「窓空け下落、安値引けで強い先安観」 

著者:黒岩泰
投稿:2015/09/24 19:56

「目先の材料はTPP交渉」

 本日の日経平均は498.38円安の17571.83円で取引を終了した。連休中の海外株安を受けて大幅安からスタートしたあとは、下値を探る動き。独フォルクス・ワーゲンの排ガス不正問題を嫌気して売りが優勢となり、自動車株を中心に下落幅を拡大させた。また、指数寄与度が大きいソフトバンク(9984)が大幅安。全体相場の足を引っ張った。

 日経平均の日足チャートでは、窓を空けて下落。安値引けとなっており、強い先安観が出ている。9/9の急上昇の1300円をすべて吐き出す形となっており、弱気相場が継続していることを示唆。目先はさらに下値を試す動きとなりそうだ。

 「窓・壁・軸理論」では、上方にファンダメンタルズの壁が位置。上昇しにくい状態となっており、そのエネルギーが下方向で発散される形となっている。「18000円以上が割高」と判断されているからであり、株価は下方向にしか動きようがない。16000円台に突っ込むのは時間の問題といえそうだ。
 
 株式市場は基本的に材料不足である。米FOMC、安保法案という重要イベントが通過し、虚無感すら漂いつつある。そのようななか、連休中に独VWの排ガス不正問題が発覚。VW保有のスズキ株(4700億円)買い取りが確定したあとでの問題発覚は、何ともタイミングの良い話。米国にはめられた感は否めない。「獲れるところから獲る」――そういう米規制当局の思惑もありそうだ。
 
 東京株式市場の次の材料になりそうなのが、TPP交渉だ。安倍政権はアーミテージ・ナイ・レポートを忠実に遂行しており、残されたものがこのTPP――日本の主権と権益を売り飛ばすこの不平等条約を何とか締結したいと考えている。安保法案が成立したからこそ、注力できるというものである。
 
 だが、TPP参加各国の思惑は入り乱れている。特に問題なのが、自動車の原産地規則の設定である。「何%を域内から部品調達すれば関税ゼロの適用を受けられるか」が焦点となっており、この交渉が難航しているのだ。今週末には首席交渉官会合が開かれる。日本が完全譲歩する形で締結する可能性もあり、その辺は注意しなければならない。最悪の場合、「日本から輸出する車には関税がかけられ、輸入車には関税がゼロ」なんていう事態にもなりかねない。当然、これは株価のマイナス要因であり、投資家としては無視できないのだ。「TPP締結で株価が上昇」なんていうものは、全体相場に限ればありえない話。国民、国内企業にとって負の側面が多すぎる。
 
 さて、先日、国会を通過してしまった安保法案だが、依然として国民の反対は根強く、いずれは違憲裁判などが開かれることになるのだろう。だが、最高裁で違憲判決が出る可能性は極めて低い。なぜならば、最高裁は砂川事件で「日米安保に関連するような高度な政治事案は判断しない」という判例を出しており、これを踏襲する可能性が高いからだ。それが分かっているからこそ、安倍政権は今回の安保法案をゴリ押しした――そういわざるを得ないのである。 
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想