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日経平均は小幅反発。45.23円高の28920.12円(出来高概算4億1000万株)で前場の取引を終えている。
23日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに反落し、71ドル安となった。前日のパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言を受けて当面、大規模な金融緩和が維持されるとの期待から上昇する場面もあったが、景気敏感株に売りが出て下落へ転じた。一方、長期金利の伸び悩みからハイテク株が買われ、ナスダック総合指数は+0.1%と3日続伸、連日で過去最高値を更新した。本日の日経平均はNYダウの下落を受けて63円安からスタートすると、朝方には一時28758.37円(116.52円安)まで下落。その後、ソフトバンクG<9984>やエーザイ<4523>といった主力株に買いが入ってプラス圏に切り返し、前場中ごろを過ぎると28935.34円(60.45.円高)まで上昇する場面があった。
個別では、前述のソフトバンクGとエーザイが3~4%の上昇。エーザイは米バイオジェンと共同開発中のアルツハイマー病治療薬について、米当局から画期的な新薬候補に指定されたと発表している。トヨタ自<7203>、任天堂<7974>、ファーストリテ<9983>などは小じっかり。アイダ<6118>や日新薬<4516>は一部証券会社の強気の投資判断を手掛かりに買われているようだ。また、オリバー<7959>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、キーエンス<6861>が2%超下落し、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>は小安い。中長期経営計画を発表したヤクルト<2267>は材料出尽くし感から売りがかさんでいるようだ。また、このところ賑わっていたタムラ製<6768>が利益確定売りに押され、Jリース<7187>などとともに東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは、鉱業、非鉄金属、鉄鋼などが上昇率上位。一方、その他金融業、不動産業、空運業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の50%、対して値下がり銘柄は43%となっている。
本日の日経平均は朝安後に切り返し、まずまず底堅い展開となっている。日足チャートでは28700円台に位置する5日移動平均線が下値をサポートする格好で、28800円台に位置する25日移動平均線を上回って前場を折り返した。半導体・電子部品関連のハイテク株の一角がやや軟調だが、主力株全体に押し目買い意欲の根強さを感じる。米市場と異なり、業種別では景気敏感色の強い市況関連株が堅調だ。かねて当欄で指摘しているように、株式サイドではまだまだ経済の先行き等に強気な見方が多いことから、下値では押し目買いが入りやすいのだろう。もっとも、ここまでの東証1部売買代金は1兆円に届かず、新規の手掛かり材料に乏しいことで取引はやや低調となっている印象だ。
さて、足元落ち着いてきたが、株式相場は週初から波乱の展開となった。21日に前週末比で一時1100円を超える大幅下落を強いられると、翌22日には大きく値を戻した。こうした動きを「ボトム確認」と前向きに受け止める解説が多く見受けられるが、もう少し視野を広く見てみよう。2月以降の日経平均の日足チャートを見ると、2月16日に付けた年初来高値30714.52円(取引時間中)をピークに、高値もち合いながら“緩やかな上値切り下げ”の形状となっていることがわかる。既に週初急落からの戻りが一服しつつあることを考慮すると、今回の一連の値動きも「ボトム確認」というより「上値切り下げトレンド確認」となった可能性がある。
「上値切り下げトレンド」入りを指摘する向きは、テクニカルアナリスト等を除くとまだあまり多くない。日々の市況解説からはその理由がなかなか見えてきづらいのだろうが、極めて単純な理由に基づくものと考えられる。
まずは米金融政策。FRB要人発言がタカ派かハト派かで日々一喜一憂しているが、中期的な市場トレンドを把握するうえでの本質はそこではない。先週の連邦公開市場委員会(FOMC)通過後、17日の当欄を改めてご参照頂きたい。FRBは「インフレ上昇は一時的」と再三強調しつつも、FOMCでは利上げ前倒しが示唆されるなどインフレ対応に傾く印象を与えた。一部トレーダーは「FRBが『平均インフレ目標(長期的に平均2%
のインフレ目標達成を目指し、一時的に2%を超えることを容認する政策)』を事実上放棄した」と受け止め、ベア(弱気)目線という。“インフレと景気が加速し続けることをFRBが容認する”というシナリオが描きづらくなったということだ。
そして米経済状況。バイデン政権初期の大規模な経済対策を受け、経済協力開発機構(OECD)は3月の世界経済見通しで2021年の米成長率を3.2%から6.5%に大幅上方修正した。しかし、5月末の改定では6.5%から6.9%への小幅な修正にとどまった。財政政策の効果は息切れしつつある。では再び大規模な経済対策が実施されるかと言えば、財政状況や政治的な合意のハードルの高さを考慮すれば期待しにくい。そもそもコロナ禍からの回復が鋭角的なものから徐々に緩やかとなっていくのは当然だ。
これらを考慮すると、“衆目一致で”(この点がポイントだろう)鋭角的な経済回復と緩和的な金融政策への期待に基づく“高圧的な経済を前提としたトレード”に走ることはもはやないということがわかる。すると、景気敏感色の強い日本株のエクスポージャー(投資残高)が最も高まったのは春先だったと考えざるを得ない。
もちろん、短期的にはFRB要人発言や経済指標の強弱で株式相場は振らされるだろう。これを投資機会ととらえるかは投資家各位の投資目的やスタイルの問題であることを強調しておきたい。最後に余談となるが、日経平均の短期変動を的確に捉えられれば、連動型商品の売買だけで日経平均の期間騰落を大幅に上回る絶対パフォーマンスが得られるはずだが、残念ながら筆者はそうした投資家にお目にかかったことがない。
(小林大純)
<AK>
23日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに反落し、71ドル安となった。前日のパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言を受けて当面、大規模な金融緩和が維持されるとの期待から上昇する場面もあったが、景気敏感株に売りが出て下落へ転じた。一方、長期金利の伸び悩みからハイテク株が買われ、ナスダック総合指数は+0.1%と3日続伸、連日で過去最高値を更新した。本日の日経平均はNYダウの下落を受けて63円安からスタートすると、朝方には一時28758.37円(116.52円安)まで下落。その後、ソフトバンクG<9984>やエーザイ<4523>といった主力株に買いが入ってプラス圏に切り返し、前場中ごろを過ぎると28935.34円(60.45.円高)まで上昇する場面があった。
個別では、前述のソフトバンクGとエーザイが3~4%の上昇。エーザイは米バイオジェンと共同開発中のアルツハイマー病治療薬について、米当局から画期的な新薬候補に指定されたと発表している。トヨタ自<7203>、任天堂<7974>、ファーストリテ<9983>などは小じっかり。アイダ<6118>や日新薬<4516>は一部証券会社の強気の投資判断を手掛かりに買われているようだ。また、オリバー<7959>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、キーエンス<6861>が2%超下落し、レーザーテック<6920>や東エレク<8035>は小安い。中長期経営計画を発表したヤクルト<2267>は材料出尽くし感から売りがかさんでいるようだ。また、このところ賑わっていたタムラ製<6768>が利益確定売りに押され、Jリース<7187>などとともに東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは、鉱業、非鉄金属、鉄鋼などが上昇率上位。一方、その他金融業、不動産業、空運業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の50%、対して値下がり銘柄は43%となっている。
本日の日経平均は朝安後に切り返し、まずまず底堅い展開となっている。日足チャートでは28700円台に位置する5日移動平均線が下値をサポートする格好で、28800円台に位置する25日移動平均線を上回って前場を折り返した。半導体・電子部品関連のハイテク株の一角がやや軟調だが、主力株全体に押し目買い意欲の根強さを感じる。米市場と異なり、業種別では景気敏感色の強い市況関連株が堅調だ。かねて当欄で指摘しているように、株式サイドではまだまだ経済の先行き等に強気な見方が多いことから、下値では押し目買いが入りやすいのだろう。もっとも、ここまでの東証1部売買代金は1兆円に届かず、新規の手掛かり材料に乏しいことで取引はやや低調となっている印象だ。
さて、足元落ち着いてきたが、株式相場は週初から波乱の展開となった。21日に前週末比で一時1100円を超える大幅下落を強いられると、翌22日には大きく値を戻した。こうした動きを「ボトム確認」と前向きに受け止める解説が多く見受けられるが、もう少し視野を広く見てみよう。2月以降の日経平均の日足チャートを見ると、2月16日に付けた年初来高値30714.52円(取引時間中)をピークに、高値もち合いながら“緩やかな上値切り下げ”の形状となっていることがわかる。既に週初急落からの戻りが一服しつつあることを考慮すると、今回の一連の値動きも「ボトム確認」というより「上値切り下げトレンド確認」となった可能性がある。
「上値切り下げトレンド」入りを指摘する向きは、テクニカルアナリスト等を除くとまだあまり多くない。日々の市況解説からはその理由がなかなか見えてきづらいのだろうが、極めて単純な理由に基づくものと考えられる。
まずは米金融政策。FRB要人発言がタカ派かハト派かで日々一喜一憂しているが、中期的な市場トレンドを把握するうえでの本質はそこではない。先週の連邦公開市場委員会(FOMC)通過後、17日の当欄を改めてご参照頂きたい。FRBは「インフレ上昇は一時的」と再三強調しつつも、FOMCでは利上げ前倒しが示唆されるなどインフレ対応に傾く印象を与えた。一部トレーダーは「FRBが『平均インフレ目標(長期的に平均2%
のインフレ目標達成を目指し、一時的に2%を超えることを容認する政策)』を事実上放棄した」と受け止め、ベア(弱気)目線という。“インフレと景気が加速し続けることをFRBが容認する”というシナリオが描きづらくなったということだ。
そして米経済状況。バイデン政権初期の大規模な経済対策を受け、経済協力開発機構(OECD)は3月の世界経済見通しで2021年の米成長率を3.2%から6.5%に大幅上方修正した。しかし、5月末の改定では6.5%から6.9%への小幅な修正にとどまった。財政政策の効果は息切れしつつある。では再び大規模な経済対策が実施されるかと言えば、財政状況や政治的な合意のハードルの高さを考慮すれば期待しにくい。そもそもコロナ禍からの回復が鋭角的なものから徐々に緩やかとなっていくのは当然だ。
これらを考慮すると、“衆目一致で”(この点がポイントだろう)鋭角的な経済回復と緩和的な金融政策への期待に基づく“高圧的な経済を前提としたトレード”に走ることはもはやないということがわかる。すると、景気敏感色の強い日本株のエクスポージャー(投資残高)が最も高まったのは春先だったと考えざるを得ない。
もちろん、短期的にはFRB要人発言や経済指標の強弱で株式相場は振らされるだろう。これを投資機会ととらえるかは投資家各位の投資目的やスタイルの問題であることを強調しておきたい。最後に余談となるが、日経平均の短期変動を的確に捉えられれば、連動型商品の売買だけで日経平均の期間騰落を大幅に上回る絶対パフォーマンスが得られるはずだが、残念ながら筆者はそうした投資家にお目にかかったことがない。
(小林大純)
<AK>
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