円相場にらみ神経質な展開、日銀のETF買いが下支えに

著者:冨田康夫
投稿:2016/08/19 18:42

来週の東京株式市場見通し

 来週の東京株式市場は、引き続き外国為替市場での円相場動向をにらみながらの神経質な推移が見込まれる。足もとの円相場は1ドル=100円を挟んでの攻防となっているが、これ以上に円高・ドル安が進行した場合、自動車、電機、機械などの輸出関連の主力企業に改めて業績悪化懸念が広がる。

 ただ、日銀による上場投資信託(ETF)買い入れ増額に伴う需給面での下支え思惑が市場参加者の安心感につながっている面もあり、円高によるマイナスのベクトルを緩和する要素となりそうだ。来週の日経平均株価の想定レンジは、1万6200~1万6900円とする。

 市場関係者の関心は、米国現地時間25~27日かけて米カンザスシティー連銀が開催する経済シンポジウム(ジャクソンホール会合)に集まっている。過去にこの会合での発言で米金融政策の方向性が示された経緯があるだけに、26日のイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演での今後の利上げ姿勢に関心が集まっており、それまでは模様ながめムードとなりそうだ。

19日の動意株

 三井海洋開発<6269>=4日続伸。
同社は18日の取引終了後、英の独立系石油開発会社タロー・オイルの子会社タロー・ガーナから受注していたFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)が完成し、17日からガーナ沖での石油生産を開始したと発表しており、これを好感した買いが入った。なお、同FPSOは、ガーナ沖油田向けとしては三井海洋2基目のFPSOで、三井海洋の関連会社が保有し、タロー・ガーナに貸し出される。チャーター期間は10年間で、運転や保守点検などは三井海洋が請け負うことになる。

 ヒト・コミュニケーションズ<3654>=後場上げ幅を拡大。
同社は前場引け後に、従来6円を予定していた期末配当を7円に引き上げると発表しており、これを好感した買いが入っている。中間配当と合わせた年間配当は12円75銭になる見通し。

 ワイエイシイ<6298>=大幅反発。
19日午前10時20分過ぎに提出された大量保有報告書で、ブラックロック・ジャパンが共同保有者と同社株を49万8300株(保有割合5.15%)保有していることが判明し、需給思惑から買いが入っているもよう。なお、保有目的な純投資としている。

 イトーヨーギョー<5287>=ストップ高。
19日付の日本経済新聞で「政府は2020年の東京五輪に向け、電線を地中に埋めて電柱をなくす『無電柱化』を進める」と報じられていることから、電線ケーブルを収納するコンクリートボックス製品を手掛ける同社に関連銘柄物色が波及しているようだ。記事によると、国土交通省は2016年度補正予算で事業費数十億円を確保し、国道の無電柱化などに使うという。また、財務省は日本政策投資銀行から、電力会社や通信会社に資金を貸し出す仕組みを新たに設けて後押しするとしており、文字通り国を挙げての「無電柱化」となるもよう。同社製品は、通信ケーブルや電力ケーブル(低圧)を小型ボックス内に配線し、施工や管路材のコスト削減に効果を発揮することから、需要増加の思惑が働いているようだ。

 アライドアーキテクツ<6081>=大幅続伸。
同社は18日、中国のソーシャルメディア「微博(Weibo)」および「微信(WeChat)」のインフルエンサーを活用したプロモーション分野でIMS社(中国北京市)と新たに独占販売契約を締結した発表。これが材料視されているようだ。IMS社は、「微博(Weibo)」の運営会社である新浪公司が出資するWeibo公式のSNSマーケティング専門会社。アライドアーキは今年4月にインフルエンサーを活用した広告配信サービス「WEIQ」の提供でIMS社と販売代理店契約を結んでおり、さらなるサービスの拡販に向けて、このたびの独占契約に締結に至った。

 日本アジア投資<8518>=反発。
18日の取引終了後、中国・瀋陽市で中小病院・民営病院向けクラウド型経営管理システムを手掛ける瀋陽格冠科技発展への投資を実行したと発表しており、業績への貢献を期待した買いが入っている。情報化が進む中国の医療業界で、病院向けの経営管理システムは大きな成長が期待されている分野だが、瀋陽格冠は大手ソフトウエア開発会社のターゲットとはならない中小病院や民営病院向けに特化することで、スタートアップ企業ながら導入実績を伸ばしている企業。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想