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―日経平均株価がバブル超え、“にわか富裕層”誕生で熱視線向かう―
東京株式市場が「失われた30年」をついに奪還した。日経平均株価は22日、3万8915円87銭を上抜き、悲願だった約34年ぶりとなる史上最高値更新を果たした。きょうもリスクオンの流れが継続しており、早晩未踏の4万円台乗せを果たすとの見方が大勢だ。こうしたなか、保有株の株価上昇で金融資産が増加し、高額消費への支出を促すことになるとの見方が出ている。中国経済が低迷する状況で、 インバウンド需要を担ってきた中国人訪日客の存在感が薄れるなか、東京株式市場の力強い上昇波が新たな高額消費の主役を生んでいる。色めき立つ「高額消費」関連株を取材した。
●財布のひも大きく緩む?
「まさか、生きているうちにこの日を迎えるとは思いもしなかった」。日経平均が史上最高値を更新した22日、バブル経済時代にかつて兜町を闊歩した多くの元市場関係者から聞かれた言葉だ。冗談めかして言った言葉だが、苦節30年、それほどいばらの道だった。米画像処理半導体大手エヌビディア
企業の業績も悪くはない。今回も3月期決算を前にしておよそ5社に1社が上方修正し、株主還元強化を打ち出す企業も増加している。この急騰相場の主役は海外マネーとはいえ、保有株の株価上昇を背景に財布のひもが大きく緩んでいる投資家が増えていることは間違いなく、消費への波及効果が期待できる。高額消費の代名詞といえる百貨店株を除けば、消費に絡む関連株には出遅れ感が漂う銘柄も少なくない。
●百貨店には「ポジティブに働く可能性」
大手百貨店に取材をすると「ここ1年ほど比較的高水準に(日経平均)株価が推移してきたことも全体として下支えとなったが、今回の最高値更新は、更にポジティブに働く可能性がある。ただし、その効果はすぐにではなく、一定程度経過したのちに出てくるとみている」(広報)としており、ここからの波及効果に期待する。 百貨店株の動きと、日経平均の連動性を指摘する関係者は多い。百貨店株の多くは、バブル経済絶頂期の1989年年末に最高値をつけたものが多く、まさに全体相場の動きと合致する。そうしたなか、日経平均には先高観も強いだけに、三越伊勢丹ホールディングス <3099> [東証P]、高島屋 <8233> [東証P]をはじめ、J.フロント リテイリング <3086> [東証P]、松屋 <8237> [東証P]、エイチ・ツー・オー リテイリング <8242> [東証P]などの百貨店株には、ここからの上値を期待する声も出ている。
●“にわか”が主役で出発進行
ただ、前出の大手百貨店では「当社顧客のうちいわゆる富裕層は、(株価が上昇して)キャピタルゲインを得るというよりも長期に保有し、キャッシュを得てすぐに使うというタイプの方はあまり多くない」ともいう。とはいえ「消費に貢献するのは、ここにきて利益を出した“にわか富裕層”」(家電量販店)という見方もあり、株高効果の発現には期待が高まりそうだ。
百貨店に詳しいネット証券アナリストは「大手百貨店のIR担当の話では、最上客は年間で約50億円を同社に落としているという。宝石類などを買い漁ると、その数字は比較的容易に到達する。このような富裕層が、最近にわかに増えている。その背景は株価の上昇と不動産価格の高騰だ。不動産価格は局地的だが、東京都の港・千代田・中央の3区で土地とマンション価格の急激な上昇が起こっている」と話す。
消費全体の底上げは、春闘が本格化するなか実質賃金がプラス基調に転換するかが大きなポイントとなるが、いずれにせよ株価の上昇は資産効果につながり、高額消費へのインパクトは大きいものとなろう。
●時計でセイコーG、シチズン
高額消費では、まず代表格の一つ「高級腕時計」に注目したい。高級腕時計は海外ブランドに目が向きがちだが、日本勢の存在も大きい。セイコーグループ <8050> [東証P]の国内ウォッチは、個人消費の回復やインバウンド需要を背景に「グランドセイコー」「セイコープロスペックス」などのグローバルブランドが好調に推移。海外では、中国市場は回復が遅れてはいるものの、米国、欧州、アジアなどでグローバルブランドを中心に伸長している。同社の24年3月期は連結営業利益段階で前期比24.6%増の140億円を計画するが、14日に発表した第3四半期累計(4~12月)の営業利益は141億4300万円に達し通期計画を超過した。株価も上昇基調を強めており、一昨年11月の高値3505円を射程に捉えている。また、シチズン時計 <7762> [東証P]も上値を追うなか、ここからの展開に注目が集まる。
●リゾートトラにひらまつも
資産効果の高まりが、リゾートはもちろん旅行への支出を促すことは、容易に想像がつく。 旅行やホテル関連株は、既にインバウンド需要の爆発的復活で、業績も急回復し株価も動意している銘柄が多いが、少々切り口を変えて銘柄選別をすれば、まだまだ妙味がありそうだ。貸会議室大手でアパホテルをフランチャイズ展開するティーケーピー <3479> [東証G]、大和ハウス工業 <1925> [東証P]グループでアパートメントホテル開発・運営も積極展開するコスモスイニシア <8844> [東証S]、星野リゾート・リート投資法人 <3287> [東証R]など、今後の展開に注視しておきたい。
こうしたなか、会員制リゾートホテル首位のリゾートトラスト <4681> [東証P]にも注目したい。株価は、昨年10月に2062円の安値をつけて以降、反転攻勢に出ている。今月6日には2610円まで買われ昨年来高値を更新、その後は上昇一服も2500円台後半で頑強展開となっている。前年度に続きホテル、メディカル事業の会員権販売が好調で、昨年実施したホテルレストラン等事業における値上げの効果に加え、ホテル会員権の値上げ実施で、インフレリスクへも対応している。24年3月期通期は、連結営業利益段階で前期比71.1%増の210億円を計画しているが、株高効果の発現で更なる期待も出ている。
高級レストランなどを展開するひらまつ <2764> [東証S]も株高による“プチ富裕層”誕生の恩恵を受けそうだ。同社はホテル事業にも参入しており、レストランだからこそできる美食+ホテル滞在を追求している点も見逃せない。業績は「付加価値の向上による単価アップ」施策などが奏功し、13日に発表した24年3月期第3四半期累計(4~12月)の連結営業損益は3億8900万円の黒字(前年同期は3億3300万円の赤字)に浮上。通期計画の同利益1200万円を既に上回っている。株価は、ここ250円を挟みもみ合う展開が続くが、再評価機運もじわり漂う。
●中期でシンワワイズ、アールビバンにも妙味
バブル経済期に、株、不動産とともに脚光を浴びたのが 美術品投資だった。当時、株式市場や不動産市況の空前の活況を経て、行き場を失った巨額な投機資金が美術品市場に向かった。もちろん、当時とは経済状況は明らかに違う。日経平均だけをみると“バブルの再来”を予感させるが、バックボーンとなる実体経済は当時の沸騰景気には程遠い。それでも、株式、そして不動産が高騰するなか、次の投資資金の循環先としての美術品市場にも注視が必要だ。Shinwa Wise Holdings <2437> [東証S]は日本最大の美術オークションを運営し、日本の美術品市場を長く牽引してきた実績を持つ。業績は上期最終利益が赤字で着地し、株価も下値を探る展開が続く。オークション事業については「価格の上昇をにらみ良品の出し渋り傾向が見られ、出品誘致を強化し対策を講じている」としている。中期的視点に立ち、目を配っておくのも一法だ。
そのほかでは、現代版画の催事販売が主体のアールビバン <7523> [東証S]、人間の呼吸などのわずかな動きを受けてダイヤが振動し輝きを発する特許技術「ダンシングストーン」を持ち、海外の宝飾品メーカーへのパーツ販売を手掛けているクロスフォー <7810> [東証S]なども株高による恩恵を受ける可能性がある。
株探ニュース
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