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生成AIの行方

著者:鈴木 行生
投稿:2024/06/03 18:08

・まずはCopilot(マイクロソフトのAI)に、「生成AIの行方」を聞いてみた。以下が最初の反応である。

・「オープンAIが2022年11月に公開した「ChatGPT」から始まった生成AIブームは、世界中で注目を集めています。ChatGPTは対話型AIで、コンテンツ(文書やソースコード、画像、音声など)を自動生成する能力を持っています。その後、企業は生成AIの可能性を活かし、生産性を向上させ、自動化の取り組みを拡大しています。」

・「巨大テック各社も生成AIに注目し、競争を繰り広げています。また、数十億ドルの投資を受け、多くの生成AIスタートアップが誕生しています。生成AIは医療、金融、小売業などさまざまな分野で活用されており、今後も進化を続けていくことでしょう。」

・特に、問題はない。過去の情報から何らかの基準で簡単にまとめているだけである。ちょっと知るには便利である。外部の情報を検索しているので、情報が一般的で大量にあれば、それらしい反応が返ってこよう。

・もっと本格的に学習させたらどうだろうか。圧倒的スピードで学習し、知りたい項目に対する準備を的確に用意してくれるとなれば、これもありがたい。ヒトが判断する上での材料がコンパクトにまとまっておれば、意思決定がしやすい。

・では、自分の脳はどのように鍛えるのか。何でも聞けば便利に答えてくれるので、AIに頼れば、勉強して覚える必要はない。「覚えたことは忘れる。分かったことは忘れない。」とすれば、暗記ではなく、きちんと理解しておけばよい。でも、その理解の仕方もAIに頼るのだろうか。

・‘これはAIがまとめたものだ’と、すぐに見破れるか。それもAIにやらせるのか。見破れられないような内容にまとめてくれ、と指示すれば、それで済みそうである。大学でのレポート作成にAIを使えばよい、仕事の資料作りにAIを活用すればよい、という行動は当たり前になっている。

・使えるならどんどん使えばよい。でも、1)それが盗作になっていないか、2)まとめた中身にユニークさはあるのか、3)オリジナリティは生まれるのか、ということが問われる。

・① AIはまとめるだけである。参考にするだけなので、盗作は気にしなくてよい。② AIのまとめに個性など求めていない。一般的な情報で十分である。③ 新説や新発見を期待しているわけではない。そもそもそんなことができるはずがない。と、考えそうだが、本当だろうか。

・AIでクリエーティブなことができるのか。所詮ものまねではないか。まねといっても、何重にも編集していると、新しいことが見えてくるかもしれない。誰がどう発信したのか、それをどう利用したのか。履歴をトレースするような、オリジネータプロファイルの管理も重要になっている。まさにAIガバナンスのあり方が問われる。

・SNSで偽情報が氾濫している。偽情報を拡散して、情報操作をしようというのが戦術になっている。国家戦術、企業戦術、犯罪戦術の常套手段になっている。それを防ぐ必要がある。騙されないようにする必要がある。守るためのルールを組織として作り、徹底していく必要がある。さもないと、これまでの社会の秩序が崩れてしまいそうである。

・AIは人間がやることは全て学んで行く。やばいこともしっかり学ぶはずである。個人、組織、国のどのレベルととっても、悪いことをする人間はいる。ディープフェイク(高度な偽情報、偽画像、偽動画など)に引っかからないようにするには、こちらもAIで武装する必要がある。

・EU議会は、3月に包括的なAI規制法を定めた。生成AIの文書作成、画像・動画生成が「ディープフェイク(とんでもない偽情報)」をもたらしているので、これを法的に規制し罰するようにした。偽情報、偽画像、偽動画が既に氾濫していることによる。5月にOECDは、AIに関する国際的な指針「AI指針」を改定した。

・人は騙されないようで、容易に騙されやすい。自分はそんなことにはならないと思っても、なるほどそうなんだと、妙に信じてしまうことも多い。ひっかける側は、悪意を持って仕掛けてくる。AIに対するサイバーセキュリティも、これから本格化してこよう。

・生成AIの世界市場は、2024年で既に10兆円規模に成長しているが、2030年には30兆円に拡大するという予測もある。半導体、サーバー、電力、生成AIを利用する既存産業、地方創生まで含めれば、その影響は一段と広がろう。ソフトバンクグループ<9984>の孫氏が予測し、実践してきた投資が先見の明を発揮しつつある。

・ヒトを情報処理システム、制御システム、意思決定システムをみなす時、コンピュータの情報処理能力とスピードはすさまじい。量子コンピューティングへの期待も高まっている。

・制御システムとしてのロボットは至る所で高度化している。サービスロボット、医療ロボット、宇宙開拓の人型ロボットなど、ますます広がろう。福島原発の廃炉処理AIロボットの開発も急がれる。

・意思決定システムとしてのAIは、ヒトを超えるのか。ヒトを超えても、善を弁(わきま)えてくれればよいが、目的のために手段を選ばず、‘目には歯を’という行動をリードするとすれば、それは人類にとって危うい。兵器用AIはその典型であろう。この開発も進みそうである。

・AI戦車、AIミサイル、AI原爆が高度化してこよう。民需と軍需は紙一重である。開発を指示するのは人であり、開発のアイディアも人に依存する。しかし、一定レベルを超えてくると、AIが独り歩きしそうで、止められないかもしれない。

・ビジネスでの生成AIは、独自のデータを入れ、貯めて、壁打ちに使う。SBグループでは、社員2万人に使えるようにして、ワンストップのサービスとしている。

・データの利用では、形の整ったデータだけでなく、文字や音声、画像などのまとまっていない非構造データも分析できるようになってきた。新しい文章やプログラム、新しいイラスト、絵、デザインなどが作り出されるようになった。

・プロンプト(ユーザーが入力する質問)を使って会話ができる。質問に回答が出てくる。これを次々に展開する。何かを抽出して、それを拡張していくことができる。ついには、さほど価値のないものから、新しい価値を創出することができるようになる。これは画期的である。

・ジェネレーティブ(Generative)とは、何かを作り出すという意味で、新しい文章や画像を次々に生み出してくる。これがうまくいくと、生成AIは、意味が理解できるといえるし、先が予測できるともいえる。

・AIを使って、定型的作業の効率化を図ることができる。簡易な要約文章を作ったり、定型的な分析レポートを作成したりすることで、労働時間を減らすことができる。こうした効率化だけでなく、新しい付加価値を生み出すこともできる。新製品や新サービスの企画やデザインに活用することで、創造的な作業も分担できるようになる。

・では、今のAIが特別かというと、そうでもない。ヒトの脳の働きを外部のシステムに置き換えて、その処理能力を大幅に高めている。使い方を制御できれば、大いに任せたい。われわれの活動領域も一段と広がろう。

・但し、悪巧みを考える人間がAIを悪用することは、しっかりと防ぐ必要がある。何が悪巧みかという点では、そこに価値観が入ってくるので、倫理観も問われる。AIにもジェネラティブに倫理を学んでもらう必要があろう。

・AIはおもしろい。しかし、無邪気に利用するだけでは済まない。哲学的な節度を事前に踏まえておく必要がある。まずは、趣味と仕事で使ってみる。そして、その利便性と限界を体験する。

・第2に、ビジネスとして稼ぐことを構想し、実践する。まねされないような工夫で、先行する必要がある。第3に、社会的インパクトを視野に入れて、社会的価値とのWin-Winを図る。こうなれば本物である。

・投資家としては、AI関連ということにだけで踊らされることなく、AIを活用して、価値創造ができる企業に大いに投資していきたい。

日本ベル投資研究所の過去レポートはこちらから

配信元: みんかぶ株式コラム
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