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―業況は絶好調、陣容拡大へ向けコンサルタント確保の動きが活発化―
日本国内のM&A市場が活況を呈している。コロナ禍を経て経営環境が急変した日本企業が事業の選択と集中を加速させているほか、経営者の高齢化により事業承継 の一環として他社との合併を模索する事例が相次いでいる。直近では外資系証券会社による新規カバレッジで株価が動意づいた銘柄もあった。今回の株探トップ特集では、 M&Aや コンサルティング事業を中核とし、一段の成長が期待できる銘柄にスポットライトを当てる。
●日本企業のM&A件数は過去最多に
M&A助言のレコフによると、2022年の日本企業のM&A件数は前年比0.6%増の4304件となり、2年連続で過去最多を更新した。金融・経済情勢を巡る不透明感が強まるなか、世界的にはM&Aを手控える企業の動きもみられるが、日本では事業承継などを目的とするM&Aのニーズが拡大しているようだ。
昨年11月にオリックス <8591> [東証P]が、化粧品や健康食品の通販事業を展開するディーエイチシー(DHC、東京都港区)の創業者で大株主の吉田嘉明会長兼社長から、株式を取得する契約の締結で合意したと発表したことも記憶に新しい。買収額は3000億円程度と、日本の事業承継目的のM&Aとしては過去最大規模となると報じられている。
「事業再生」を巡る動きも活発化している。三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]傘下のSMBCキャピタル・パートナーズは、グループ企業7社の民事再生手続きの開始が決定した国内鶏卵最大手のイセ食品(東京都千代田区)の事業再生に向けたスポンサー契約を同年11月に締結。議決権の過半出資(マジョリティー出資)による企業再生の手法をメガバンクが導入するのは初めてとされている。地方銀行と投資ファンドがタッグを組み、経営難に陥った中小企業の再生を支援する動きも広がっている。ニューホライズンキャピタル(東京都港区)は事業再生目的会社を設立し、同年7月に「ポストコロナ・リカバリーファンド」を設定。同ファンドには中小企業基盤整備機構や東京きらぼしフィナンシャルグループ <7173> [東証P]のきらぼし銀行、和歌山県地盤の紀陽銀行 <8370> [東証P]などが出資している。
●人材採用費を成約件数がカバーするM&A総研
こうした状況下でM&A関連企業の成長期待が高まっているが、ボトルネックもある。そのひとつが人的資源だ。パーソルホールディングス <2181> [東証P]傘下のパーソルキャリアによる調査(22年12月)では、「コンサルティング」の転職求人倍率は8.23倍と、業種別では「人材サービス」(8.31倍)に次ぐ高さとなっている。人材獲得競争が熾烈を極めているなかにあっても、必要な戦力を確保できた企業こそが、成長ストーリーの具現化に近づくことができると言えそうだ。
M&Aの仲介業務を手掛けるM&A総合研究所 <9552> [東証G]は、22年9月期にアドバイザー担当の人員を前の期比43人増の74人とし、計画(73人)を上回る水準まで伸ばした。継続的な人員増に伴って、22年7-9月の新規受託件数は前年同期に比べ2.7倍の178件に増加している。23年9月期は更にアドバイザー担当を130人まで増やす計画だ。費用の増加があっても成約件数の増加がカバーする見通しで、今期の売上高は前期比71.3%増の67億円、最終利益は同58.9%増の21億800万円と大幅な増収増益を見込む。
産業再生機構出身の大西正一郎氏と松岡真宏氏が共同で社長執行役員を務めるフロンティア・マネジメント <7038> [東証P]は、連結全体での22年11月時点の従業員数が369人と22年度の計画(354人)を上回る水準まで増員した。それでも同月に22年12月期(前期)の最終利益予想を5億円から6億円(前の期比77.1%増)に上方修正している。M&Aアドバイザリー事業の受注残高は直近では過去最高水準を維持するほか、前の期よりも大型・中型案件の比率が高まっている。
中堅・中小企業のM&A案件を得意とするストライク <6196> [東証P]は、22年9月期にコンサルタント数を22人増員した。退職者の発生と一部の新規採用者の入社時期が今期以降にずれ込んだため、26人の計画に対しては未達となった。今期は40人の増員を計画するが、それでも最終利益は前期比21.8%増の36億800万円と過去最高益を更新する見込み。成約組数は前期比42%増の277組、新規受託数は同14%増の756件を計画している。
●業種特化型にブティックスやシンクロ
業種特化型のM&A仲介事業を手掛ける企業も好業績に沸く。介護関連のブティックス <9272> [東証G]の22年4-9月期決算は、最終利益が前年同期比2.0倍の2億9700万円となった。介護事業者向けの展示会事業の回復とともに、介護業界に特化したM&A仲介事業が大幅な増収増益となり、全体業績を押し上げる要因となった。昨年9月には建設業者向けの受発注マッチングプラットフォームを運営するツクリンク(東京都港区)と業務提携契約を締結したと発表。異分野でのM&Aマッチングサービスの拡大を狙う。
飲食業界向けの求人メディア運営を主力とするシンクロ・フード <3963> [東証P]は、同業界でのM&Aを支援するサービスも展開している。M&A仲介事業は22年7-9月期のセグメント利益が前年同期比2.8倍の約2260万円に増加。M&Aに関連する売却相談件数も大きく伸長した。今後はアドバイザー体制の強化などを通じ、事業育成に注力する構えだ。
●DX追い風のベイカレントも要マーク
事業承継・再生ニーズが追い風となるのは、M&Aの助言・仲介会社にとどまらない。顧客企業の課題を解決するうえでM&Aが有力な選択肢になるのであれば、コンサルティング企業も実現に向けた支援を行うこととなる。総合コンサルティングファームであるベイカレント・コンサルティング <6532> [東証P]の22年3-11月期の単独売上高は、前年同期比32.1%増の549億2700万円、最終利益は同34.4%増の148億2300万円と大幅な増収増益で着地した。コンサルタント数は同22%増加。企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化に向けた組織変革のニーズが直近の業績の追い風となり、23年1月13日の決算発表を受け株価は急騰し、昨年来高値を更新するなど力強い動きを見せている。26年2月期に売上高1000億円、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を300億円超とする目標の達成に向けた投資家の期待も強まっている。
DX戦略策定などの旺盛な需要を追い風に22年4-9月期が大幅な増収増益となったシグマクシス・ホールディングス <6088> [東証P]はM&Aアドバイザリー業務を手掛ける子会社を持ち、顧客の相談ニーズにワンストップで応じる体制を整えている。事業承継ニーズの潜在的な高まりは、長期契約型サービスによる売上高比率が高いタナベコンサルティンググループ <9644> [東証P]を含め、コンサル各社のサービス拡大につながる可能性が高い。
このほか、M&A仲介のオンデック <7360> [東証G]は、今月12日にトモニホールディングス <8600> [東証P]の徳島大正銀行との業務提携を発表。名南M&A <7076> [名証M]は昨年7月、大垣共立銀行 <8361> [東証P]などとのベンチャーキャピタルの設立を発表するなど、地銀とともに攻勢をかけている。不適切な会計処理の発覚を受けガバナンスの強化に動いている日本M&Aセンターホールディングス <2127> [東証P]や、前述のレコフを傘下に持つM&Aキャピタルパートナーズ <6080> [東証P]、年間2500件以上のコンサルティング実績を持つ山田コンサルティンググループ <4792> [東証P]、経営コンサル大手の船井総研ホールディングス <9757> [東証P]も、M&A関連の中核銘柄に位置づけられるだろう。投資銀行業務を展開するフィンテック グローバル <8789> [東証S]や、自動車部品など中堅・中小メーカーの事業を承継して競争力強化に努めるセレンディップ・ホールディングス <7318> [東証G]などもマークしておきたい。
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