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―業界高シェアで収益力の強さ光る、経済回復や円安も追い風で投資妙味―
全体相場は依然として波乱含みの状況だ。米金融引き締めとウクライナ情勢、中国景気減速の3つの懸念材料を巡ってボラタイルな展開となっており、投資家マインドは悪化の一途をたどっている。こうしたなかでの物色対象としては、景気変動への耐性がある買い安心感の高い銘柄となり、まず挙げられるのは大型株中心のディフェンシブ株になる。ただ、一般の個人投資家としてはやはり大型株よりも中小型株を選好したいところ。そこで今回、ディフェンシブの範疇からは外れるものの、業界高シェアを背景とした収益力というディフェンシブ性を持った好業績中小型株を取り上げてみたい。
●ボラ高い相場、決算シーズン一巡で銘柄選別好機
5月に入って、NYダウ平均が1000ドル幅の乱高下を演じたことが記憶に新しいが、米国を中心に世界の株式市場のボラティリティは高い状態が続いている。投資家の予想株価変動率を表す米VIX指数は、先行き警戒の節目である20を大きく上回って推移。同様の指標である東京市場の日経平均VI、欧州市場のVストックスも、それぞれ20を常態的に上回るようになってきた。
こうした相場環境下ではリスクを取って株式を買う動きが弱まることから、個別銘柄への選別色は強まり投資難易度は一気に上がる。ここ地合い悪のなか人気を集めるディフェンシブ株を見ても、通信や医薬品、食品は比較的堅調な値動きをみせる一方、日用品や小売りは冴えない展開となっているものも少なくない。更には、セクター内であっても明暗が大きく分かれていることが確認できる。もちろん、株価の動きは一つ一つの銘柄ごとにさまざまとなるわけだが、それでもテーマ株物色が盛り上がりをみせた昨年までと比べて今年は明らかに個別株勝負の流れが強まっている。
足もと決算シーズンが一巡したこともあり、タイミング的に個別株をじっくり選別するには良い時期に来ている。相場環境にかかわらず、マーケットには常に数多くの有望株が眠っているもので、そうした銘柄を探すのは投資の一つの楽しみでもある。全体相場とは別次元で堅調な値動きをみせる、好業績中小型の「業界最大手銘柄」を7つラインアップした。
●妙味株7銘柄
パイロットコーポレーション <7846> [東証P]は筆記具最大手。ポールペンが主力で、「フリクション」をはじめ「ジュース」「ドクターグリップ」といったブラントを持つ。10日に発表した1-3月期決算は、売上高が前年同期比15%増の262億2900万円、営業利益が同33%増の46億4700万円だった。世界経済の回復を追い風に、国内事業は海外子会社向けの出荷拡大や為替影響により絶好調、海外事業も欧米を中心に販売を伸ばした。通期では2期連続の増収増益を見込み、年間配当予想は前期比20円増の80円としている。
ティーケーピー <3479> [東証G]は貸し会議室運営の国内最大手で、海外でも世界120ヵ国以上で幅広く事業展開している。新型コロナウイルス感染拡大の影響で業績が低迷し、ここ数年は不採算施設の撤退や一部事業の縮小のほか、新型コロナワクチン接種会場向け需要の獲得といった取り組みを進めてきた。今23年2月期は3期ぶりに最終黒字に転換する見通しで、ようやく業績回復局面に入った。株価も底値離脱の動きをみせており、3月中頃の1200円前後から4月には一時2000円台目前まで買われる場面があった。いまはひと押し入れたタイミングで、ここからの値動きが注目される。
第一興商 <7458> [東証P]は業務用カラオケ 機器の販売・レンタル最大手。カラオケルーム「ビッグエコー」や飲食店の運営も手掛けている。カラオケ業界もコロナ禍の影響を大きく受けた業界の一つで、同社も業績悪化を余儀なくされたが、12日発表の決算では回復色を鮮明にした。前22年3月期は、売上高が微増、営業損益は赤字幅縮小と業績改善が進み、最終損益段階では雇用調整助成金や時短協力金が寄与し大幅黒字転換で着地。続く23年3月期は大幅増収で営業損益も黒字転換、最終利益も大幅増の見通しを示した。安定配当を継続しており、今期は前期比据え置きの113円としている。
スタジオアリス <2305> [東証P]は子供写真館最大手。単価向上施策や店舗統合など各種取り組みを進めたことで、コロナ禍にあっても業績は成長路線を維持している。23年2月期は売上高が前期比11%増の450億円、営業利益が同10%増の66億円の予想で、前期に続き増収増益。年間配当は前期から据え置きの70円を見込んでいる。株価は、全体下げ相場のなかでも堅調な値動きを見せている。1月11日の年初来安値2037円から緩やかながらも水準を切り上げ続け、4月5日には2352円の高値をつけた。足もと2200円近辺で推移している。
リオン <6823> [東証P]は補聴器で国内シェア首位。音響や医用、環境の各種計測器も手掛け、これらの分野でも高い市場シェアを誇る。主力の補聴器など医療機器の販売回復をはじめ、活発な設備投資が続く半導体業界向けの微粒子計測器が好調で、前22年3月期は売上高・営業利益ともに過去最高業績を達成した。今期も増収増益で最高記録を塗り替える見通しにあり、売上高は前期比5%増の238億円、営業利益は同11%増の34億5000万円の予想。株価は今期見通し発表を受けて急伸し、足もと長期波動の分水嶺である200日移動平均線を上回ってきた。
ペイロール <4489> [東証G]は給与計算クラウドサービスで国内トップクラス。昨年6月の上場以降、一貫して株価は下落を続けていたが、昨年12月に775円の上場来安値をつけ今年1月に795円で底値を確認すると徐々に水準を切り上げる展開となった。5月12日に発表した23年3月期業績予想は小幅ながらも業績成長を続ける見通しを示し、増配も見込んだ。25年3月期を最終年度とする中期経営計画もあわせて明らかにし、最終年度に営業利益ベースで今期予想比29~67%増達成を目指す目標を掲げた。発表翌日の同社株は利益確定売りに押され大幅下落を余儀なくされており、ここから業績再評価の動きとなるかを注視しておきたい。
KIMOTO <7908> [東証S]は特殊フィルムメーカーで、タッチパネル用ハードコートフィルムで首位。タッチパネル関連や車載関連、5G携帯端末向けのフィルム製品が好調で業績を急拡大させており、23年3月期は前期に続き営業2ケタ増益を達成する見通し。同社はフィルム事業以外で、土木・建築業界向けにデータサービスを提供する事業を行っており、これが要注目となる。この事業では今後、ドローンなどによるデータ取得ビジネスのほか、VRやAR、メタバースを用いたビジネス展開を図っていく構えだ。
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