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―最高益街道を走るバリュー株に注目、投資妙味高まる好業績銘柄をロックオン!―
世界的なインフレや中国経済の低迷など経営環境に逆風が吹きつけるなかでも、最高益を更新する企業が相次いでいる。先月までに4-6月期決算の発表を終えた3月決算期企業の2割超が同期間として過去最高益を更新した。燃料費の期ずれ差益の発生で利益が膨らんだ電力会社、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進など旺盛なIT投資ニーズを捉えた情報・通信業など、非製造業にピーク益を塗り替えたものが目立つ。一方、製造業では自動車業界のほか、原材料費高騰分の価格転嫁を進めた食品メーカーに最高益を達成した企業が多くみられた。
今回は直近3ヵ月決算で過去最高利益を叩き出した企業にスポットを当て、今後も力強い利益成長を続けることが期待される銘柄のなかから株価の上値余地が見込める中小型株を探った。
●自動車関連などに本格回復の兆し
「株探」集計では、23年4-6月期(第1四半期)決算を発表した東証上場2266社のうち、経常利益(米国会計基準と国際会計基準は税引き前利益)段階で4-6月期としての過去最高益を達成したのは500社に上った。前年同期と比べた利益額が最も大きかったのはトヨタ自動車 <7203> [東証P]で、4-6月期の税引き前利益は1兆7205億5300万円と2年ぶりに過去最高益を更新した。半導体供給不足の改善によって自動車の販売台数が増加したことに加え、海外を中心とした値上げや円安効果も収益を押し上げた。ホンダ <7267> [東証P]、SUBARU <7270> [東証P]、マツダ <7261> [東証P]も最高益を更新しており、自動車メーカーの業績回復が顕著となっている。
また、電力・ガスセクターも料金引き上げや燃料調達価格の期ずれ影響などで利益が急改善するものが多く、関西電力 <9503> [東証P]を筆頭にプライム上場21社中12社が最高益を達成した。このほか、リオープン(経済再開)やインバウンド再開が追い風になったANAホールディングス <9202> [東証P]やオリエンタルランド <4661> [東証P]、製造業では「ゼルダの伝説」シリーズ最新作が大ヒットした任天堂 <7974> [東証P]、価格改定や為替のプラス影響で好調を維持したコマツ <6301> [東証P]などが利益を大きく伸ばしている。
今回は世界的なインフレ傾向に伴う長期金利の上昇などを背景にバリュー株への関心が続くなか、4-6月期に経常利益または税引き前利益が同期間として過去最高を更新し、かつ株価指標が割安圏にある銘柄に照準を合わせた。以下では、最高益企業のうち予想PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)の水準が低く、上値が期待できそうな7銘柄を紹介していく。
●リックスは業績上振れ含みで成長分野のEV関連にも注目
産業用機械商社のリックス <7525> [東証P]はメーカー機能を併せ持ち、得意とする流体制御技術を駆使したロータリージョイント(回転継ぎ手)や自動車部品・半導体部品の洗浄装置などを展開する。足もとでは電気自動車(EV)分野に注力するなか、電池・モーター関連ビジネスが急成長をみせている。前期には電池製造向け脱泡機や配管洗浄機を相次ぎ投入するなど、更なる成長期待は強い。4-6月期は鉄鋼業界向け機械部品やEV関連の自社製品、バルブ・タイヤ関連機器などが大きく伸び、2ケタ増収増益を遂げた。24年3月期は経常減益、減配を見込むものの、同社は期中に上方修正を繰り返すことが多く、上振れの可能性は十分にありそうだ。予想PER10倍台、配当利回り3.9%近辺と見直し余地は大きい。
●ムトー精工は17年ぶり最高益で株主還元にも妙味
ムトー精工 <7927> [東証S]はデジタル家電や自動車内装品に使われるプラスチック成形品メーカー。コロナ禍の影響で減少していた受注が回復基調にあり、直近4-6月期は経常利益4億9600万円(前年同期比40.6%増)と17年ぶりに同期間における最高益更新を果たした。自動車関連やデジタルカメラ部品などの引き合いが強かったことに加え、固定費をはじめとした経費削減を進めたことも利益拡大につながった。通期予想は18億円(前期比15.9%減)を据え置いたが、進捗率や1ドル=130円の想定為替レートから見て業績上振れが期待できそうだ。配当利回りが4.7%と高水準にある一方、予想PER8倍台、PBR0.7倍近辺と株価指標面からの割安感が際立つ。
●東プレは通期進捗率9割で再上方修正の公算大
独立系自動車用プレス部品メーカーの東プレ <5975> [東証P]は、4-6月期の経常利益が124億7500万円(前年同期比30.7%増)と全四半期を通しての過去最高を記録した。半導体不足の緩和を背景に国内や北米でプレス関連の物量が大幅に増加したほか、円安進行に伴う為替差益を計上したことも利益を大きく押し上げた。あわせて、通期の経常利益見通しを140億円(従来は110億円)に上方修正したが、第1四半期実績の修正した通期計画に対する進捗率は9割近くに達しており、一段の上振れが濃厚とみられる。PBRは0.4倍台と会社解散価値の半値以下で株価の水準訂正余地は大きそうだ。
●芦森工は豊田合との提携強化で商機拡大へ
芦森工業 <3526> [東証P]は自動車用シートベルトやエアバッグを主力とするほか、消防用ホースやガス・水道管の補修システムなども手掛ける。4-6月期は自動車安全部品事業が円安効果や価格転嫁で大きく改善し、経常利益は8億3300万円と前年同期比2.5倍に膨らんだ。通期計画(22億円)に対する進捗率は37.9%と高水準で業績上振れが期待される。7月には豊田合成 <7282> [東証P]との提携関係を強化すると発表。EVや自動運転技術に対応するエアバッグとシートベルトのセット開発などを進める構えで新たな商機の獲得に期待が高まる。株価指標は予想PER8倍台、PBR0.7倍近辺と割安感が強く、3.5%前後の配当利回りも妙味がある。
●トーモクは超割安で資本政策の向上に期待
トーモク <3946> [東証P]は段ボール専業のトップメーカー。北欧風デザインや品質の高さで人気を誇るスウェーデンハウスを提供する住宅事業、飲料輸送でトップクラスの実績を有する運輸倉庫事業も展開する。4-6月期は段ボール事業で前期に実施した価格改定によって経常利益10億7600万円(前年同期比2.3倍)と急拡大して着地。24年3月期は値上げ効果や新型コロナウイルスの規制緩和による需要増加を背景に、経常利益116億円(前期比45.3%増)と2期ぶりに過去最高を更新する見通しだ。配当は70円と前期比10円増配の方針だが、配当性向は14.9%に過ぎず増額余地は大きい。予想PER5倍近辺、PBR0.4倍台と極めて割安で、資本政策の向上が期待される。
●栗本鉄は積極還元策も評価され10年ぶり高値圏に浮上
栗本鐵工所 <5602> [東証P]は上水道用ダクタイル鉄管の大手メーカーで、水道・道路などの社会インフラ分野と産業用機械の産業設備分野を2本柱とする。4-6月期業績は官公庁向けパイプシステムやバルブの需要が底堅く推移したほか、機械部門では粉体機器や自動車関連プレス機器が増勢で、経常利益12億5200万円と前年同期比7割を超える大きな伸びを示した。また、4年ぶりに自社株買いと消却を実施するなど積極的な株主還元姿勢も好感され、株価は約10年ぶりの高値圏に急浮上している。ただ、指標面では予想PER8倍前後、PBR0.4倍台と依然として割安感が強い。
●テクノスJはDXの追い風捉え好調推移
テクノスジャパン <3666> [東証P]はERP(統合基幹業務システム)やCRM(顧客管理システム)の導入支援を展開するシステムインテグレータ。第3の成長ドライバーとして、注文から決済までデータ連携して企業間取引を最適化・効率化する独自プラットフォーム「CBP」(注文決済サービス)を育成中だ。足もとの業績は企業のDXニーズを追い風に好調に推移しており、4-6月期の経常利益は4億9500万円(前年同期比58.4%増)と過去最高を塗り替えた。好決算が評価される形で株価は急騰し、8月2日に年初来高値783円をつけた。足もとは調整含みにあるが、予想PER14倍台と同業他社と比べて割安圏に位置しており、再浮上に期待したいところだ。
※四半期の過去最高益は原則、四半期決算の開示が本格化した03年4-6月期以降の業績に基づいたものとする。
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