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アウトソーシングのニュース
―強烈なリーダーシップ発揮で高い成長期待、高利回り銘柄は新NISAの資金の受け皿に―
上場企業のMBO(経営陣による買収)が相次いでいる。株式市場では潜在的にMBOの可能性のあるオーナー系銘柄への物色意欲が強まっているが、そもそもオーナー系企業はスピーディーな経営判断を強みに外部環境の変化への対応力を持ち、相対的に企業価値を高めやすい企業形態と考えられている。
来年1月に新NISAがスタートし、新規の投資資金が高配当利回り銘柄に流入すると期待されている。東京証券取引所も低PBR(株価純資産倍率)企業への資本効率向上に向けた取り組みを促している。こうした流れから、オーナー系銘柄のなかでも低PBR、あるいは高配当利回りの銘柄への投資妙味が相対的に高まった状況となっている。
●11月に入り急増
M&Aの助言を手掛けるレコフ(東京都千代田区)によると、今年の国内におけるMBOによる非上場化案件は11月までに16件に上り、金額にして合計で1兆1942億円と、初めて1兆円を超えた。16件のうち11月分だけで7件に上るという。
同月にMBOを発表した企業のなかでも、ベネッセホールディングス <9783> [東証P]と大正製薬ホールディングス <4581> [東証S]は買付代金総額の規模から大きな注目を集めた。12月に入ると、アウトソーシング <2427> [東証P]のMBOの発表も話題となり、オーナー系銘柄群に対する注目度が一段と高まることとなった。サントリー食品インターナショナル <2587> [東証P]やMIXI <2121> [東証P]など、直近5年間の株価パフォーマンスがマイナスとなっているオーナー系銘柄をスクリーニングしたメモを顧客に公表した外資系証券も存在する。
MBOを成立させるには、時価よりも高くなるようにプレミアムを上乗せした買付価格の設定が求められるが、大正薬HDの場合は買付価格の8620円をもとにしたPBRが1倍を下回っており、少数株主を軽視していると一部から批判される事態となった。買付期間のなかで同社株はTOB価格を上回って推移する局面もあり、買付価格の引き上げを巡る思惑もあるようだ。
半面、MBOが実施される銘柄を選別するのは至難の業であるのも事実だ。日経平均株価がバブル崩壊後の最高値圏内で推移するなか、株式を取得する立場として今が実施時なのか、逡巡することもあるに違いない。「MBOがあるかもしれない、という期待をいったん捨てて、業績そのものが堅調なオーナー系銘柄のうち、低PBRにあるものや、高配当利回り銘柄に投資して、実際にMBOの発表があったら『ラッキー』といったぐらいのスタンスがいい」(国内証券アナリスト)との声が出ている。
●成長力内包のオーナー系銘柄の選別方法
日本を代表する企業には、創業者または創業家出身者がトップとなるオーナー系企業、ないしはオーナー色の強い企業が多い。トヨタ自動車 <7203> [東証P]、キーエンス <6861> [東証P]、ファーストリテイリング <9983> [東証P]、ソフトバンクグループ <9984> [東証P]、ニデック <6594> [東証P]など、数えればキリがなく、長期的な観点で事業規模を拡大させ続けてきた企業が相次いでいる。海外でもアップル
数多くの銘柄群から、企業価値の持続的な向上が見込める有望な投資先を絞るうえで参考となりうるのが、オーナー系銘柄を投資対象とするファンドの構成銘柄に着目することだ。例えば日興アセットマネジメントによる「ジパング・オーナー企業株式ファンド」や、東京海上アセットマネジメントの「東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン」が月次レポートで公表する組入上位銘柄などは、有益な情報となるに違いない。
また、9月に東証に新規上場したアクティブ運用型ETF(上場投資信託)のうち、シンプレクス・アセット・マネジメントが提供する投資家経営者一心同体ETF <2082> [東証E]に関しては、同社のETFに関するホームページ上で、最新のポートフォリオがCSV形式で公開されている。これらの情報から個別銘柄を探り出して選別し、プロが運用するファンドをしのぐパフォーマンスを得るチャンスは十分に備わっている。
加えて、2024年1月には東証がプライム市場とスタンダード市場に上場する全企業を対象に要請した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関し、要請に基づき開示した企業の一覧表を公表する予定だ。これに伴って資本効率の向上策などを開示する企業が相次ぐと想定され、低PBRの状態を是正するための取り組みが一段と加速するとみられている。同月にスタートする新NISAに関し、高配当利回り銘柄への関心が高まっていることにも触れておかねばならない。これらの観点から、割安な水準からの修正期待が高まりつつある銘柄の一部を取り上げていく。
●低PBR・高利回りオーナー系銘柄6選
◎日本調剤 <3341> [東証P]
調剤薬局大手で24年3月期は増収計画ながら最終利益は前期比3.6%減の43億円を見込む。薬価改定や一部製品の限定出荷の影響が収益の圧迫要因となり、調剤薬局サービスの競争環境自体も激しくなるなか、コスト削減策が奏功して23年4~9月期決算は計画を上回って着地した。同社は長期の経営方針の見直しに向けた検討を進めているが、PBRは0.68倍とプライム銘柄にもかかわらず1倍を下回っており、資本効率の向上に向けた取り組みの有無が注視されそうだ。筆頭株主は三津原庸介社長。前社長の三津原博氏と、前社長が出資する資産管理会社が大株主となっている。
◎ライク <2462> [東証P]
保育園や人材関連、介護サービスなどを展開。子育て関連銘柄とも位置付けられ、24年5月期の最終利益は前期比34.3%増の34億5000万円と過去最高を計画する。筆頭株主は岡本泰彦会長兼社長の資産管理会社。業績は好調ながら株価は1月以降に切り下げ続け、PER(株価収益率)は7倍台と割安感が強い状況にある。配当利回りは4%台でテーマ性もあり、新NISA開始時の新規資金の受け皿となる素地がある。
◎小野建 <7414> [東証P]
鉄鋼商社大手で、M&Aを通じ事業規模を拡大させている。24年3月期は売上高で前期比9.1%増の2865億8300万円、最終利益で同4.5%減の67億900万円を計画。鋼材市況を巡る不透明感が意識されるなかで、PBRは0.45倍にとどまっており、資本効率の向上に向けた取り組みへの思惑を広げやすい水準だ。社名と同じ小野建氏が社長を務め、九州発祥企業で中国・九州地域の売上高比率が高い。巨大半導体工場の建設計画が目白押しの九州地方で、商機拡大の恩恵享受による業績上振れシナリオに期待が膨らむ。
◎フージャースホールディングス <3284> [東証P]
「DUO(デュオ)」ブランドのマンション開発などを展開。23年4~9月期の売上高は前年同期比43.1%増の287億6200万円、営業利益は同6.7倍の19億2400万円と大幅な増収増益を果たし、通期の営業利益予想は19年3月期の過去最高水準に迫る。代表取締役会長の広岡哲也氏が筆頭株主。以前に旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスが筆頭株主となったが、21年に自己株式の公開買い付けを実施しシティの保有株式を取得したという経緯がある。配当利回りは5.4%前後と高水準で、ヒストリカルにみた収益拡大実績からみてもPER7倍台は割安感が意識される。
◎オークワ <8217> [東証P]
和歌山県を地盤とする有力スーパーマーケット。創業家の大桑弘嗣氏が社長を務める。出店や改装に向けた投資がかさみ8月中間期決算は最終利益が前年同期比37.1%減の3億9900万円と業績はやや低調な状況で、下期に挽回を狙う同社だが、上期の地域別の売上高では、地元和歌山県での増収率が8%と高く、愛知県が7%と続く。競合する関西系のスーパーも攻勢をかける愛知県で増収を確保している点はポジティブ。中部圏での新規出店効果による業績の伸びしろも意識させる。PBRは0.45倍。株価は年初来安値近辺にあり値頃感も強まった状況だ。
◎藤商事 <6257> [東証S]
パチンコ・パチスロ遊技機メーカーで会長の松元邦夫氏と副会長の松元正夫氏がそれぞれ21%を保有する大株主。23年4~9月期の経常利益は前年同期比3.0%減の25億9000万円で7~9月期では経常赤字となったが、通期計画に対する進捗率は約52%で会社側は順調に推移しているとの認識を示す。スマートパチスロ機の需要拡大が業績を下支えするなか、下期はスマートパチンコ機「ゲゲゲの鬼太郎 獅子奮迅SP」や、主力タイトルのスマスロ「とある魔術の禁書目録」の投入効果を見込む。PBRは0.59倍と水準是正の思惑が広がりやすいうえ、配当利回りは5%に迫る高水準。200日移動平均線を大きく下回る株価の反騰攻勢を期待したい。
株探ニュース
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