■ムサシ<7521>の業績動向と今後の見通し
3. 2020年3月期の考え方と選挙システム機材事業の見通し
(1) 基本的な考え方
2020年3月期の業績予想はまだ公表されていないが、弊社では増益に転じる可能性は高いと考えている。理由は、2020年3月期中においては期初の2019年4月に統一地方選が、2019年7月には国政選挙である参院選が予定されていることだ。過去実績を調べると、国政選挙の実施年においては選挙システム機材事業が収益を伸ばし、全社のベースの業績を押し上げる傾向が明確に見て取れる。統一地方選も国政選挙に準じる大規模イベントと言える。2020年3月期において、過去と同様のパターンが再現される可能性は高いというのが弊社の見方だ。
(2) 選挙システム機材事業の動向と成長戦略
選挙システム機材事業の収益は国政選挙の有無で大きく変動し、結果的に全社ベースの業績をも大きく左右する傾向がある。
国政選挙の際に同事業の収益が伸びるのは、主力製品の投票用紙読取分類機をはじめ各種選挙関連機材の販売が同じタイミングで全国規模で伸長するためだ。統一地方選も似たような性質があるが、国政選挙は国の予算、地方選は各自治体の予算、という差があり、それが販売に影響を及ぼしていると考えられる。
一方、選挙システム機材事業の収益が全社の業績を左右する理由は、同事業の利益率が高いためだ。利益率が高い理由は各種機器やシステムを自社生産しており同社がメーカーとして機能しているためだ。それ以外の、例えば印刷システム機材や紙・紙加工品などは、同社は商社として機能しているため利益率が低い状況にある。したがって特に利益の面で、選挙システム機材事業の動向によって全社の業績が左右されるという特性がある。
国政選挙が実施された年は、国政選挙がない年(スキップ年)と比較して、選挙システム機材事業の収益が明確に高い傾向にある。こうした過去のパターンの再現性については、競争環境の変化や事業環境の変化が重要なポイントとなるが、これまでのところそうした変化は認められない。したがって2020年3月期において同社の選挙システム機材事業は、これまで同様、収益を伸ばすと期待される
選挙システム機材事業については、短期業績の変動要因というだけでなく、中長期の成長エンジンという位置付けもされている。それは国政選挙実施年とスキップ年で山谷を繰り返しつつも、トレンドライン(傾向線)は右肩上がりとなっていることが背景にあると考えられる。
同じ国政選挙、例えば衆院選同士の比較において、売上高が増加している理由は、いくつか考えられる。1つは同社機材の市場シェアが上昇しているということだ。また、同社の選挙関連商品のラインアップが機器やシステムから用品用具まで非常に幅広いため、それが売上成長につながっている側面もあるだろう。そうしたなかで弊社が推測する最も大きな要因は省力化ニーズの高まりだ。これは、期日前投票数の増加によって期日前投票所の大型化が進んでいることや、「有権者年齢の引き下げ」で有権者が増加したことなどが要因となって、人手を要する投開票作業の効率化を図るニーズが高まっているということだ。同社は機器において約80%の市場シェアを有しており、こうしたニーズと高シェアが、選挙システム機材事業が“シクリカルグロース”の動きをしている最大の理由だと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
<SF>
3. 2020年3月期の考え方と選挙システム機材事業の見通し
(1) 基本的な考え方
2020年3月期の業績予想はまだ公表されていないが、弊社では増益に転じる可能性は高いと考えている。理由は、2020年3月期中においては期初の2019年4月に統一地方選が、2019年7月には国政選挙である参院選が予定されていることだ。過去実績を調べると、国政選挙の実施年においては選挙システム機材事業が収益を伸ばし、全社のベースの業績を押し上げる傾向が明確に見て取れる。統一地方選も国政選挙に準じる大規模イベントと言える。2020年3月期において、過去と同様のパターンが再現される可能性は高いというのが弊社の見方だ。
(2) 選挙システム機材事業の動向と成長戦略
選挙システム機材事業の収益は国政選挙の有無で大きく変動し、結果的に全社ベースの業績をも大きく左右する傾向がある。
国政選挙の際に同事業の収益が伸びるのは、主力製品の投票用紙読取分類機をはじめ各種選挙関連機材の販売が同じタイミングで全国規模で伸長するためだ。統一地方選も似たような性質があるが、国政選挙は国の予算、地方選は各自治体の予算、という差があり、それが販売に影響を及ぼしていると考えられる。
一方、選挙システム機材事業の収益が全社の業績を左右する理由は、同事業の利益率が高いためだ。利益率が高い理由は各種機器やシステムを自社生産しており同社がメーカーとして機能しているためだ。それ以外の、例えば印刷システム機材や紙・紙加工品などは、同社は商社として機能しているため利益率が低い状況にある。したがって特に利益の面で、選挙システム機材事業の動向によって全社の業績が左右されるという特性がある。
国政選挙が実施された年は、国政選挙がない年(スキップ年)と比較して、選挙システム機材事業の収益が明確に高い傾向にある。こうした過去のパターンの再現性については、競争環境の変化や事業環境の変化が重要なポイントとなるが、これまでのところそうした変化は認められない。したがって2020年3月期において同社の選挙システム機材事業は、これまで同様、収益を伸ばすと期待される
選挙システム機材事業については、短期業績の変動要因というだけでなく、中長期の成長エンジンという位置付けもされている。それは国政選挙実施年とスキップ年で山谷を繰り返しつつも、トレンドライン(傾向線)は右肩上がりとなっていることが背景にあると考えられる。
同じ国政選挙、例えば衆院選同士の比較において、売上高が増加している理由は、いくつか考えられる。1つは同社機材の市場シェアが上昇しているということだ。また、同社の選挙関連商品のラインアップが機器やシステムから用品用具まで非常に幅広いため、それが売上成長につながっている側面もあるだろう。そうしたなかで弊社が推測する最も大きな要因は省力化ニーズの高まりだ。これは、期日前投票数の増加によって期日前投票所の大型化が進んでいることや、「有権者年齢の引き下げ」で有権者が増加したことなどが要因となって、人手を要する投開票作業の効率化を図るニーズが高まっているということだ。同社は機器において約80%の市場シェアを有しており、こうしたニーズと高シェアが、選挙システム機材事業が“シクリカルグロース”の動きをしている最大の理由だと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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