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遠藤照明のニュース
―海運株の急騰で見えてきた次のステージ、株価3ケタ台のバリュー株に針路をとれ―
株式市場において、8月相場を表現する2つのワードがある。一つは“サマーラリー”、そしてもう一つは“夏枯れ”だ。その8月相場も週末27日が実質月内最終商いとなった。この1ヵ月を振り返ってみれば、月初からボラティリティの高い相場が続き、上下に激しく日経平均は揺れた。個人投資家にすれば信用評価損益率の低下が激しかった8月中旬の急激な下げが印象に残っているかもしれないが、これも前週末8月20日が陰の極となり、今週は週初からガラリとムードが変わった。
27日は残念ながらマイナス圏での着地となったが、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大、中国規制リスク、米国テーパリング観測、国内政局不安、そしてアフガン問題といった懸念材料山積のなかで、日経平均が週間ベースで大幅にプラス圏を維持できたのは評価できる。この1ヵ月にわたる攻防戦はサマーラリーといえるような高揚感はなかったが、決して夏枯れというイメージでもなかった。
●海運株人気が生む究極のバリュー株大相場
菅政権は「Go Toキャンペーン」と「緊急事態宣言」というアクセルとブレーキを交互に踏み込んで迷走を極め、結局、経済活動の正常化を遅らせてしまった。21年4-6月期の日本の実質GDP成長率は前期比0.3%増。米国の1.6%増、ユーロ圏の2.1%増と比較しても一目瞭然、先進国の中で大きく見劣りしている。これが日本株の弱さに反映されているという指摘も多い。しかしそれはあくまでマクロの視点である。株式市場はミクロの集大成、つまり個別企業のファンダメンタルズを個々に評価した株価はそれぞれが強いという現実がある。
その代表的な現象が海運株 の急騰だ。コンテナ船市況の高騰とばら積み船市況の回復で収益が大変貌した。収益成長の持続性に疑問符が付くとはいっても、ファンダメンタルズの変化を株価は無視できない。日本郵船 <9101> の株価は直近1年間で約5倍化した。商船三井 <9104> 、川崎汽船 <9107> も郵船のパフォーマンスには若干劣るものの、同様に株価の居どころを大きく変えている。そして何よりも、郵船の時価予想PERは2倍台である。最終利益がゲタをはいていることを考慮しても実質5倍前後のPERで、配当利回りは8%を超えている。「株価は急騰しているが超割安であることに変わりはない」という、究極のバリュー株大相場が眼前で繰り広げられている。
この海運効果というべきか、個別株は業績内容の良い割安な銘柄が素直に買われる地合いとなっている。実質GDPの低迷は前述の通りだが、一方で上場企業の21年4-6月期決算は大方の予想を上回る好調な結果となった。企業の最終利益合計では前年同期比の3倍弱に達し、その水準は同期間で過去最高を記録したことが報じられている。グローバル経済の回復を追い風に海運や鉄鋼はもちろん、自動車の伸びが全体を牽引している。また、業種を問わず海外展開で利益を獲得している企業は、個別に好業績を達成しているところも少なくない。
●私募ファンドの立ち上げ活発化で新潮流も
PERやPBR、配当利回りといった伝統的な株価指標が割安圏にある銘柄に投資マネーが勢いよく流れ込んでいる。この背景には“海運株効果”ともう一つ、需給環境の変化も指摘されている。それは、商品やサービスなど収益成長要素を内包しながら、万年割安水準に放置されている銘柄を発掘する流れだ。
市場関係者によると「証券・金融業界の人材流動化の影響もあるかと思われるが、個人がアクティビストとして私募ファンドを立ち上げる動きが相次いでいる」(国内ネット証券アナリスト)という。彼らが投資対象として狙うのは、金利上昇局面でリスクがある高値圏のハイテク系グロース株ではなく、指標面で超割安圏に放置されている好業績銘柄群だ。「株主に対して無頓着な企業にプレッシャーをかけて、元来内包している企業価値を前面に押し出し、株価のリノベーションを図るというコンセプトを主眼に置いているケースが多い」(同)とするが、こうした動きは今後の新たなバリュー株買いの潮流をつくり出す可能性がある。
バリュー株買いの流れは株価3ケタ台の銘柄でとりわけ値幅妙味が発現されやすい。今回のトップ特集では、PERが10倍以下でPBRも1倍台を大きく下回る銘柄群の中から、“業績好調かつ株価に瞬発力がある中低位型株”というフィルターにかけて5銘柄を厳選した。
●水準訂正妙味が際立つ中低位5銘柄はこれだ
◎中山製鋼所 <5408>
鋼板や棒鋼、コイル製品など鉄鋼 メーカーの老舗であり、鋳機事業や海洋事業などのエンジニアリングも手掛ける。日本製鉄系で熱延技術に強みを持っているが、特に同社の独自技術で製造するNFG(微細粒熱延鋼板)は注目で、スーパーメタルとして市場開拓が期待されている。業績は22年3月期に急速な改善が見込まれている。トップラインの伸びに加え、鋼材価格の値上げ効果で利益が押し上げられ、22年3月期営業利益は前期比倍増となる48億円を予想。またPER8倍台は割安感が強く、配当も今期8円(前期は6円)を計画する。特筆されるのは前期実績ベースで1550円強に達している1株純資産だ。PBRに換算して0.2倍台と評価不足が際立っている。過去に大相場を演じていることでも有名。なんと最高値は1990年2月につけた2万2400円(修正後株価)。2000年代に入ってからも、05年と06年に6000円台(同)まで買われた経緯がある。
◎藤倉コンポジット <5121>
ゴム加工品や産業用資材の大手メーカーで、ゴルフ用カーボンシャフトなども製造し自社ブランド製品が好評を博している。工業用品部門は自動車部品が回復し制御機器部門は半導体関連などの需要を取り込み収益に反映させている。また、同社が手掛ける非常用マグネシウム空気電池「WattSatt」はマグネシウムを電極に使用した大容量電池であり、1台の電池でスマートフォン30台分をフル充電することが可能で注目度が高い。業績面でも22年3月期予想を期初見通しから大幅に上方修正、営業利益段階で11億円から30億円(前期比2.6倍)に増額している。PERはわずか6倍台に過ぎず、年間配当18円予想ながらPBRが0.6倍前後に放置され、水準訂正妙味が強く意識される。株価は足もと新値圏突入も、14年1月に1750円の上場来高値を形成しており、その時の利益水準は今期見通しの半分以下であった。そのギャップが一段の上値期待につながっている。
◎国際紙パルプ商事 <9274>
紙 の専門商社大手として国内だけでなく海外展開にも注力している。コロナ禍にあって販売数量は減少しているものの、塗工紙や板紙が堅調で販売価格引き上げなどが利益向上をもたらしている。中国では新たにストックビジネスを6拠点で展開するなど、事業再構築効果も発現し販売数量が急回復、書籍向け特需などを取り込んでいる。欧州では昨年7月にM&Aで傘下に収めた仏子会社の業績がフル寄与する形となっていることも大きい。財務体質は強固で21年3月期は営業損益が90億3500万円の赤字だったが10円配当を継続しており、22年3月期は買収効果もあって業績が一変する。営業損益は49億円の黒字予想から59億円の黒字に増額修正しており、年間配当も12円に引き上げマーケットにポジティブサプライズを与えた。23年3月期も増収増益が継続する公算は大きく、PER6倍、PBR0.5倍台の時価は、高配当利回りも考慮して見直しが必至といえる。
◎遠藤照明 <6932>
創業50年以上にわたる実績を土台として商業施設向け照明で国内トップクラスの競争力を持つ。LED照明に経営の重心を置き、商業施設にとどまらず工場やオフィス、学校など幅広い分野で需要開拓を進めている。また、海外展開にも積極的で売り上げの3分の1を国外で稼ぎ、足もとでは英国での販売が好調で業績に反映させている。近年はリノベーション市場において調光調色にこだわりを持った空間の高付加価値化が世界的に重視される風潮にある。同社はまさにその流れに乗る。22年3月期営業利益は前期比47%増の28億円と高成長を見込むが、21年4-6月期時点で10億700万円(前年同期比3.3倍)と好調を極め、対通期進捗率を考慮して上方修正が期待される状況だ。株価は900円から上は滞留出来高が希薄化し株式需給も好転、上値追いが早まる可能性がある。PER7倍近辺、PBR0.5倍台は株価変貌余地を示唆する。早晩、4ケタ大台での活躍が濃厚。
◎日鍛バルブ <6493> [東証2]
独立系の自動車用エンジン バルブメーカーで、世界的な自動車販売需要拡大を追い風に業績は急回復トレンドにある。22年3月期営業利益は31億5000万円予想と前期から大きく立ち直っただけでなく、17年3月期以来5年ぶりの利益水準に達する見通し。エンジンバルブの中に空洞を作り、金属ナトリウムを封入した中空エンジンバルブを戦略的に展開しており、傘部分まで中空化した傘中空エンジンバルブは高い利益率で同社の収益に大きく貢献している。このほか、EV領域の商品開発に早い段階から着手している点もポイントだ。足もとでは半導体不足や新型コロナ感染拡大の影響による自動車減産の動きなどが警戒され株価調整を余儀なくされたが、自動車の販売需要そのものに陰りはなく見直しムードが漂う。PER6倍、PBR0.4倍という割安さに加え、株主還元に前向きで今期は前期比4円増配となる11円を計画。配当利回りは3.4%前後に達している。
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