S&P 500月例レポート

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英国の奴らめ

 英国の奴らめ――少なくとも、ポートフォリオ・マネジャーたちはそう思ったはずです。というのも、欧州連合(EU)残留派勝利との予想から一転して離脱派が勝利を収めた英国の国民投票は、結果として、世界の時価総額に2兆800億ドルという過去最悪の損失をもたらしたのです。それどころか、まとまった空売りをした投資家もいなかったため、買いが入る動きは見られませんでした。国民投票後、株式市場には避難先がほとんどなく、「質への逃避」が金と債券の価格を押し上げ(利回りは低下)、VIX恐怖指数も上昇しました。英ポンドは下落し、対米ドルでは30年ぶりの安値を付けましたが、英国の運命以上にEUの運命が窮地に立たされました。市場の混乱は選挙結果が判明した24日の金曜日だけでは収まらず、週明けの月曜日にも影響が及んでさらに9,310億ドルの損失が生じ、2営業日合わせると過去最高の3兆100億ドルが投資家の懐から失われることとなりました。しかしながら、(少なくとも現実的なファンダメンタルズ抜きの)反射的な動きによる恩恵もあります。相場の下落が止まり、その後3日間で2兆700億ドルのリバウンドを見せ、マーケットは持ち直しました。結局、国民投票後の5日間を9,360億ドルのマイナスで終え、年初来では3,530億ドルのマイナスとなりました。これで損失が解消されたわけではなく、もちろん、不安定な状況から脱したわけではありません。離脱の詳細が固まるまでには何年もかかり、今の段階では(シェイクスピアには悪いけれど)、とんでもない憶測、政治的な会合、過剰な宣伝による相場の浮き沈みは避けられないでしょう。

 大西洋のこちら側では、状況は良くないものの、あのジャクソンホール、または米国の格付けが「AA+」に引き下げられた時(損失額は、1日としては史上5番目となる1兆5,500億ドル)とは違いました。プラスの面として挙げられるのは、利上げについて議論する人がいなくなったこと(7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げなど、想像できるでしょうか?)、米国経済は依然として底堅く(絶好調とは言えないまでも良好)、そして何よりも、「ブレグジット(英国のEU離脱)」が米国の政治から私たちの関心をそらしたことです。そして、債券担当の同僚たちが英国の格付けを「AAA」から「AA」に引き下げる必要性を強く感じたのは言うまでもありません。世界中の金利が一段と低下して利息を当てにする投資家には何の足しにもならず(しかし、ストレステストでの米連邦準備制度理事会(FRB)による増配の承認は、銀行の配当を当てにする投資家の助けになるはずです)、また、様子見資金を株式市場に呼び戻そうという目標からは、一歩後退したかもしれません(後退ではなく失敗とみる向きもありますが)。

 S&Pグローバル総合指数(BMI)の構成銘柄の時価総額は、6月に4,730億ドル減少して42兆6,700億ドルとなりました(5月は1,210億ドルの減少)。年初来では3,530億ドルの減少です。一方、S&P500指数の時価総額は6月に680億ドル減少して18兆1,900億ドルとなりました(5月は2,240億ドルの増加)。年初来では2,930億ドルの増加です。S&P500指数がBMIの時価総額に占める割合は、前月の42.33%から42.64%に上昇しましたが、この割合は2015年末には41.61%、2010年末には33.87%でした。日経平均と上海総合指数は6月中に互いに異なる動きを見せましたが、それぞれ年初来のパフォーマンスでは大差ない水準で月を終えています。6月の日経平均は9.63%の下落となり(5月は2.98%の上昇)、年初来では18.71%の下落です。6月の上海総合指数は0.45%の上昇となり(5月は0.74%の下落)、年初来では17.22%の下落です。

 国民投票の結果は確定しました。そして、S&P500の6月のリターンは許容範囲といえる0.09%(配当込みで0.26%)で、プラスで月を終えることができました。第2四半期は1.90%(同2.46%)のプラスとなり、年初来では2.69%(同3.84%)、過去1年間のリターンは1.73%(同3.99%)となっています。現在の水準は引け値ベースの過去最高値から1.50%下回っています。

 今となっては信じられないかもしれませんが、6月には英国の国民投票以外にもマーケットと世界のそれぞれで(筆者は、マーケットと世界が同じと考えるほど無邪気ではありません)様々なイベントがありました。スイスの有権者は、雇用状況にかかわらず全員に収入を保証するという提案を否決(反対77%、賛成23%)しました。フロリダ州オーランドのナイトクラブで、テロリストに共感した犯人の銃撃により49人が死亡し、トルコのイスタンブール空港では自爆テロで42人が死亡しました。ロンドンでは、国民投票に向けた活動期間中に下院議員が撃たれて(英国では極めてまれな事件)亡くなり、EU残留派、離脱派とも2日間にわたり活動を停止しました。ドイツの10年物国債が、日本、デンマーク、スイスに続いて史上初のマイナス利回りで取引され、さらに、スイスの30年物国債利回りも初めてマイナス圏に突入しましたが、これは「ブレグジット」前のニュースでした。パナマ運河の拡張工事が完了し、2016年6月26日に正式に通行が開始されました。これによって、太平洋と大西洋の間でより多くの輸送が可能になります。株価指数を開発・算出するMSCIは、中国A株(本土で取引されている人民元建て株式)について、同社の新興国株指数への採用を見送ると発表しました。MSCIは情報開示と透明性に懸念を示しており、不採用の決定は3度目となりますが、今回は採用されるとの見方が大半を占めていました。それとは関係ないものの、人民元が対米ドルで5年ぶりの安値水準まで下落しました。中国はApple(AAPL、6月は4.3%安)が中国の特許を侵害したとして、「iPhone 6」と「iPhone 6プラス」の国内販売の停止命令を出しました。配車サービスのUBERは、サウジアラビアの政府系ファンドから35億ドルの出資を受けました。また、エンターテインメントのWalt Disney(DIS、同1.4%安)は新たなテーマパーク「上海ディズニーリゾート」を開園しました。総工費は約55億ドルとみられています。また、クレジットカードの貸倒引当金を引き上げると警告したSynchrony Financial(SYF)の株価は6月に19.0%下落しましたが、これは業界全体の傾向を示唆している可能性があります。


 経済関連では、欧州中央銀行(ECB)がウィーンで理事会を開催し、ドラギ総裁は政策対応を講じる態勢にあると述べたものの、政策金利を据え置き、現行の金融政策を維持する決定がなされました。また同じウィーンで石油輸出国機構(OPEC)も定時総会を開きましたが、生産量と価格についての合意には至りませんでした。ECBによる社債購入プログラムがスタートし、欧州各国の中央銀行が実際の買い入れを実施しました。中国の5月の消費者物価指数の伸びは、4月の前年同月比2.3%に対し、2.0%に鈍化しました。中国の固定資産投資も5月末時点での年初来伸び率は9.6%となり、4月末時点の10.5%から鈍化しました。民間部門の固定資産投資が1-4月の5.2%から1-5月は3.9%に鈍化したことが一因でした。安倍首相は予定していた消費税率の(8%から10%への)引き上げを2019年まで延期すると同時に、国内経済の下支えのために新たな景気刺激策を導入すると発表しました。日本の2016年第1四半期のGDP成長率の2次速報値は年率換算ベースで1.9%となり、1次速報値の1.7%から上方修正されました。また、4月の機械受注は3月から11.0%減少しました(市場予想は2.3%減)。大幅な落ち込みの一因として熊本地震の影響が指摘されています。日本の5月の輸出は前年同月比11.3%減(4月は10.1%減)となりました。事前予想の10.4%減を上回る減少幅となり、その要因として中国向け輸出が前年同月比で14.9%減少したことが挙げられます(市場予想は7.6%減)。オーストラリアの第1四半期GDP成長率は事前予想を上回る前年同期比3.1%となり、オーストラリア準備銀行(中央銀行)が目標とする2.5%~3.5%の範囲内に収まりました。石油依存度が高いナイジェリアはドルペッグ制の廃止を決定しましたが、これを受けて、ナイジェリア・ナイラは40%下落しました。

 米国経済関連では、5月のサプライ管理協会(ISM)製造業景況指数は51.3となり、市場予想の50.6を上回りました。4月の建設支出は事前予想の0.6%増に対し、1.8%減となりました。5月の鉱工業生産は0.4%低下し、市場予想の0.1%低下を上回る落ち込みとなりました。設備稼働率も事前予想の75.2%に対して74.9%となりました。5月の輸入物価指数は、市場予想の前月比0.8%上昇に対し、1.4%の上昇となりました。ただし、前年同月比では5.0%の低下となっています。また、輸出価格指数は市場予想の0.2%上昇に対して前月比1.1%上昇となりましたが、前年同月比では4.5%低下しました。第1四半期の労働生産性は、事前予想通り、前期比で0.6%低下しました。また、単位労働コストは市場予想の前期比4.1%を上回る4.5%の上昇となりました。前期と同様、労働生産性が低下し、単位労働コストが上昇する結果となりました。4月の卸売在庫は前月比0.6%増となり、市場予想の0.1%増を上回りました。5月の小売売上高も市場予想を上回る伸びをみせました(前月比0.5%増、市場予想は0.3%増)。5月の生産者物価指数(PPI)は事前予想の前月比0.3%の上昇を上回る0.4%上昇となりました。前年同月比は引き続き0.1%の下落となっています。食品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.3%の上昇(市場予想は0.2%上昇)、前年同月比では1.2%の上昇となりました。5月の消費者物価指数(CPI)は、市場予想の前月比0.3%上昇に対して、0.2%の上昇となりました(前年同月比は1.0%上昇)。食品とエネルギーを除くコア指数は市場予想通り前月比0.2%上昇し、前年同月比では2.2%の上昇となりました。5月の個人所得は前月比0.2%増加しました。市場では0.3%の増加が見込まれていました。また、個人消費支出は同0.4%増となり、市場予想と一致しました。5月のPCE価格指数とPCEコア価格指数は共に市場予想通りの前月比0.2%の上昇となりました。前年同月比の伸び率はそれぞれ、0.9%と1.6%のプラスとなっています。5月の耐久財受注は、事前予想の前月比0.7%減に対して2.2%減と大きく落ち込みました。一方、前年同月比では3.2%増とプラスを維持しています。輸送機器を除いた5月の耐久財受注は前月比0.3%減(市場予想は横ばい)、前年同月比0.4%減となりました。貿易統計(速報値)によると5月の財の輸出は前月比0.2%減、財の輸入は1.6%増となりました(季節調整後、センサスベース)。第1四半期のGDP成長率の確報値は年率換算で前期比1.1%となり、改定値の0.8%から上方修正されました。第1四半期のGDP価格指数は0.4%上昇と、改定値の0.6%上昇から低下しました。6月開催のFOMCでは市場の予想通り政策金利が据え置きになりました。FOMCメンバーによる(「ドット・チャート」として知られる)四半期予測は利上げ見通しの後退と年内2回の利上げの可能性を示唆しています。FRB(と会合後の記者会見のイエレン議長)は、失業率は低下しているものの、雇用の増加幅が縮小していることから、一段とハト派的な政策運営で臨む姿勢を示しました。英国のEU離脱に関しては、イエレン議長は事態を注視すると述べるにとどめました。議長はFOMCの翌週、英国の国民投票前に上院銀行委員会で半期に1度の2日間にわたる証言を行い、そこでの発言にも再度注目が集まりました。FOMC後の記者会見における経済が「いつ」改善するかを注視しているとの発言に対し、議会証言では経済が改善する「かどうか」を注視していると表現を修正したことから、議長は慎重姿勢を幾分強めたように見受けられました。そして英国がEUからの離脱を選択した場合、経済面で重大な影響が及ぶ可能性があると述べました。


 住宅関連では、一部の見通しは強気過ぎるようにも見えたものの、引き続き明るいニュースが大勢を占めました。米連邦住宅金融局(FHFA)が発表した4月の住宅価格指数は前月比0.2%の上昇となりました(市場予想は実績値を大きく上回る0.6%)。前年同月比では5.9%の上昇でした。6月の住宅市場指数は60となり、前月の58から上昇しました(市場予想は59)。5月の住宅着工件数は年率換算で116万4,000戸、着工許可件数は113万8,000戸となりました。中古住宅販売件数は年率換算553万戸、前月比1.8%増、前年同月比4.5%増となりました。5月の新築住宅販売件数は年率換算で55万1,000戸と事前予想の56万5,000戸を下回りました。また予想外の高水準となった4月の数字は当初発表の61万9,000戸から58万6,000戸に下方修正されました。5月の中古住宅販売仮契約指数は前月比3.7%の低下となりました。市場は1.0%の低下を予想していました。4月のS&Pケース・シラー住宅価格指数は前月比1.1%上昇(市場予想は1.0%上昇)、また前年同月比で5.4%の上昇となりました(3月の同5.5%から低下)。

 雇用に関しては、6月14-15日のFOMCに先立つ大きなイベントとして5月の雇用統計が発表されましたが、結果は冴えませんでした。5月の就業者数は15万8,000人増の予想に対し、わずか3万8,000人の増加(2010年9月以降で最低)にとどまり、4月と3月の増加数もそれぞれ2万2,000人と3万8,000人下方修正されました(2カ月で5万9,000人引き下げられ、5月は3万8,000人しか増加していません)。失業率は4.7%に低下(4月は5.0%)しましたが、これは労働者が雇用市場から離れたことが理由で、労働参加率は前月の62.8%から62.6%に低下しました。平均時給は前月比0.2%増加し(予想通り)、前年同月比では2.5%増加しました。週平均労働時間は横ばいの34.5時間でした。今回の雇用統計の結果を受けて、FRBが6月または7月に利上げを行う可能性が低下し、金利や米ドルとともに相場も下落しました。その他の雇用関連では、ロンドン証券取引所(LDNXF)がドイツ取引所(DBOEY)との合併の一環として1,250人を削減すると報道されました。Daimlerは、大型トラックの需要低下に伴い、1,200人を追加で削減すると発表しました。人員削減が発表されたのは今年に入って2回目です。アパレル小売企業のRalph Lauren(RL、同5.0%安)もリストラ策を発表し、一部店舗の閉鎖と1,000人(全体の8%)の人員削減を発表しました。税務申告サービスのH&R Block(HRB、同7.7%高)は、具体策は明らかにしませんでしたがコスト削減の意向を示したことで、6月の月間上昇率は指数構成企業で最も高い11.9%を記録しました。ディスカウントストアチェーンのWal-Mart(WMT、同3.2%高)は、バックオフィス業務で1,500人の削減を発表しました。Dow Chemical(DOW、同3.2%安)は、Dow Corningとの合併に伴い2,500人(全体の4%)を削減すると発表しました。

 M&A関連では、販売システム・情報管理のSalesforce.com(CRM、同5.1%安)がDemandware(DWRE、同56.1%高)を現金28億ドルで買収すると発表しました。インターネットおよびシステム・セキュリティ・ソフトのSymantec(SYMC、同18.3%高)は、同業で未公開会社のBlue Coat(上場計画中)を現金46億ドルで買収し、Blue CoatのCEOがSymantecのCEOに就任することを明らかにしました。ソフトウエア企業のMicrosoft(MSFT、同3.5%安)は、LinkedIn(LNKD)を現金262億ドルで買収すると発表し、LinkedInの株価は6月に38.6%上昇しました。Microsoftは1,000億ドルを上回る現金および現金同等物を保有していますが、低金利を背景に買収費用は調達した資金で賄うと発表しました。これに関連して、Moody’s RatingsはMicrosoftによる買収費用の資金調達を理由に、同社の「Aaa」の格付けの見直しに入ることを明らかにしました。中国のメディア/エンターテインメント/インターネット企業Tencent(およびパートナー企業)は以前から噂されていた通り、フィンランドのゲームソフト会社Supercellの株式80%(日本のSoftBankおよびSupercellの従業員が保有)を80億ドルで買収することを明らかにしました。電気自動車メーカーのTesla Motors(TSLA、同4.9%安)は、SolarCity(SCTY、同6.9%高、買収発表直後に11.6%上昇)を買収すると発表しました。Elon Musk氏が両社の最大株主ですが、今回の買収は投資家に好感されませんでした。医療機器メーカーのMedtronic(MDT、同7.8%高)は心臓用医療機器メーカーのHeartware International(HTWR、同96.4%高)を現金11億ドルで買収すると発表しました。買収価格は前日の終値に対して93%上乗せした金額です。Apollo Global Management(APO、同1.2%高)は世界的なリゾート企業であるDiamond Resorts International(DRII、同30.7%高)を22億ドルで買収すると発表しました。加工食品や飲料を手掛けるMondelez International(MDLZ、同2.3%高)は菓子メーカーのHershey(HSY、同22.2%高)に対して210億ドルでの買収を提案しました。M&A関連のマイナス材料としては、米規制当局はAnthem(ANTM、同0.6%安)とCigna(CI、同横ばい)の480億ドル規模の統合に懸念を示しました。Energy Transfer Equity(ETE、同13.7%高)は買収に伴う税負担を理由に、Williams Companies(WMB、同2.4%安)の330億ドルでの買収を断念すると発表しました。


 個別銘柄のニュースとしては、5月の自動車販売台数は前年同月から減少し、Ford(F、同6.8%安)は6.1%減、General Motors(GM、同9.5%安)は18%減となりました。トヨタ(TM、同3.3%安)は、排気装置の不具合により世界で290万台のリコールを発表しました。Volkswagen(VLKAY、同12.4%安)は、ディーゼル車の排ガス問題をめぐり米政府と150億ドルを支払うことで和解する構えであると報じられました。Royal Dutch Shell(RDS.A、同13.9%高)は、2018年までに約300億ドル相当の資産を売却し、2016年の設備投資が290億ドル(2014年比35%減)となるとの計画を発表しました。バイオ製薬企業のValeant Pharmaceutical International(VRX、同29.2%安)は2016年のガイダンスを下方修正しました。インターネット小売り大手のAmazon.com(AMZN、同1.0%安)は、インド事業拡大のための投資額を従来計画の50億ドルから30億ドル追加すると発表しました。Walt Disney(DIS、同1.4%高)は推定55億ドルを投じた「上海ディズニーリゾート」が新たに開園しましたが、フロリダ州オーランドのテーマパークで2歳児が死亡した事故でお祝いムードが打ち消されました。Synchrony Financial(SYF、同19.0%安)は、クレジットカードの貸倒引当金を引き上げるとの警告を発しましたが、これは業界全体の傾向を示唆している可能性があります。Apple(AAPL、同4.3%安)は、インドの規制緩和を受けてインド国内で直営店開設を計画する一方で、中国事業は一段と苦戦しています。イランはBoeing(BA、同2.9%安)と総額250億ドルの航空機購入契約をめぐって合意し、米当局の承認を待っています。Airbnbは、企業価値を300億ドルとする新規投資をめぐって交渉を行っているとの報道がありました。Tesaro(TSRO)は卵巣がん治療薬の臨床試験で生存率の改善が示され、株価が6月に81.5%上昇し、時価総額は38億ドルになりました。米財務省はGeneral Electric(同4.1%高)を「システム上重要な金融機関」(大き過ぎてつぶせない)リストから除外しました。FRBは銀行33行に対するストレステストの結果を発表し、理論上で総額3,850億ドルに上る損失にも耐え得るとして、全行を合格としました。また「大き過ぎてつぶせない」銀行33行のうち31行の株主還元(配当および自社株買い戻し)計画を承認し、Deutcsche Bank(IMFは同行について、世界で最もリスクの高い金融機関と言及)の米国支店とSantanderの資本計画を却下しました。Morgan Stanley(MS、同5.1%安)は、資本計画を再提出するという条件付きで承認されました。過去の例を見ると、承認された銀行は自社株買い戻しの拡大や増配を行っています。

 米国10年国債利回りは5月末の1.84%から低下して1.48%で取引を終えました(2015年末は2.27%、2014年末は2.17%)。30年債の利回りは5月末の2.65%から2.28%に低下しました(同3.02%、同2.75%)。通貨は値動きが大きくなり、米ドルは対ユーロで上昇し、1ユーロに対して5月末の1.1125ドルから6月末は1.1114ドルとなりました(2015年末は1.0861ドル)。米ドルは対英ポンドでも上昇し、1ポンドに対して5月末の1.4462ドルから1.3320ドルとなりました(同1.4776ドル)。一方、ドルに対する円高が進み、1ドルに対して5月末の110.631円から103.02円となりました(同120.66円)。人民元は1ドルに対して5月末の6.5790元から6.6648元に下落しました(同6.4931元)。金価格は1,300ドル台を付けた後もその水準を維持し、5月末の1,219.60ドルから1,325.10ドルに上昇して取引を終えました(2015年末は1,060.50ドル、2014年末は1,183.20ドル)。原油価格は不安定な値動きとなり、一時1バレル51ドルを上回ったものの、5月末の48.95ドルから48.38ドルに下落しました(同37.04ドル、同53.27ドル)。ガソリン価格は引き続き上昇し、5月末の1ガロン2.300ドルから2.329ドルに上昇しました(同2.034ドル、同2.299ドル)。6月のVIX恐怖指数は5月末の14.91から15.63に上昇して月を終えました(2015年末は18.21)。
 

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投資家が押さえておくべきポイント
 英国の国民投票の結果は確定しました。そして、S&P500指数は6月に上昇し、許容範囲といえる0.09%(配当込みで0.26%)のリターンを上げました。第2四半期は1.90%(同2.46%)の上昇、年初来では2.69%(同3.84%)、過去1年間のリターンは1.73%(同3.99%)となっています。現在の水準は引け値ベースの過去最高値から1.5%下回っています。

 6月の市場では短期的および長期的に重要な節目となる出来事が幾つかありました。

・6月24日(金)にS&Pグローバル総合指数の構成銘柄の時価総額は、1日としては過去最悪の2兆800億ドルを失いました。

 *損失の発生は翌週の27日(月)まで及び、さらに9,200億ドルの時価総額が失われて、2営業日合わせると過去最高の3兆ドルが消失しました。

 *28日(火)は下落に歯止めが掛かり、その後3日間リバウンドした結果1兆8,900億ドルを取り戻し、結局、国民投票後の5日間での時価総額の減少は1兆1,200億ドルとなりました。その結果、6月は6,550億ドルの減少で月を終え、年初来では5,350億ドルの減少となっています。

・英ポンドは対米ドルで、投票日当日の取引時間中に一時1ポンド=1.50ドルを付けたものの、翌日の24日には30年ぶりの安値まで下落し、その後落ち着きを取り戻して(今のところは)、同1.3320ドルと5月末の1.4483ドルから8.0%下落した水準で6月末を迎えました。

 *S&Pグローバル・レーティングは、英国の格付けを「AAA」から「AA」に引き下げました(米国の格付けは「AA+」を確認しています)。

・米国10年債利回りは、過去50年間の最低水準1.40%に迫る1.42%まで低下した後、6月末は1.48%となりました(5月末は1.84%、2015年末は2.27%。

・原油価格は1バレル50ドル台を回復したものの、英国の国民投票前に40ドル台に下落し、5月の48.95ドルから1.2%安の48.38ドルで6月の取引を終えました。

・金価格は1,300ドル台まで戻した後もその水準を維持し、1,325.10ドルと5月末の1,219.30ドルから8.7%上昇しました。

・VIX恐怖指数は26.72を付けた後、15.63と5月末の14.19を上回って6月を終えました。ただし、過去の基準からみると、依然として低い水準にとどまっています。

・6月の米国株式市場のパフォーマンスは世界の大半の市場を上回り、世界の株式市場の時価総額に占める米国の割合は(S&Pグローバル総合指数による)、6月末に51.72%まで上昇し、5月末の51.51%、2015年末の51.11%を上回っています。

7月のフューチャー・ショック:
 過去の実績を見ると、7月は56.8%の確率で上昇しており、上昇した月の平均上昇率は5.12%、下落した月の平均下落率は3.24%で、全体の平均騰落率はプラス1.51%となっています。

FOMCの会合:
 7月26-27日、9月20-21日※、11月1-2日、(米国大統領選の投票日は11月8日)、12月13-14日※

※議長の記者会見が通常、米東部時間午後2時30分に行われます。また、四半期ごとの経済見通しの改定が2時に発表されます。
 
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ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・
インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

本翻訳は、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。
SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはこちらをご参照ください。
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配信元: みんかぶ株式コラム