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リョービのニュース
―EV関連部材を手掛ける企業に好機到来、テスラ復活の第2章突入でテーマ相場再び―
名実ともに9月相場入りとなった1日の東京市場はリスク選好の地合いとなった。日経平均株価は朝方の取引開始時こそ軟調なスタートを切ったものの、その後はすぐに買い優勢の展開に変わり上昇に転じた。後場取引終盤は上げ幅を縮小したものの、しっかりとプラス圏で着地している。今年に入ってから日経平均は大発会を除き月替わり最初の取引ですべて上昇、いわゆる“月初高”を演じてきたが、9月もそのアノマリーが生きる展開となった。ちなみにこの日はTOPIXの方はひと足先に年初来高値を更新した。いうまでもなくこれは1990年7月以来、約33年ぶりとなるバブル後高値の更新と同義である。
●夏枯れ返上のテーマ相場が始動
中国リスクや米国景気の減速懸念などが喧伝されるなか、日本株は想定以上の強さを発揮している。特に今週は日経平均、TOPIXともに5連騰で安い日がなかった。8月第3週の海外投資家による現物株大量売り越しにも動ずることなく、個人投資家マネーはしたたかで、その後の強調相場を満喫している。
夏枯れ相場といわれながらも、良好な企業業績をベースに物色意欲は旺盛であり、個人投資家が旗振り役となってテーマ買いの動きも活発化している。そうしたなか、静かに物色人気が再燃しているのが電気自動車(EV)関連株だ。今週は日米で政府による政策支援の動きが相次いでおり、株式市場も敏感にその風を感じ取っている。ここは改めて投資対象としてEV周辺で商機を捉える企業に光を当ててみたい。
●日米でEVインフラ整備加速へ
EVの普及を後押しするうえで極めて重要性が高いのがインフラ整備だ。代表的なものではガソリン車で言うところのガソリンスタンド、つまり充電設備の充実が求められることになる。EV本体については民間の大手自動車メーカーやビッグテックが切磋琢磨して消費者の耳目を驚かせる魅力的な商品開発を進めていく、ということに尽きる。しかし、EVが活躍する舞台、すなわち全国土にわたるインフラを整えるのは政府の役割に拠るところが大きい。
そうしたなか、週明け28日、経済産業省はEV普及に向けて2030年までの充電設備の設置目標を従来目標から上方修正して30万口とする考えを示し、その指針を有識者会議に提示したことが報じられた。21年のグリーン成長戦略で提示されたのは30年までに15万基であったから従来目標の2倍に相当する。これは高速道路のサービスエリアや道の駅、商業施設などの公共スペースを対象としているが、規模感でいうと現在の設置数は約3万基であり、向こう7年以内に今の10倍に増やす計画ということでインパクトは強力である。
一方、米国でもバイデン政権がEV普及に向け一段と本腰を入れている。31日、EV移行を促進させる目的で、120億ドル(約1兆7400億円)規模の財政支援に乗り出すことを発表した。工場改修などにかかる費用に対し20億ドルの補助と最大100億ドルの融資を行い、EV以外にも高効率のハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)の製造でも同様に対象に含めるというものだ。
●テスラ神話第2幕のプロローグ
国策のフォローウインドを意識してか、米国株市場ではテスラ
中国では不動産規制の厳しさが取り沙汰されている一方、EVに関しては政府当局の支援体制が厚く、既に同国新車販売の2割をEVが占めているのが現状である。テスラの戦略は目先のノイズに惑わされない大局的なストラテジーであり、蛮勇ではなくそこに勝算ありきということだ。
●注目されるトヨタのEV150万台戦略
国内では自動車業界の盟主であるトヨタ自動車 <7203> [東証P]の電動化戦略が注目されるが、中国の国を挙げてのEVシフトにどう対応していくかが課題である。同社は26年までに年間150万台のEV販売目標を掲げており、その達成に向け今後増産体制を強化し、中国を含めグローバルでのEV展開に傾注していく必要に迫られている。もちろん、日産自動車 <7201> [東証P]やホンダ <7267> [東証P]、SUBARU <7270> [東証P]といった他の大手自動車メーカーもEVへの注力はもはや待ったなしの状況で、今後さまざまな経営戦略を打ち出し、各社鎬(しのぎ)を削っていくことになる。
来年以降、EVの生産台数は国内外で加速していくことが予想されるが、その場合、EV関連の部材を手掛ける企業にとってビッグチャンスとなることは自明だ。ガソリン車とは駆動系を含め全く構造が違うため、従来の自動車部品メーカーだけではなく、樹脂系デバイスや装置メーカーなど広範囲に新たな需要が創出される公算が大きい。国内の某部材メーカーでは「ここにきて(大手自動車メーカーからの)EVに絡む案件の引き合いが急増して半ば驚いている」という声も聞かれる。関連企業は多岐にわたるが、今回のトップ特集では、EVシフトの流れに乗り、これまでにはなかった新たな商機を見いだす可能性が高いと思われる有望株を6銘柄厳選エントリーした。
●EV普及本番で株価変貌期待の6銘柄
【JMCはEV関連部品の開発ニーズが本格化】
JMC <5704> [東証G]は3Dプリンター による試作品製造と高品質・小ロット量産に対応した砂型鋳造を手掛けている。3Dプリンターでは先駆的存在で、現在でもサービススピードや加工技術、素材への幅広い対応力などで他社と一線を画している。また、鋳造事業は伝統的に培われた技術にデジタル技術を融合してハイクオリティーな顧客ニーズを捉えており、ここ自動車業界からのEV向け部品開発の引き合いが本格化している。このほか、産業用CTスキャナを使った検査・測定サービスでは製造業や研究機関からの需要が旺盛だ。22年12月期営業利益は前の期比3.4倍の3億5100万円と急拡大し4期ぶりにピーク利益更新。更に23年12月期は前期比20%増の4億2000万円と一段の飛躍が見込まれているが、進捗率を考慮して更に上振れる公算大。株価は8月29日に1020円の高値をつけた。しかし、これは18年10月につけた最高値2490円(修正後株価)の半値以下の水準で上値の伸びしろは大きい。
【三光合成は樹脂部品で商機捉え株価も青空圏へ】
三光合成 <7888> [東証P]はバンパーをはじめとする自動車向けを主力に工業用樹脂部品を手掛け、金型設計・製作からの一貫生産を強みとしている。EVは内燃機関を持たないことから、ガソリン車よりも樹脂部品の部品点数がはるかに多いという特徴があり、同社にとって中期的に商機が高まることは必至だ。そうしたなか、持ち前の技術力を武器にEVの駆動系などに使われる高機能部品の開発を推進し需要に備えている。また、経済成長著しいインド で生産拠点を増設するなど“インド重視”の姿勢もポイントだ。23年5月期に営業37%増益と高成長を示した。そして24年5月期も前期比9%増の38億円予想と伸び率こそ鈍化するものの、2ケタ近い利益成長で連続の過去最高更新が見込まれている。PER9倍前後でPBR0.8倍台と割安感が顕著だが、潜在成長力の高さは疑いなく株価の上値余地は大きい。修正後株価で849円の上場来高値更新から青空圏への飛翔が期待できる。
【エスペックはニッチトップの実力発揮に期待】
エスペック <6859> [東証P]は気温や湿度などの影響を分析する環境試験器で世界トップの商品競争力を誇るグローバルニッチトップ企業だ。自動車やバッテリーをはじめ、スマートフォンや家電、航空機、更に食品や医薬品まで幅広い分野を需要先としている。自動車向けでは国際規格やドイツ自動車業界の規格全項目に対し、ワンストップで対応できる圧倒的な強みを持っている。EVへの対応も抜かりなく、車載電池向けを中心に戦略投資を行い、充放電試験用チャンバーが収益に大きく貢献している。業績は23年3月期に売上高が前の期比26%増収で過去最高を記録、営業利益は同2.2倍化したが、続く24年3月期も拡大基調が続く。売上高は前期比6%増の560億円予想と連続ピーク更新、営業利益は同15%増の50億円予想と過去最高だった19年3月期以来の水準に達する見通しだ。株価は8月10日の年初来高値2445円の更新から、中勢3000円台乗せが視野に。
【リョービはギガキャスト構想で台風の目に】
リョービ <5851> [東証P]は自動車業界向けを主力とするダイカスト専業メーカーで業界首位に位置する。トヨタの打ち出す新EV戦略では、大型の鋳造設備で複数のアルミ部品を一つのパーツとして成型する新たな生産技術「ギガキャスト」が注目され、26年に投入するEVに搭載する方針を明らかにしている。リョービはこのギガキャストを使う大型車体部品製造に参入することが伝えられているだけに、今後もマーケットの関心を集めそうだ。足もとの業績も自動車生産台数の回復を背景に好調。23年12月期営業利益は期初見通しから増額修正され前期比51%増の105億円を予想している。一株純資産が4154円と高水準でPBRは0.6倍台に過ぎず、1倍復帰に向けた水準訂正への思惑が募る。8月1日に3070円の年初来高値をつけた後は2000円台後半に押し戻されているが、早晩売り物をこなし再浮上に向かう可能性が高い。3000円台での活躍が有望。
【三桜工はブレーキ配管や全固体電池で活躍へ】
三櫻工業 <6584> [東証P]は自動車用チューブで高い商品競争力を誇る自動車部品メーカーで、独立系ながら高技術力を武器にグローバルに展開している。海外売上高比率は8割を占めているが、EV向けではステランティス・グループから小型SUV向けブレーキ配管の新規受注を獲得したことを6月に開示している。次世代コア事業に積極展開し、全固体電池や水素生成貯蔵分野などの研究開発に早くから取り組んでいる点もポイントとなる。収益は急回復トレンドに入っており、24年3月期営業利益は前期比3倍となる40億円を見込んでいる。なお、23年4-6月期の同利益は11億1200万円(前年同期比8.4倍)を達成した。株価は8月中旬に調整を入れたものの、75日移動平均線をサポートラインに切り返し急。直近、年初来高値924円をつけたが、ここは通過点で4ケタ大台での活躍が有力視される。1000円台乗せとなれば21年12月以来約1年9ヵ月ぶりとなる。
【東海理は電動化対応部材に経営資源をシフト】
東海理化電機製作所 <6995> [東証P]はスイッチやシートベルトなどを製造する自動車部品会社だが、筆頭株主であるトヨタ向けが売り上げの約8割を占める。したがってトヨタの生産拡大の動きは収益機会に直結する強力な追い風となっている。経営戦略も世界的なEVシフトを背景に、電動化に対応した部材や装置の製造に重心を移し需要獲得を進める構え。ギアチェンジを自動化するシフト・バイ・ワイヤやセンサー式スイッチで活躍機会を高めていく。収益も前期から急回復期に突入している。23年3月期営業利益は前の期比8割増益を達成、続く24年3月期も前期比2割増益の200億円を予想している。同社もPBRが0.7倍台と1倍を大きく下回っている。株価は4月中旬以降、25日移動平均線が下値を支持する形で上値指向を強めた。時価は約5年ぶりの高値圏に位置するが、一段の上昇余地がある。信用取組は買い残が枯れた状態で、日証金では逆日歩が付くなど株式需給も良好だ。
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