動画配信は拡大加速へ、米社上陸で進化する「定額見放題」

著者:冨田康夫
投稿:2015/03/25 15:16

動画による広告市場の一段の拡大にもつながる

 日本の動画配信を巡る状況が急速に変化しつつある。今年2月、米動画配信大手のネットフリックス(カリフォルニア州)が今秋にも日本で定額制の動画配信サービスを開始すると発表し、迎え撃つ日本勢もタイトル数の拡充に余念がない。動画配信の隆盛は、スマートフォンやタブレットで動画を楽しむユーザーが増えていることが背景にある。動画配信の普及がさらに広がれば、動画による広告市場の一段の拡大にもつながると期待されている。

 ネットフリックスは2007年に米国で定額制見放題の動画配信サービスを開始した。月額10ドル程度で映画やテレビ番組が見放題という手軽さとITを駆使した使いやすさが受け、現在では約50カ国・地域で展開、会員数は米国を中心に5700万人以上。米国ではCATVを解約して乗り換える動きが社会現象と言われるまでになった。同社は17年までに新たに150カ国に進出する計画を表明しており、日本進出もその一環だ。

 日本で定額制見放題の動画配信といえば、NTTドコモ<9437>の「dビデオ」が有名だ。動画本数10万本以上、映画・ドラマなど約2万3000タイトルは国内随一で、もとはドコモの契約者向けサービスだったが、キャリアフリー化で誰でも利用できるようになった。とはいえ、現在でもドコモユーザーが大半であり、 “伸びしろ”を期待する向きも多い。また、KDDI<9433>のauでは「ビデオパス」、ソフトバンク<9984>は「UULA」を手掛けているが、現在のところ会員数、配信コンテンツ数ともにドコモが先行している。

 この「dビデオ」を追撃しているのが、ネットフリックスと並んで米定額制動画配信サービスの先駆け的存在である「hulu」で、日本では11年にサービスを開始したが、昨年、日本テレビホールディングス<9404>が日本事業を買収したことで日本での展開が加速している。

 また、楽天<4755>の「楽天SHOWTIME」、U-NEXT<9418>の「U-NEXT」なども順調に会員数を伸ばしている。ネットフリックスの日本進出で市場が本格的に拡大すれば、これら各サービスの動きも活発化しそうだ。

 一方、動画配信市場が活性化すると、動画広告にとっても刺激となる可能性が高い。

 サイバーエージェント<4751>が市場調査とコンサルティングのシード・プランニング(東京都文京区)と共同で行った市場動向調査によると、14年の動画広告市場は前年比2.0倍の311億円に達したもようで、17年には13年の5倍強となる880億円に拡大すると予測している。中でも、スマートフォン向け需要が占める割合は、13年の16%から14年には30%弱へと拡大、17年には52%に達するとみられており、これを得意とする企業には恩恵が大きそうだ。

 特にメディアレップ(媒体代理店)各社の動きが活発だ。サイバーエージェントでは、テレビCMの効果分析を組み合わせたインターネット動画広告配信を開始した。テレビCM効果が薄いとみられる視聴者層に向けてネットの動画広告を「YouTube」で配信する。また、メディアレップ首位のデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム<4281>は、スマートフォン向け動画広告をヤフー<4689>と共同開発。オプト<2389>は視聴者ニーズをきめ細かく反映させた動画広告の制作サービスを開始し広告主に売り込んでいる。

 さらに、動画広告配信プラットフォームでは、グリー<3632>の子会社Glossomが動画広告配信プラットフォーム「AdColony(アドコロニー)」を運営。動画広告配信の増加が業績拡大につながりそうだ。

 このほかにも、メディアシーク<4824>はスマートフォン用アプリ上に動画広告を配信する事業に参入するという。国内で大きなシェアを持つバーコード読み取りアプリと動画広告事業を組み合わせた新たなサービスとして、業界から注目されている。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想