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―400兆円を超える自動車産業のパラダイムシフトで押し寄せる大潮流に乗れ―
2050年までに二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」に向けた取り組みが世界的に加速している。400兆円超の巨大市場を有する自動車産業も例外ではない。運輸部門で排出される温室効果ガスの9割を自動車の排ガスが占めるといわれ、これがガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトを強力に後押しする背景となっている。
●2030年に1.5億台の市場規模に
国際エネルギー機関(IEA)の試算では30年にEVの世界普及台数は1億4500万台(年間)に飛躍的に増加する見通しが示されている。ちなみに昨年の世界のEV販売台数はプラグインハイブリッド車(PHV)を含めて660万台だった。これでも一昨年と比べればほぼ倍増している。今から約8年後のEV市場がいかに加速度的に拡大し、様変わりした状況となっているかがイメージできる。
米国では今月に入って、インフレ抑制を目的とした新たな歳出・歳入法が成立したが、これは大企業への課税強化によって財源を確保し、気候変動対策や医療福祉に資金を回すことが骨子となっている。そのなか、EVの普及促進に向け購入の際に税額控除などの支援策を盛り込んでおり、テスラ
●インフラ整備に本腰入れEV普及を後押し
一方、日本でも国策としてEVの普及を推し進めていく必要性に迫られている。岸田政権は脱炭素戦略として20兆円規模の資金を準備する方針が伝わっているが、クリーンエネルギーの活用はもちろん、EV普及促進に向けた国策的な支援も今後本格化しそうだ。グリーン成長戦略ではEVに使う蓄電池の拡充などが掲げられているが、充電設備などのインフラ整備もEV普及の重要なポイントとなっていく。急速充電器設置の補助金拡大などで、岸田政権では30年までに急速充電3万基を含む15万基の整備を目標に掲げ、EV導入を支援していく構えにある。
民間では昨年来EV充電器の設置サービスを行っているENECHANGE <4169> [東証G]が、 EV充電器の開発や調達を目的とした子会社を10月に設立することを直近発表した。同社は既に6月の時点でEV充電器設置サービスに最大300億円を投資する計画を発表し、27年までに3万基のEV充電器の設置を目指す方針を示している。
●国内自動車メーカーも本格攻勢の構え
こうした環境下で国内の自動車メーカー各社も攻勢の構えを鮮明としており、今年はEV発売ラッシュの様相をみせている。日産自が三菱自動車工業 <7211> [東証P]と共同開発した新型軽EV「日産サクラ」は6月16日から販売を開始。また同日に、三菱自は「eKクロスEV」として発売しているが、いずれも絶好調に受注を伸ばし、特にサクラは7月時点で2万台を超える受注を獲得している。
EV分野でも存在感を浮き彫りとしているトヨタ自動車 <7203> [東証P]もSUBARU <7270> [東証P]と新型EVを共同開発するなど展開が急だ。SUBARUは新型EV「ソルテラ」の受注を5月12日から開始、トヨタはこの姉妹車として「bZ4X」を同日発売している。トヨタは同社ならではの電動化技術を盛り込んだ「bZシリーズ」を含め、全15車種を25年までに市場投入する方針にある。今後も自動車業界の盟主としてその実力をいかんなく発揮することになろう。
●EV関連は新たな出世株候補も目白押しに
今年を境にEV新時代に向けた成長ステージが始まろうとしている。恩恵を受けるのはもちろん自動車メーカーだけではない。株式市場でも関連銘柄への注目度が再び高まることは必至であり、年後半に向け出世株も数多く輩出されそうだ。今回のトップ特集では、株高期待を内包するEV関連株を、本命(マーケットでEV関連の象徴として強く認知されている銘柄)、対抗(EV関連として注目度が増しつつある次期本命候補)、穴(まだ注目度は低いもののそれだけ株価の伸びしろが大きい銘柄)の3パターンに分け、それぞれで最強候補といえる5銘柄(計15銘柄)を選抜した。
【EV新時代の本命路線走る5銘柄】
◎日本電産 <6594> [東証P]
精密モーターで世界的に抜群の商品競争力を誇る。HDD用小型モーターではトップシェアだが、近年は産業用モーターなどに軸足を変えている。EV向けでは駆動モーターに傾注の構えで、30年には同商品分野で世界シェア4割を目標に置いている。来年4月に社名を「ニデック」に変更予定。10月の日経平均入れ替えでは新規採用の有力候補だ。株価は13週・26週移動平均線のゴールデンクロスが目前、早晩1万円台を地相場とする強調展開へ。
◎三井ハイテック <6966> [東証P]
半導体リードフレーム大手であるとともに、モーター構成部品で鉄心部分にあたるモーターコアでは自動車や家電向けで高いシェアを獲得。超精密金型分野でも高い技術力に定評がある。モーターコアはEV向けが主力で収益を牽引している。23年1月期は中国ロックダウンの影響が警戒されるものの、中期成長力の高さに変化なし。株価は業績先行き不安から調整を入れたものの、9000円近辺で売り物をこなし再浮上の機会をうかがう。
◎ダブル・スコープ <6619> [東証P]
リチウムイオン電池用分離膜(セパレーター)の専業メーカー。ここ最近のマーケットで存在感を高めている。韓国で集中生産を行っており、韓国大手電池メーカーを主要顧客とし旺盛な需要を捉えている。同社製品は独自技術による特殊構造で高強度を実現し量産能力にも優れる。22年12月期営業利益は前期比2.9倍の55億円を見込む。株価は5月中旬以降に急動意、直近高値まで2.5倍化した。日証金では売り長で需給相場の素地を内包。
◎田中化学研究所 <4080> [東証S]
2次電池正極材料の専業メーカーでリチウムイオン電池向けが売り上げの90%以上を占めている。粒子形状制御や結晶制御、コーティングなどのコア技術を駆使して高性能2次電池の正極材料を製造している。EV普及を背景に車載用リチウムイオン電池の市場の拡大が加速するなか、足もとの業績も高変化を示しており、22年4-6月期は営業利益段階で前年同期比3.4倍化した。株価も底値圏からマドを開け急浮上に転じている。
◎日本電解 <5759> [東証G]
電解銅箔製造の専業メーカーで、車載電池向けでは高い商品競争力を誇っている。日本だけでなく米国でも高シェアを誇っており、今後は更に米国での展開力を強化する方針。23年3月期は半導体不足の影響に伴う操業度低下とエネルギー価格高騰の影響で5億円の営業赤字見通しに下方修正し、株価も急落を余儀なくされた。しかし、独自の製品技術を駆使した高機能銅箔の開発力は中期的な成長力を裏付ける。株価は大底圏で逆張り妙味。
【EV新時代に存在感高める対抗5銘柄】
◎東光高岳 <6617> [東証P]
スマートメーターなど電力関連機器を主力展開するが、製品テリトリーは幅広く半導体光検査器を製造するほか、EV用急速充電器やEV用パワーコンディショナーなどを手掛けている。急速充電器はEV普及に際し重要な役割を担うだけに、今後マーケットの関心を集めそうだ。22年4-6月期は営業57%増益を達成し通期上方修正期待も。PER10倍前後と割安で、株価は25日移動平均線を支えに2000円を通過点とする上昇相場へ。
◎三櫻工業 <6584> [東証P]
独立系自動車部品メーカーで自動車用チューブでは国内約4割の商品シェアを有する。次世代コア事業としてバッテリー開発分野に注力、全固体電池などの研究開発に早くから取り組み同分野における知見で優位性を発揮、EV普及局面では活躍が期待される。また、同社の主力製品の一つであるブレーキ配管が、話題の軽EV「日産サクラ」に採用されるなど商品技術力は高く評価されている。ここ株価は動意含みだが押し目狙いで妙味十分。
◎関東電化工業 <4047> [東証P]
半導体や液晶向け特殊ガスのほか、リチウムイオン電池材料である六フッ化リン酸リチウムも製造している。EVの基幹部品を担うリチウムイオン電池需要は今後一段と市場拡大が想定され、同社の収益機会も広がりそうだ。22年4-6月期営業利益は前年同期比58%増の36億2500万円で通期計画の109億円は上振れが期待され、一転増益に転じる可能性もある。PERも割安で4ケタ大台ラインを通過点に一段の水準訂正余地あり。
◎日本セラミック <6929> [東証P]
赤外線センサーで圧倒的な商品シェアを誇るほか、超音波センサーでも高実績。電流センサーを手掛け、EV向けで需要開拓が進んでいる。業績は中国ロックダウンの影響で上期時点の進捗率は低調ながら、下期急速に巻き返す公算大。22年12月期の最終利益倍増見通しでPERも11倍前後と割安感がある。今月8日にマド開け急騰後も頑強な値動きで上値を慕う展開に。1月5日につけた年初来高値2844円更新は時間の問題か。
◎IMV <7760> [東証S]
大手自動車や電機メーカーを主要顧客に、振動試験装置や信頼性評価試験装置などの製造・販売及び受託試験を手掛ける。クラウドを活用した振動試験の遠隔管理サービスなども行っている。EV向け振動試験装置では米国向けなど海外での需要開拓が進んでいる。米国ではEVの購入を支援する新たな歳出法が成立していることで、同国で実績を重ねている同社にとっても収益機会が広がりやすい。500円未満の株価には値ごろ感がある。
【EV新時代に上昇気配の激アツ穴株5選】
◎サンコール <5985> [東証P]
自動車用精密ばね、リング、モーターコアなどを手掛け、トヨタなどを主要顧客としている点は強み。エンジン車部品メーカーからEV製品メーカーへの飛躍を経営戦略の主眼に置く。5月にはEV関連の新製品としてコネクター付きシャントバスバー(電流検出部品)をリリースした。PBR0.5倍台で5.5%前後の高配当利回りは魅力。23年3月期営業利益は前期比3倍強の20億円を見込み、株価の見直し余地は大きい。
◎スミダコーポレーション <6817> [東証P]
コイル専業メーカーで車載向けを得意とするが、EVなど電動車向けで強みを発揮する。自動車生産はサプライチェーン問題で生産減少もEV関連の売上高は堅調で収益を支えている。原料コストやエネルギー価格上昇が利益を抑えるものの、製品値上げで相殺し影響は限定的とみられる。EV関連需要の拡大に対応し、今秋にはベトナムで新たな生産工場が稼働予定にある。株価は目先押し目狙いで対処。2月初旬以来の4ケタ大台復帰が目前に。
◎JMC <5704> [東証G]
3Dプリンターを使った樹脂部品や砂型鋳造を使った金属部品の製造が主力。自動車業界が大口顧客だが、EV関連の鋳造部品の需要が旺盛で収益を押し上げている。国内自動車メーカーのEV開発が本格化していることで、駆動系部品の試作需要が増勢の一途にあり、業績に寄与している。22年12月期は営業利益段階で前期比2.7倍の2億7300万円と急拡大を見込むが、来期は過去最高益が視野。株価はもみ合い上放れの機が近そうだ。
◎ツバキ・ナカシマ <6464> [東証P]
ベアリング用の鉄製精密ボールを主力製品とし、自動車業界や工作機械業界向けで旺盛なニーズを取り込んでいる。またEV向けセラミックボールの需要が高水準で、同社の収益成長エンジンとなっている。EV市場の拡大をにらみ、生産能力増強にも前向きに取り組んでおり、22年12月期に工場の生産ライン強化を前倒ししてセラミックボールの売り上げ倍増を図る方針。株価は今月10日に大陽線を示現、その後も上値指向の強さが目立つ。
◎松尾電機 <6969> [東証S]
大手コンデンサー メーカーで、小型かつ長寿命を特長とするタンタルコンデンサーで実績が高い。自動車向け主力で主要取引先がトヨタグループの中核を担うデンソー <6902> [東証P]であることもポイント。売り上げの柱はタンタルコンデンサーだが、売り上げの20~30%を回路保護素子(電流ヒューズ)で占め、EVの基幹部品であるリチウムイオン電池向け高電流ヒューズに成長期待が膨らむ。年初の高値966円奪回は通過点に過ぎない公算も。
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