正した通期予想(32億5000万円)に対する進捗率は6割を超えており、更なる上振れも期待できそうだ。
●SEMITECは高収益の医療用センサーが好調
SEMITEC <6626> [JQ]は11日、21年3月期の経常利益を従来予想の14億3000万円(前期比26.8%増)から17億5000万円(同55.2%増)へ引き上げると発表。19年3月期の過去最高益14億7400万円を2期ぶりに塗り替える見通しだ。 新型コロナウイルス感染拡大の影響で体温計向けセンサーを中心に収益性の高い医療領域の販売好調が続いているうえ、コロナ禍で落ち込んだ自動車関連向けセンサーの回復や主要ハイブリッド車種以外での採用も収益を押し上げる。また、設備の更新などで生産性が向上することも上振れの要因に挙げている。業績好調に伴い、配当を大幅増額修正したことも好感され株価は上昇局面にあるが、予想PERは13倍台と過去3年平均の18.3倍を下回っており、一段の上値を追う展開が期待される。
●A&Dは上期利益倍増、今期は2期連続最高益更新へ
エー・アンド・デイ <7745> の上期(4-9月)業績は、主力の計測・計量機器事業が設備投資需要の冷え込みで不調だったものの、医療・健康機器事業の収益拡大や経費削減などで吸収し、経常利益は15億1100万円と前年同期比2倍近い伸びをみせた。医療・健康機器では新型コロナウイルス対策として非接触型体温計の国内販売が伸びたほか、米国では遠隔医療向けの通信機能付き血圧計や体重計などが増勢だった。足もとの業績好調を踏まえ、21年3月期の経常利益予想を従来の10億7000万円(前期比68.8%減)から34億5000万円(同0.5%増)へ大幅上方修正し、2期連続で過去最高益を更新する見通しを示した。発表を受けて株価はストップ高を演じるなど急騰したが、予想PER7.0倍と割安感が強く、上値余地は大きいとみられる。
●セントケアは訪問系サービスが業績を牽引
セントケア・ホールディング <2374> は看護・入浴・居宅介護支援を主軸に全国500以上の拠点を構える介護サービス企業。9日に発表した上期決算で売上高227億3200万円(前年同期比7.0%増)、経常利益14億2400万円(同2.0倍)といずれも上期における過去最高を記録した。上期は訪問入浴や訪問看護といった訪問系サービスのニーズが引き続き旺盛だったほか、前期開設した営業所の収益寄与も業績を押し上げた。また、WEB会議・リモートワークによる業務効率化や経費見直しなども利益拡大につながった。決算発表と併せて、21年3月期通期の経常利益予想を大幅上方修正している。今期は前期比7割超の大幅増益を見込むほか、株式指標面では予想PER14倍前後と同業他社と比べて割安感があり、株価の見直し余地は大きいといえよう。
●三井倉HDは予想PER6倍前後と超割安水準
倉庫大手の三井倉庫ホールディングス <9302> は4日に、21年3月期通期の経常利益が138億円(前期比31.0%増)になりそうだと発表。前回予想の100億円(前期比5.0%減)から一転して大幅増益を見込み、2期ぶりに最高益を更新する計画となった。上期に巣ごもり消費の拡大で家電メーカー物流が好調だったほか、自動車メーカーの生産回復に伴う自動車関連貨物の緊急輸送案件が発生したことが寄与する。また、顧客のサプライチェーン見直し対応による貨物の増加に加え、販管費が減少することなどもプラスに働く。株価は年初来高値圏にあるものの、指標面では予想PER6倍台と極めて割安感が強く、上値に大きな期待を内包している。
●マクニカ富士は5Gやデータセンター向け需要強い
マクニカ・富士エレホールディングス <3132> の上期業績は、売上高2571億6300万円(前年同期比1.1%増)、経常利益75億1800万円(同53.3%増)と大幅増益を達成した。主力の半導体ビジネスは車載市場向けで苦戦を強いられたものの、5G(第5世代移動通信システム)やデータセンター関連など通信インフラ市場では需要が伸びた。また、リモートワークの増加を背景にネットワーク関連やクラウド関連、セキュリティー関連商品などの引き合いが強かったほか、コロナ禍での販管費減少や為替差損益の好転も利益を後押しした。併せて、21年3月期通期の経常利益を前回の減益予想から一転して増益見通しに上方修正している。同社は配当、株主優待、自社株買いといった株主還元姿勢への評価も高い。
●オカムラはコロナ禍のオフィス改装に絡むニーズ取り込み
オフィス家具大手オカムラ <7994> の直近3ヵ月である7-9月期業績は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う営業自粛などで大幅減益に沈んだ4-6月期から急改善に転じた。コロナ禍での働き方に対応したオフィス改装が本格化し、オフィス家具の販売が伸びたほか、食品スーパーやドラッグストアを中心に店舗運営の繁忙で滞っていた改装需要が回復した。また、物流システム事業では旺盛な省力化ニーズを取り込んだ。足もとの業績動向を考慮し、21年3月期通期の経常利益を前回予想の90億円(前期比38.8%減)から125億円(同15%減)へ引き上げた。指標面では予想PER11.2倍、PBR0.7倍と割安サインが点灯しているほか、3%を超える配当利回りも注目ポイントだ。
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