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―海外有力企業との提携の動き活発化、エネルギー効率で太陽光に対する優位性も―
日米の巨大グループ企業が手を組み、事業拡大を虎視眈々と狙う市場がある。国土の小さな日本がカーボンニュートラル社会の達成に向けて、活路を見出そうとしている 洋上風力発電(浮体式含む)がそれだ。先月31日からは英国で第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開催され、地球温暖化対策を巡る話し合いが行われている。その日本の脱炭素に向けた有力な施策として、洋上風力発電に対する関心が高まっている。
●風力発電機には1万~2万の部品が使われ関連会社への影響大
火力発電は、天然ガスや石炭を燃料に火をおこすボイラーによって、水を沸かして蒸気を発生させる。その蒸気の力を用いて、タービンを回転させて発電を行う。また、水力発電は、山間部など高所に設置されているダムに貯められた水を低い所に落とす際に生まれる力(位置エネルギー)を利用して水車を回し、発電を行う。基本的な原理は、どちらも非常に明快だ。同じように、風力発電は風の力を巨大な風車が受けて回転することで、発電が行われる。
風力発電の風車は、羽根部分であるブレードをはじめとして、ハブ、ナセル、タワーと大きくわけて4つの部品で構成されている一見シンプルなものだが、詳細に見ていくと前述した単純明快なイメージとは異なる姿が見えてくる。発電機などの各種機械が入っているナセルについてみてみよう。ナセルに入っている機械の一つでしかない発電機だけでも、フレーム、回転子(ロータ)、固定子(ステータ)、界磁、シャフト、スリップリング、ブラシ、ブラケット、冷却ファン、カップリングといった具合に、更に細かい部品から構成されている。ちなみに、ナセルだけで合計数千点もの部品にのぼるとされる。風力発電機全体では約1万~2万点の部品となり、その部品点数は自動車や家電製品並みとも言われている。ましてや、陸上よりも更に大きな風力が期待でき、国土の小さな日本が活路を見出そうとしている洋上風力発電は、言うまでもなく多数の部品が使われている。それだけ関係会社も多く、2050年の カーボンニュートラル達成に向けて、風力発電の導入が更に加速するなかで、関連銘柄には大きなインパクトに繋がる可能性がある。
●東芝グループは米系企業と戦略的提携契約を締結
21年5月には米系のGEリニューアブルエナジーと東芝 <6502> 子会社の東芝エネルギーシステムズが洋上風力発電システム分野において戦略的提携契約を締結したことを発表している。ただ、秋田港、能代港において初の商業ベースでの大型洋上風力発電事業に取り組む秋田洋上風力発電(秋田市大町)の動向を例に挙げれば、デンマークの大手風力発電機製造会社であるVestas社製の風車採用を決定。各種部材が12月から秋田港に搬入される予定だ。広大な市場が広がっており、商機と可能性は十分ながら、国内勢の活躍はまだまだこれからだ。
そんななか、中長期的に市場拡大が期待される洋上風力発電に関連する銘柄の活躍が期待できる。太陽光発電が話題となることが多いものの、エネルギーの変換効率は現在、風力発電の方が優れているとされ、こうした観点からも本格的にカーボンニュートラル社会の実現に向けて動き出すなかで、重要性が増してくることになるだろう。
●建設やベアリング、電線関連株などに注目
洋上風力発電の関連銘柄としては、16年3月に国内初となる浮体式洋上風力発電設備を実用化した戸田建設 <1860> や、海洋土木を行う上で必要な自航式SEP船(自己昇降式作業船)を保有している五洋建設 <1893> のほか、東洋建設 <1890> 、東亜建設工業 <1885> 、清水建設 <1803> などの建設会社。特殊作業船などでは商船三井 <9104> 、日本郵船 <9101> 、川崎近海汽船 <9179> [東証2]、川崎汽船 <9107> など海運株が挙げられる。その他、風力発電機本体では、風車の羽根の部分である「ブレード」については海外企業が高いシェアを誇るため、関連銘柄としては繊維強化プラスチック(FRP)、炭素繊維などの素材になるだろう。そのため、AGC <5201> 、日本電気硝子 <5214> 、DIC <4631> 、東レ <3402> 、三菱ケミカルホールディングス <4188> 、帝人 <3401> 、三洋化成工業 <4471> など。
軸受では日本精工 <6471> 、NTN <6472> 、ジェイテクト <6473> などのベアリング各社が挙げられる。発電機では明電舎 <6508> 、安川電機 <6506> 、日立製作所 <6501> 、三菱電機 <6503> などとなり、ブレードの回転を発電に必要な回転数まで増幅させる増速機では、コマツ <6301> 、住友重機械工業 <6302> や、駆動装置ではナブテスコ <6268> などが挙げられる。送変電設備や送電線では、昭和電線ホールディングス <5805> 、住友電気工業 <5802> 、フジクラ <5803> 、古河電気工業 <5801> といった電線株が関連銘柄として挙げられ、これら銘柄群が洋上風力発電に関連した主な銘柄となろう。以下では、洋上風力発電関連の注目6銘柄を挙げたい。
●酉島、応用地質、DNHD、人・夢・技術など注目
酉島製作所 <6363> ~中型風車の製造、設計、設置計画、工事、メンテナンスまでトータルサポートを提供する。また、10年に風力発電設備メンテナンスの専門会社であるイオスエンジニアリング&サービス社へ出資(出資比率49%)しており、万全のメンテナンス体制を整えている。長期ビジョンを見据えた中期経営計画「Beyond110」では、洋上風力発電を含めたサービス事業の充実を図る計画である。
応用地質 <9755> ~日本最大手の地盤調査会社であり、18年に洋上風力発電のための専門組織を設置。海底地盤調査の需要に対応するため、調査用足場の増設に向けて新規設備投資を行ったほか、新しい海底探査技術の開発も行ってきた。グループ全体で環境アセスメントやリスク算定、事業性評価、耐震検討など、洋上風力発電プロジェクトに不可欠な各種専門サービスを提供する。また、21年1月には日本郵船、オランダに本社を置くFugro社と、国内洋上風力発電設備向け海底地盤調査サービスの協業について覚書を締結している。
DNホールディングス <7377> [東証2]~大日本コンサルタントとダイヤコンサルタントが7月に経営統合して設立された。企業規模の拡大による成長力の強化などを目的に、ダイヤコンサルタントが保有する海洋調査の関連技術を融合させ、洋上風力発電事業の受注拡大に乗り出すようだ。取り組みの一環として大日本コンサルのインフラ技術研究所に「洋上発電推進室」を設置。将来的には海外展開も視野に入れている。
東陽テクニカ <8151> ~計測ソリューションを国内外の様々な産業界に提供している。海洋/特機事業では海上から海底まで、海を計測するソリューションを手掛けており、洋上風力発電向けソリューションでは、マルチビーム測深機、超小型マルチビーム測量無人ボート、海底の高分解能画像を出力するサイドスキャンソナー、地層探査機、汎用遠隔操作水中ロボット、音響測位システムなどを提供する。
極東貿易 <8093> ~洋上で波による全ての挙動を制御し、作業船から風車や他船に人員・物資を安全にアクセスさせるためのシステムのほか、海底着座型CPTシステム、ケーブル埋設用・点検用ROV、環境調査用ブイシステム、モノパイル設置用掘削装置など、洋上風力発電建設におけるさまざまな装置を手掛けている。
人・夢・技術グループ <9248> ~建設コンサルタント事業を展開する長大の完全親会社として21年10月に設立。風力発電分野では、風力発電事業のワンストップコンサルティングサービス、洋上風力発電調査・解析技術などを提供している。
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