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―旧村上ファンド系や海外系が参戦、建設やエネルギー業界に再編思惑も―
東京市場は新年以降、世界的なインフレ懸念にウクライナ危機もあり値の荒い乱調状態が続く。これは、米国など海外市場の調整を反映した動きであり、相場の牽引役である海外投資家も日本株に対して売り越し基調となっている。全体相場は、主な買い手が不在の状態だが、そんななか市場の活性化を果たす存在として期待されているのがアクティビストと呼ばれる「物言う株主」 だ。旧村上ファンド系などのアクティビストは、全体相場が調整局面となるなか割安株を中心に積極買いを入れており、その動向は高い関心を集めている。
●セブン&アイや東芝の株価上昇を「物言う株主」が演出
東京市場は年初から上値の重い展開が続き、足もとの日経平均株価は2万7000円近辺での一進一退の状態。この背景として、指摘されているのが大口の買い手の不在だ。東京市場の売買代金シェアの6割強を占める海外投資家は、昨年11月以降、5ヵ月連続で売り越しを記録。事業法人は自社株買いの活発化で買い越し基調だが、上値を追う投資主体ではない。この買い手不在が、東京市場の上値の重さを招いている。そんななか、市場の注目を集めているのが、乱調相場でも着実な買いを入れてくるアクティビストだ。
例えば、セブン&アイ・ホールディングス <3382> [東証P]は4月、百貨店子会社のそごう・西武に関して売却を検討していることを公式に認めたが、もともと同社に対してはアクティビストの米バリューアクト・キャピタルが事業の選択と集中を行う構造改革を求めていた。この構造改革に向けた動きが評価され、同社の株価は高値圏で堅調に推移している。また、筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントのほか多数のアクティビストが株主として結集している東芝 <6502> [東証P]は、非上場化も有力な選択肢のひとつに挙げられるなど経営改革に向けた動きが模索されており、株価は年初来高値圏にある。
●シティインデックスイレブンス による建設株買いに関心
いまや東京市場には、国内外の多数のアクティビストが参入しているが、そのなかでも市場の関心を集めるのが旧村上ファンド系、特に シティインデックスイレブンスの動向だ。4月5日に提出された大量保有報告書で、シティはコスモエネルギーホールディングス <5021> [東証P]の5%超の株式を保有する大株主となったことが判明。これを受け、同社株は急騰した。シティは富士石油 <5017> [東証P]の大株主にもなっていることから、「石油業界の再編につながる可能性」(市場関係者)が取り沙汰された。更に19日にシティが住友大阪セメント <5232> [東証P]の大株主に浮上したことが分かり、やはり株価は急伸した。
とりわけ三井住友建設 <1821> [東証P]、東亜建設工業 <1885> [東証P]などの大株主となりシティによる建設株に対する積極姿勢が注目されている。シティは西松建設 <1820> [東証P]の大株主にも浮上していた。同社は大幅な増配を実施し高配当利回り株となっているが、シティは西松建による自社株のTOBに応じることと同社の資本・業務提携先となった伊藤忠商事 <8001> [東証P]に株式を譲渡することで、保有株を売却しエグジットを果たした。また、同じくシティは大豊建設 <1822> [東証P]の4割超の株式を保有する大株主となっているが、同社が計画する自社株TOBに応じる予定。大豊建は第三者割当増資を実施しセメント製造などの麻生(福岡県飯塚市)が大豊建の筆頭株主になる予定だ。建設会社は財務体質が健全な一方でPBRは1倍割れの銘柄が少なくなく、アクティビストの攻勢が業界再編のきっかけとなる可能性が指摘されている。
●シルチェスターは飯田GHDや森永などに攻勢
海外系のアクティビストでは、英系のシルチェスター・インターナショナル・インベスターズの日本株に対する買い姿勢が目立つ。今年に入り、きんでん <1944> [東証P]や日本触媒 <4114> [東証P]、住友ゴム工業 <5110> [東証P]、飯田グループホールディングス <3291> [東証P]、科研製薬 <4521> [東証P]などの保有株の買い増しを行っており、新たにディー・エヌ・エー <2432> [東証P]や森永製菓 <2201> [東証P]、大成建設 <1801> [東証P]などの大株主となった。シルチェスターは住友大阪の大株主でもある。香港のアクティビスト、オアシス・マネジメントの動向も注目されている。2月末にマネックスグループ <8698> [東証P]の大株主に浮上したことが話題となったが、フジテック <6406> [東証P]や北越コーポレーション <3865> [東証P]、デジタルガレージ <4819> [東証P]などへ投資している。
●任天堂創業家の資産運用会社の動向が話題に
加えて、市場の関心を集めているのが任天堂 <7974> [東証P]創業家の資産運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス」(YFO、東京都港区)の動向だ。YFO傘下の投資会社が東洋建設 <1890> [東証P]の筆頭株主となり、インフロニア・ホールディングス <5076> [東証P]が進める1株770円のTOBに対して1000円での実施を提案した。これを受け、東洋建の株価は急騰している。YFOのミッションとして「任天堂中興の祖、山内溥の意志を受け継ぎ、日本がもう一度、挑戦に満ちた国へと生まれ変わるため」が挙げられている。協議(エンゲージメント)を重視し、敵対的なアクティビストとは一線を画すともみられているが、YFOは米国の経営陣との対話を重視した日本株ファンドのタイヨウ・パシフィック・パートナーズを買収したとも報じられ、今後の動向が注目されている。タイヨウが大株主となっている銘柄にはラクーンホールディングス <3031> [東証P]やマクセル <6810> [東証P]、KHネオケム <4189> [東証P]、NISSHA <7915> [東証P]、そーせいグループ <4565> [東証G]などがある。
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