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トナミホールディングスのニュース
―EVトラックに比べ長距離輸送や重量物運搬に強み、トラック各社も開発に本腰―
ここ最近、水素トラックに関する話題が増えている。水素トラックとは、水素燃料電池(FC)で走るトラックのこと。自動車における 脱炭素化では、電気自動車(EV)の普及が世界的に進むが、EVトラックでは、充電時間や航続距離、積載量などに課題があり、開発に時間がかかっている。経済産業省が今年7月にまとめた「モビリティ分野における 水素の普及に向けた中間とりまとめ」でもFCは乗用車に加えて、「トラックやバスなどの商用車での需要が拡大していくことが期待されている」とあり、普及に向けて 水素ステーションの蓄圧器1本当たりの水素貯蔵量を増やすことや、大型トラックの全長規制の緩和などの緩和策も検討する方針だ。水素関連は株式市場でも人気の高いテーマの一つだが、なかでも水素トラックへの注目が必要だろう。
●各地で実証実験が相次ぐ
トヨタ自動車 <7203> [東証P]が中心となって設立したCommercial Japan Partnership Technologies(CJPT)は今年5月、東京都などと共同でZEV(ゼロエミッション車)トラックの本格的な社会実装を目指す実証事業をスタートさせた。東京都は、運輸部門の脱炭素化と水素需要創出を重点施策の一つに掲げており、導入助成や水素ステーションの整備を支援する方針で、小型水素トラックについても都内で約190台の実装を目指している。
また、ヤマトホールディングス <9064> [東証P]傘下のヤマト運輸は今年5月、アサヒグループホールディングス <2502> [東証P]傘下のアサヒグループジャパンやセイノーホールディングス <9076> [東証P]傘下の西濃運輸などと共同で日本初となる大型水素トラックの走行実証を開始した。トナミホールディングス <9070> [東証P]傘下のトナミ運輸なども今年6月に中型水素トラックによる実証走行試験を富山県内で開始しており、水素トラックの社会実装に向けた動きが活発化している。
水素トラックは、EVトラックに比べて軽量であるため、重量物の運搬に適している点や、航続距離が長く、長距離輸送に適している点、迅速な燃料補給を可能にする点などに強みを持つ。そのため、特に長距離路線では近い将来にEVトラックの普及を上回るとみられており、将来性への期待が高まっている。
●水素トラックの導入に積極的なコンビニ各社
特に水素トラックの導入に積極的なのが、コンビニエンスストア各社だ。積極的な出店を背景に成長を続けてきたコンビニ各社だが、消費者の支持を集める上で、環境に優しい事業モデルを推進する必要に迫られている。物流における脱炭素策の一環として、水素トラックの導入に前向きだ。2020年12月には、セブン‐イレブン・ジャパン(東京都千代田区)、ファミリーマート(東京都港区)、ローソン <2651> [東証P]のコンビニ大手とトヨタ、日野自動車 <7205> [東証P]の5社が共同し、小型水素トラックの導入を視野に検討を進めることで合意。その後各社で導入に向けた動きを強めている。
ローソンは今年5月、福島県と東京都の配送センターに小型水素トラックを導入すると発表した。東京都では既に小型水素トラックを導入していたが、福島県では初めてとなる。同社では22年から全国に約100カ所ある配送拠点の再編を進め、配送効率を高める取り組みを推進しているが、それと並行して小型水素トラックによる店舗への商品配送エリアを順次拡大する方針という。
また、ファミリーマートも今年5月、福島県や東京都など国内の4つのエリアで小型水素トラックの実証実験を開始し、25年度までに約30台まで増やす計画を発表した。セブン‐イレブンも東京都や栃木県で小型水素トラックの実証実験を行っている。
●国の補助などに期待
現在のところ、水素トラックの普及には価格が割高な点や水素を充填する施設が少ないことが課題として残る。これに対して政府は今年6月、「水素基本戦略」を改定し、40年までに水素導入量を年間約1200万トン(アンモニアを含む)に拡大する数値目標を掲げたほか、大規模かつ強靱なサプライチェーンの構築に向けて今後15年間で官民合わせて15兆円程度の投資を計画することを盛り込んだ。
今後、官民の協力でインフラが整い、導入に際しての国の補助などの後押しがあれば水素トラック普及が加速する可能性もある。今のうちから関連銘柄へ注目しておく必要があるだろう。
●自動車各社の水素トラックに向けた取り組み
関連銘柄はトヨタのほか、トラック大手のいすゞ自動車 <7202> [東証P]、日野自が中心となる。特にトヨタは、世界に先駆けてFC車の「MIRAI」を市場に投入したこともあり、FC車の展開に積極的だ。今年7月11日に行われた水素事業説明会では、欧州と中国で水素トラックの展開に注力し、30年にFCシステムを年10万台販売する方針を示している。
また、いすゞはトヨタと組んで小型水素トラックを開発しており、コンビニ各社の走行実証に用いられているほか、ホンダ <7267> [東証P]と組んで大型水素トラックを27年にも市場投入する予定。更に前述のCJPTにも資本参加している。
一方、日野自もトヨタと共同で大型水素トラックを開発し、前述のヤマト運輸の走行実証に使用されている。日野自とトヨタは、ドイツのダイムラートラック、三菱ふそうトラック・バス(川崎市中原区)と今年5月、共同でCASE技術の開発や商用車事業におけるカーボンニュートラルの実現などに関して協業すると発表。更に日野自と三菱ふそうは経営統合することで合意しており、水素トラックの開発加速が期待されている。
●自動車メーカー以外の取り組み
住友理工 <5191> [東証P]は、FC車の発電装置に水素をタンクから送り込むホースなどを手掛けており、「MIRAI」にもホースや防振ゴムなどを提供している。これらの技術はトラックなどの開発でも採用されるとしており、水素トラックへの提供も期待が持てる。
IHI <7013> [東証P]は、FC向け電動ターボチャージャー(ETC)を業界に先駆けて開発し、ダイムラー社の車両向けに量産している。21年には自動車パワートレインエンジニアリング会社であるオーストリアのAVLリスト社と燃料電池システム向けETCで技術協力協定を締結。更にAVL社が開発中の商用車向け燃料電池システムへの搭載も決定している。
豊田合成 <7282> [東証P]は、FC車向けに水素タンクの開発・生産を手掛けており、今年3月には乗用車用に比べて約8倍の水素を充填可能な商用車向けの大型高圧水素タンクを開発したと発表した。新製品はCJPTが量産化を目指している小型水素トラックに採用される予定としている。
このほか、TBK <7277> [東証P]は7月18日、既存のトラックやバスの補助ブレーキとして利用されてきた電磁式のリターダが、前述のCJPTが東京都などで行う社会実装で導入する小型水素トラックに採用されたと発表しており、関連銘柄としての注目度も高まっている。また、水素ステーションで注目される岩谷産業 <8088> [東証P]は今年2月、コスモエネルギーホールディングス <5021> [東証P]と共同で水素トラック向けの水素ステーションの運営に乗り出すと発表しており、あわせて注目したい。
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