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*13:47JST 不二精機 Research Memo(7):自動車関連部品及び医療用精密金型に注力
■中長期の成長戦略
不二精機<6400>は成形品事業の拡大に軸足を置き、コア技術である精密金型技術を生かし、金型から精密成形品へ事業構造の変遷を実行してきた。競争力の源泉である射出成形用精密金型及び成形システム事業では高付加価値の医療・食品容器用金型へ集中している。精密成形品その他事業では、自動車用成形品拡大に経営資源を集中し、アジア地区での生産拡大により価値の拡大を図っている。
この成長戦略に基づき、工場の増設、新工場開設、生産効率改善を加速している。具体的にはタイ・インドネシアを中心に自動車関連成形品の受注増に対応した増産設備投資を実施、国内でも2023年10月に鈴鹿新工場が稼働し始めた。2025年にEV部品ユニットの本格生産を始める計画である。同分野において初年度は売上高にして1億円台に留まるとみられるが、2025年~2026年にかけて品目において7~8品目を投入予定で、2026年以降に本格拡大するとみられる。さらに、高知県宿毛市に開設した精密金型の新工場は仮操業を開始しており、ここではCADによる金型設計、将来的に金型部品の精密加工作業を行う予定である。
(1) 射出成形用精密金型及び成形システム事業
射出成形用精密金型及び成形システム事業では、医療分野に注力する方針である。医療用・食品用の成形品は安全性が重要で、素材として低溶出性などが要求されるほか、透明性、低臭気性、剛性、高圧蒸気滅菌等の耐熱性、耐衝撃性なども必要で、成形難度が高い。
現在、売上はダイアライザー向けが最も多く、次いで注射器用となっている。ダイアライザーは糖尿病の増加を背景に人工透析患者の生命維持には欠かせない中空糸を封入したろ過装置で、デバイスのハウジングは大半射出成形で作られる。人の生命に直結する製品だけに、金型の成形精度が悪いと血液が透析液の中に漏れ出す恐れや血栓を起こす原因になるなどの問題が生ずる。また成形品に窪みが生じヒケや歪み、使用時のヒビや白化の発生などにもつながる。このため同社のような高精度の金型技術を有する企業でないと対応できない金型と言える。日本の人工透析患者数は、厚生労働省「腎疾患対策の取組について」の資料によると、2021年末時点で349,700人の人工透析患者がおり、年々増え続け、過去最多を更新した。最新の調査である日本透析医学会統計調査(JSDT)では2022年末では患者数が347,474人と初めて減少しているものの、高水準に変化はない。ダイアライザーは使い捨てであり、1ラインで月産50万本ラインという規模のものも多く、汎用デバイスでもある。具体的には、ダイアライザーはパーツサイズが大きいためダイアライザーシェル(格納部)用金型は2個取り程度の金型となるが、直径30mm程度のダイアライザーシェルの中に中空糸が1万本近く格納されることから、血栓を発生させない血液経路が必要で0.1mm以下の偏心精度が要求され、収縮率の大きいPP(ポリエチレン)を均質に成形できるかが差別化となる。その他の医療用成形品は成形コストを如何に低減するかで射出成形サイクルの短縮化、成形精度を一定範囲で保つための仕組み、また金型更新可能な設計なども要求される。例えばカスケットではエラストマー特有の剥離の難しさがあるが、同社はランナーバランスや寸法精度のバラツキを低減することで従来64個取りを128個取りにすることに成功し、シャーレではスタック金型(1つの金型内にキャビティ・コアを2つ持つことで従来の倍(8個から32個取り)などを実現しており、ここでも同社の技術が生かされている。
今後の注目点は中国市場の拡大にある。これは中国で2012年から透析医療が保険適用され、従来の自費負担から回数や金額に制限があるものの保険でまかなえることとなり、透析治療に弾みがついたことが背景にある。市場として人口が大きく、長寿化も進展している。従来の公立病院主体の治療施設に加え、医療機器の国産化優遇策もあり、中国最大の医療機器メーカーや中国健康医療機器最大手企業など中国ローカルメーカーでも成長が加速している。こうした需要を受け、同社は日系企業向けに加え中国ローカル向けにも注力してきた。既に中国向けでは日系メーカー向けと同等の規模になりつつあり、特に中国ローカルは国内向けだけでなく、インドや東南アジア市場に向けてさらなる拡大を目指しており、子会社の常州不二精机有限公司の収益も拡大し、収益性も高まっている。また日系企業は中国以外での製造拠点構築も進めており、同分野は今後も海外中心に拡大が継続すると思われる。そのほかにも、既存の成形設備で取り数を増やせるホットランナー金型(射出成形時に可塑化された樹脂を製造部へ送る樹脂経路部分をヒーターで加熱し固化させずに生産効率を高める金型)を中心に需要拡大も目指す。
(2) 精密成形品その他事業
精密成形品その他事業では、自動車部品事業が鍵を握る。同社はタイ、インドネシア、中国(上海)で精密成形品の製造を行っている。現在、日系自動車メーカーの現地生産がコロナ禍の影響から立ち直りを見せている。なお一部で半導体不足による影響や中国勢のEV攻勢で伸び悩む動きもあり、トヨタ自動車などは2023年にタイでは62.1万台(前年比5.8%減)、ダイハツ工業(株)も50.48万台(同6.4%減)と生産台数減、日野自動車<7205>も不正問題などもありアジア全体で4.2万台(同10.5%減)という状況となっている。ただし、インドネシアなどはトヨタ自動車が27.8万台(同3.7%増)と過去最高の生産台数、本田技研工業もタイで14.7万台(同17.6%増)、インドネシア15.8万台(同20.6%増)等好調で、全体として拡大基調にある。同社は2輪では日立Astemoを通じて本田技研工業向けが多く、一部ヤマハ発動機<7272>向けにも対応している。4輪においては日系現地法人である日立Astemo、デンソー<6902>、ミクニ<7247>、東海理化電機製作所<6995>、ミツバ<7280>、アイシン<7259>、住友電装、大同メタル工業<7245>などを通じて、トヨタ自動車や本田技研工業向けを中心とした自動車メーカーに採用されている。今後、4輪生産の拡大が期待され、軽量化に伴う樹脂化への動きも加わり、樹脂成形品需要の拡大が見込める。具体的には日系Tier1企業中心に、金型から製作できる強みでユーザーの裾野を広げていく。
同社は2019年12月期にマツダ<7261>系の(株)ユーシンを主要取引先とする、精密プレス加工用の金型設計・製作と板金プレス部品、インサート成形品などの製造を行う秋元精機工業を子会社化した。これにより精密金属部品を金型内にインサートして樹脂成形する「インサート成形品」への対応が可能となり、今後のEV部品ユニットの拡大を目指すこととなった。実際、EV関連部品の本格拡大は2026年になるとみられるが、トヨタ自動車のEV化加速などの動きもあり、国内はEV関連部品の拡大、海外は日系メーカーの海外生産拡大が精密成形品その他事業の拡大の基軸となってこよう。
全体として2024年12月期までは先行投資による負担増が重しとなるものの、着実に増収を続けることで2025年12月期には緩やかな収益拡大が見込まれ、2026年12月期以降はEVユニット部品の本格拡大による自動車関連部品の収益性の向上、医療用精密金型のグローバル展開による売上拡大から収益の本格拡大が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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不二精機<6400>は成形品事業の拡大に軸足を置き、コア技術である精密金型技術を生かし、金型から精密成形品へ事業構造の変遷を実行してきた。競争力の源泉である射出成形用精密金型及び成形システム事業では高付加価値の医療・食品容器用金型へ集中している。精密成形品その他事業では、自動車用成形品拡大に経営資源を集中し、アジア地区での生産拡大により価値の拡大を図っている。
この成長戦略に基づき、工場の増設、新工場開設、生産効率改善を加速している。具体的にはタイ・インドネシアを中心に自動車関連成形品の受注増に対応した増産設備投資を実施、国内でも2023年10月に鈴鹿新工場が稼働し始めた。2025年にEV部品ユニットの本格生産を始める計画である。同分野において初年度は売上高にして1億円台に留まるとみられるが、2025年~2026年にかけて品目において7~8品目を投入予定で、2026年以降に本格拡大するとみられる。さらに、高知県宿毛市に開設した精密金型の新工場は仮操業を開始しており、ここではCADによる金型設計、将来的に金型部品の精密加工作業を行う予定である。
(1) 射出成形用精密金型及び成形システム事業
射出成形用精密金型及び成形システム事業では、医療分野に注力する方針である。医療用・食品用の成形品は安全性が重要で、素材として低溶出性などが要求されるほか、透明性、低臭気性、剛性、高圧蒸気滅菌等の耐熱性、耐衝撃性なども必要で、成形難度が高い。
現在、売上はダイアライザー向けが最も多く、次いで注射器用となっている。ダイアライザーは糖尿病の増加を背景に人工透析患者の生命維持には欠かせない中空糸を封入したろ過装置で、デバイスのハウジングは大半射出成形で作られる。人の生命に直結する製品だけに、金型の成形精度が悪いと血液が透析液の中に漏れ出す恐れや血栓を起こす原因になるなどの問題が生ずる。また成形品に窪みが生じヒケや歪み、使用時のヒビや白化の発生などにもつながる。このため同社のような高精度の金型技術を有する企業でないと対応できない金型と言える。日本の人工透析患者数は、厚生労働省「腎疾患対策の取組について」の資料によると、2021年末時点で349,700人の人工透析患者がおり、年々増え続け、過去最多を更新した。最新の調査である日本透析医学会統計調査(JSDT)では2022年末では患者数が347,474人と初めて減少しているものの、高水準に変化はない。ダイアライザーは使い捨てであり、1ラインで月産50万本ラインという規模のものも多く、汎用デバイスでもある。具体的には、ダイアライザーはパーツサイズが大きいためダイアライザーシェル(格納部)用金型は2個取り程度の金型となるが、直径30mm程度のダイアライザーシェルの中に中空糸が1万本近く格納されることから、血栓を発生させない血液経路が必要で0.1mm以下の偏心精度が要求され、収縮率の大きいPP(ポリエチレン)を均質に成形できるかが差別化となる。その他の医療用成形品は成形コストを如何に低減するかで射出成形サイクルの短縮化、成形精度を一定範囲で保つための仕組み、また金型更新可能な設計なども要求される。例えばカスケットではエラストマー特有の剥離の難しさがあるが、同社はランナーバランスや寸法精度のバラツキを低減することで従来64個取りを128個取りにすることに成功し、シャーレではスタック金型(1つの金型内にキャビティ・コアを2つ持つことで従来の倍(8個から32個取り)などを実現しており、ここでも同社の技術が生かされている。
今後の注目点は中国市場の拡大にある。これは中国で2012年から透析医療が保険適用され、従来の自費負担から回数や金額に制限があるものの保険でまかなえることとなり、透析治療に弾みがついたことが背景にある。市場として人口が大きく、長寿化も進展している。従来の公立病院主体の治療施設に加え、医療機器の国産化優遇策もあり、中国最大の医療機器メーカーや中国健康医療機器最大手企業など中国ローカルメーカーでも成長が加速している。こうした需要を受け、同社は日系企業向けに加え中国ローカル向けにも注力してきた。既に中国向けでは日系メーカー向けと同等の規模になりつつあり、特に中国ローカルは国内向けだけでなく、インドや東南アジア市場に向けてさらなる拡大を目指しており、子会社の常州不二精机有限公司の収益も拡大し、収益性も高まっている。また日系企業は中国以外での製造拠点構築も進めており、同分野は今後も海外中心に拡大が継続すると思われる。そのほかにも、既存の成形設備で取り数を増やせるホットランナー金型(射出成形時に可塑化された樹脂を製造部へ送る樹脂経路部分をヒーターで加熱し固化させずに生産効率を高める金型)を中心に需要拡大も目指す。
(2) 精密成形品その他事業
精密成形品その他事業では、自動車部品事業が鍵を握る。同社はタイ、インドネシア、中国(上海)で精密成形品の製造を行っている。現在、日系自動車メーカーの現地生産がコロナ禍の影響から立ち直りを見せている。なお一部で半導体不足による影響や中国勢のEV攻勢で伸び悩む動きもあり、トヨタ自動車などは2023年にタイでは62.1万台(前年比5.8%減)、ダイハツ工業(株)も50.48万台(同6.4%減)と生産台数減、日野自動車<7205>も不正問題などもありアジア全体で4.2万台(同10.5%減)という状況となっている。ただし、インドネシアなどはトヨタ自動車が27.8万台(同3.7%増)と過去最高の生産台数、本田技研工業もタイで14.7万台(同17.6%増)、インドネシア15.8万台(同20.6%増)等好調で、全体として拡大基調にある。同社は2輪では日立Astemoを通じて本田技研工業向けが多く、一部ヤマハ発動機<7272>向けにも対応している。4輪においては日系現地法人である日立Astemo、デンソー<6902>、ミクニ<7247>、東海理化電機製作所<6995>、ミツバ<7280>、アイシン<7259>、住友電装、大同メタル工業<7245>などを通じて、トヨタ自動車や本田技研工業向けを中心とした自動車メーカーに採用されている。今後、4輪生産の拡大が期待され、軽量化に伴う樹脂化への動きも加わり、樹脂成形品需要の拡大が見込める。具体的には日系Tier1企業中心に、金型から製作できる強みでユーザーの裾野を広げていく。
同社は2019年12月期にマツダ<7261>系の(株)ユーシンを主要取引先とする、精密プレス加工用の金型設計・製作と板金プレス部品、インサート成形品などの製造を行う秋元精機工業を子会社化した。これにより精密金属部品を金型内にインサートして樹脂成形する「インサート成形品」への対応が可能となり、今後のEV部品ユニットの拡大を目指すこととなった。実際、EV関連部品の本格拡大は2026年になるとみられるが、トヨタ自動車のEV化加速などの動きもあり、国内はEV関連部品の拡大、海外は日系メーカーの海外生産拡大が精密成形品その他事業の拡大の基軸となってこよう。
全体として2024年12月期までは先行投資による負担増が重しとなるものの、着実に増収を続けることで2025年12月期には緩やかな収益拡大が見込まれ、2026年12月期以降はEVユニット部品の本格拡大による自動車関連部品の収益性の向上、医療用精密金型のグローバル展開による売上拡大から収益の本格拡大が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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