祝日を前に利益確定売り、決算関連の個別物色は継続

著者:冨田康夫
投稿:2016/08/09 19:27

明日の東京株式市場見通し

 10日の東京株式市場は、11日の「山の日」の祝日を前にして、利益確定の売りが先行する展開となりそうだ。きのうきょうの続伸で、日経平均株価は合計510円と大幅上昇したことからも、反動の売りが出やすい地合いとなっている。

 外国為替市場での円相場が1ドル=102円台前半の水準で落ち着いた動きとなっていることもあり、目立った売り材料の見当たらないなかで、4~6月期決算好業績や、それに伴う業績見通し上方修正の個別銘柄を積極的に買い進む流れは続いている。

 市場関係者からは「英国の半導体設計大手アーム・ホールディングスに対する巨額買収などで、一時売られる場面もあったソフトバンクグループ<9984>の株価が、英国の欧州連合(EU)離脱決定前の高値(6月24日の高値6171円)を上回ってきたことも市場のムードを明るくしたようだ」との見方が出ていた。

 9日の東京株式市場は、前日の大幅上昇の反動もあり、前場は売り買い交錯のなか日経平均株価は小動きに終始した。後場に入ると買いに厚みが加わり上げ幅を拡大した。日経平均株価終値は、前日比114円40銭高の1万6764円97銭と続伸した。

9日の動意株

 DIC<4631>=後場急伸。
同社は午後2時30分ごろに、16年12月期の連結業績予想について、売上高を8000億円から7800億円(前期比4.9%減)へ下方修正した一方、最終利益を250億円から300億円(同19.8%減)へ上方修正したことが好感されている。円高の進行で売上高は計画を下回るとみられるものの、高付加価値品の成長やコストダウン、借入利率の低下による支払利息の減少、さらに持分法による投資利益の増加などが見込まれることが要因としている。なお、営業利益は540億円(同5.7%増)の従来予想を据え置いている。

 クラボウ<3106>=後場上げ幅拡大。
同社はこの日午後2時に、17年3月期の第1四半期(4~6月)連結決算を発表。売上高は372億4400万円(前年同期比9.9%減)、営業利益は11億700万円(同48.6%増)、純利益は8億4200万円(同14.0%増)と大幅な増益を達成した。原糸分野は、国内外の連携によるグローバルな生産・販売により順調に拡大、食品分野では、即席めん具材およびスープ市場向け製品が好調に推移している。

 大塚ホールディングス<4578>=後場一段高。
同社は午後1時30分ごろ、16年12月期の連結業績見通しについて、売上高を1兆2500億円から1兆2000億円(前期比17.0%減)へ下方修正した一方、営業利益を700億円から1000億円(同34.1%減)へ、最終利益を500億円から750億円(同10.8%減)へ上方修正したことが好感されている。上期が営業減益ながら期初計画を大きく上回って着地したことに加えて、想定為替レートを1ドル=120円から108円へ、1ユーロ=135円から120円へ見直したことが要因。また、維維食品飲料の株式譲渡に伴う特別利益も反映させたとしている。

 ブラザー工業<6448>=急騰し年初来高値更新。
同社は8日取引終了後、17年3月期の連結業績予想の修正を発表。売上高にあたる売上収益を6575億円から6400億円(前期比6.2%減)予想に減額する一方、最終利益を315億円から335億円(前期比18.8%減)予想に20億円上乗せした。円高環境下でこれが市場のサプライズを誘った。主力の複合機(プリンティング&ソリューション事業)などが米国などで好調、合理化効果などによる利益改善効果も加わっている。株式需給面では信用取組が大幅に売り長であり、空売りの買い戻しも誘発している。

 五洋建設<1893>=大幅高。
同社は8日取引終了後、17年3月期の第1四半期(4~6月)連結決算を発表。売上高は1205億3200万円(前年同期比11.8%増)、営業利益は74億2700万円(同80.3%増)、最終利益は46億8300万円(同84.8%増)と大幅な伸びを示しており、これを好感する買いが集まった。通期営業利益215億円(同4.3%増)予想に対し、第1四半期時点での進捗率は約35%に達した。国内土木事業が好調で利益率の向上も進んでいる。海外でも香港での病院建築の大型案件など受注高も高水準に積み上がっている。

 ユニマット リタイアメント・コミュニティ<9707>=ストップ高。
同社は8日の取引終了後、17年3月期の連結業績見通しについて、営業利益を12億円から14億6000万円(前期比89.1%増)へ、純利益を2億6000万円から7億円(前期1億6300万円の赤字)へ上方修正したことが好感されている。主力の介護事業で、シフト管理の徹底など業務の効率化や人員配置の適正化に継続して取り組んだ結果、売上原価が減少することが要因としている。なお、売上高は451億1000万円(前期比0.3%増)の従来予想を据え置いている。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想