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理研ビタミンのニュース
―新規参入や海外からの進出で市場は拡大、成長産業化への取り組みも強化―
異常気象の常態化や乱獲により水産資源の減少が社会問題となるなか、陸上で魚を 養殖する「陸上養殖」が注目されている。陸上養殖は自然環境など外的な要因の影響を受けにくいうえ、環境負荷も少ない。また、漁業就業者の減少や高齢化などの構造問題の解決にも寄与すると言われている。国内市場も拡大基調にあり、関連銘柄のビジネスチャンス拡大とともに株式市場でも関心が高まりそうだ。
●広がりをみせる養殖ビジネス
日本人の「魚離れ」が叫ばれて久しいが、人口増加や新興国の経済成長などを背景に、世界的には水産物は需要の増加が見込まれている。国際連合食糧農業機関(FAO)が発行した「世界漁業・養殖業白書2022」によると、世界の水産物の消費は2020年から30年にかけて2400万トン増加すると見込まれている。
こうしたなか、日本の養殖水産物に対する評価は高まっており、養殖ビジネスも広がりをみせている。農林水産省によると、21年の漁業産出額は1兆3783億円で、このうち海面養殖は4515億円と32.8%を占めている。この統計が始まった1960年時点では、海面養殖は319億円で全体(3663億円)に占める割合は8.7%であり、その後ほぼ一貫して上昇している。
●自然環境に左右されず環境負荷低減にも貢献
養殖ビジネスが広がりをみせるなか、注目されているのが陸上養殖だ。温度管理や水質管理が徹底された陸上養殖は、水温の上昇など自然環境に左右されにくく、計画的に魚を調達できるほか、アニサキスのような寄生虫がつきにくいというメリットがある。また、大量のエサの残りで海を汚すことがないため、環境負荷の低減につながるほか、漁業就業者の減少などの問題への対策にもなるとされている。
22年3月に閣議決定された新たな「水産基本計画」では、水産資源管理の着実な実施、漁船漁業や養殖業など水産業の成長産業化の実現、漁村の活性化の推進を3本柱と位置づけた。特に養殖業の成長産業化に関しては、マーケットイン型養殖業の推進や大規模沖合養殖の推進と並んで陸上養殖への届出制の導入を盛り込んでおり、見える化を促進することでその後の振興策につなげるもようだ。
●市場規模は5年後44%増へ
関心が高まる陸上養殖だが、市場も拡大が見込まれている。矢野経済研究所(東京都中野区)が今月発表した「次世代型養殖ビジネスに関する調査を実施(2023年)」によると、陸上で養殖する「陸上養殖システム」の国内市場規模は22年度で83億1700万円と推計されている。
陸上養殖は近年、全国的に新規参入企業や海外からの進出企業が増えており、大規模施設の建設も増加している。同社では、陸上養殖施設の大規模化や生産する水産物の多品種化が進むことで市場の拡大が進むと見込んでおり、27年度の国内市場規模は119億7700万円になると予測している。
●陸上養殖の関連銘柄に注目
ただ、陸上養殖は施設の建設費やランニングコストがかさむ。そのため、陸上養殖の市場拡大には魚を育てる事業者だけではなく、機器を開発する企業も重要になる。これらに関連する銘柄に注目したい。
ニッスイ <1332> [東証P]は、子会社である弓ヶ浜水産が20年5月、鳥取県米子市に米子陸上養殖センターを開設。日立造船 <7004> [東証P]と共同で大規模養殖では国内初となるマサバの陸上養殖に取り組み、21年11月には初水揚げを実現した。またニッスイはバナメイエビ「白姫えび」の陸上養殖にも取り組んでおり、今年度に年間110トン、27年度までに既存の施設で年間140トンの生産を計画している。
マルハニチロ <1333> [東証P]は22年10月に三菱商事 <8058> [東証P]と合弁で、富山県でサーモンの陸上養殖を行うアトランドを設立した。入善町に2500トン(原魚ベース)規模の陸上養殖施設を建設し、黒部川の伏流水や富山湾の海洋深層水を豊富に活用できる利点を生かして世界的に需要が拡大しているアトランティックサーモンの陸上養殖を行う予定で、25年度の稼働開始、27年度の初出荷を目指すという。
ゼネラル・オイスター <3224> [東証G]は、子会社のジーオー・ファームが沖縄県久米島でカキの陸上養殖に取り組んでおり、今年8月には、ノロウイルスに感染しない「あたらないカキ」の完全陸上養殖に世界で初めて成功したと発表した。カキの養殖では、陸上での種苗採卵や稚貝と呼ばれる1~3センチメートル程度までの生育は行われていたが、その後は海域に移動し生育されていた。ジーオー・ファームは海洋深層水を養殖海水に使用することで完全陸上養殖に成功しており、今後は量産化施設の建設も検討しているという。
理研ビタミン <4526> [東証P]は、子会社理研食品が21年10月、岩手県陸前高田市に陸上養殖施設を開設し、近年国内主要産地での生産量が激減しているスジアオノリの生産を開始した。今年9月には、水産エコラベルであるマリン・エコラベル・ジャパンの養殖認証規格も取得しており、スジアオノリをはじめとした海藻類の安定生産を目指すとしている。
丸紅 <8002> [東証P]は20年4月にニッスイ子会社と共同で株式を取得してデンマークのダニッシュ・サーモン社を子会社化し、サーモンの陸上養殖に参入した。また、22年4月にはノルウェーのプロキシマー・シーフード社が静岡県小山町の陸上養殖場で生産するサーモンを24年から10年間、国内で独占販売することで合意。24年の出荷数量は約2500トン、27年のフル稼働時には約5300トンの出荷を予定している。
三井物産 <8031> [東証P]は17年4月、陸上養殖ベンチャーのFRDジャパン(さいたま市岩槻区)に出資し、陸上養殖事業に参画。今年7月にはFRD社の第三者割当増資をエア・ウォーター <4088> [東証P]、積水化学工業 <4204> [東証P]、STIフードホールディングス <2932> [東証S]などと引き受けることで追加出資を行っている。FRD社では18年から運営する実証実験プラントでこれまで20世代以上の魚を養殖しており、今回の調達資金でサーモントラウトの陸上養殖商業プラント(年間生産量3500トン規模)の建設を進めている。
また設備機器では、日揮ホールディングス <1963> [東証P]に注目したい。子会社である日揮が21年から岡山県内の閉鎖循環式陸上養殖施設で、魚の試験生産による養殖ノウハウの蓄積とシステム開発を実施。同年8月には福島県浪江町に陸上養殖分野の実証生産及び技術開発を行うかもめミライ水産を設立した。これらで得たノウハウをもとに、今年7月には前述のFRD社から「閉鎖循環式陸上養殖事業」に係る陸上養殖商業プラント建設プロジェクトを受注している。
NECネッツエスアイ <1973> [東証P]は、19年8月に淡水魚養殖大手の林養魚場(福島県西郷村)と合弁会社ネッツフォレスト陸上養殖を設立した。林養魚場の養殖ノウハウとNESICのAIやIoTなどデジタル技術を組み合わせ、サーモンの陸上養殖に取り組み、今年8月に初出荷を実現した。また、フランチャイズによる陸上養殖事業パッケージの展開を行い、パートナーを含めたビジネス全体で29年度に年間売上高300億円を目指すとしている。
このほか、九州大学と共同で「磯焼け海域における駆除ウニの陸上養殖」の事業化に向けて検討を進めている高田工業所 <1966> [東証S]や、陸上養殖向けに水中の酸素濃度を計測して酸素を補給する機器を開発したCKD <6407> [東証P]、10月4日に完全閉鎖循環式陸上養殖設備の開発を開始したと発表したリックス <7525> [東証P]などにも注目したい。
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