日銀のETF買いでも株価は上昇しないのか

著者:矢口 新
投稿:2016/08/25 11:42

円高でも下値が限られてきた

JPX主体別売買動向
『最近の相場は日銀がETFを大量購入しても日本株はあまり上昇しておらず、もはや円安に振れないと日本株は上昇しないのではないか?』という疑問を寄せられた。

日銀の量的緩和の目的は市場への資金供給ですが、金融商品を購入するので、対象となった商品が値上がりすることは、十分に想定内です。
つまり、国債を買えば国債価格の上昇、利回りの低下が期待できます。
株式ETFを買えば、株価の値上がりが期待できるのです。

ETF(Exchange Trade Fund)とは、取引所に上場され、株式と同じように売買される投資信託です。いつでも購入でき、いつでも売却できるオープン型なので、信託期間も通常は設定されていません。
通常と断るのは、まったく人気がなく資産残高が運用コストに見合わなければ、閉鎖される可能性があるからです。

日経平均型とは、日経平均に連動するように動くETF、TOPIX型とは東証株価指数に連動するように動くETFです。日経平均やTOPIXは指数ですが、ETFは投資信託です。つまり、ETFは投信会社が運用することで、指数に連動させています。

ETFが買われれば、指数と連動させるために、運用会社は市場で株式を買わねばなりません。しかし、現実問題として、指数採用全銘柄を単位株で買うことは不可能で、即座に希望の価格で買うことも望めません。
そこで、ETFの運用とは、できるだけ少数で指数と連動し、尚且つ、指数を歪めない銘柄を選ぶ必要があることが分かります。クオンツ(定量分析家)の出番なのです。

日銀のような長期保有は、一時的な上げ下げに関与するというより、長期的な株価上昇要因となります。では、年間6兆円という規模が大きいのか、小さいのかは過去の主体別売買動向を参照して頂ければ分かると思います。

2012年末以降の日本株上昇の主役は海外投資家でした。2014年までに約17兆円買ったのが見て取れます。なお、日銀のETF購入は、カストディ業務を行う信託銀行の保有として示されていると思われます。

GPIFの株式運用に加えて、6兆円規模のETF購入は株高に効くとみていていいでしょう。もっとも、それ以上の売り物が出てくれば下げる、あるいははやして買い過ぎると一時的に調整されることは自然な動きです。

円安が株高に結び付くことは、これまで通りと考えられますが、円高でも下値が限られてきたことが、ETF購入の効果だといえます。
配信元: 達人の予想