―睡眠の質の向上求める人増加で需要が拡大、テレビCM効果で人気化する商品も―
既に年末年始の休暇に突入した人もいると思われるが、この時期に休養しようと思っていても、イベントが続く年末年始は思うように休養がとれないもの。もともと日本人は「休み下手」といわれており、年末年始に普段より余計に疲労を溜め込む人も少なくないようだ。
こうしたなか、着るだけで疲労回復効果が期待できる「リカバリーウェア」に注目が集まっている。テレビやネットなどでも取り上げられることが増え、実際に体験したリポートなどが紹介され人気に火がついている。上場企業にもリカバリーウェアを手掛ける企業は増えており、関連銘柄に注目したい。
●リカバリーウェアとは
リカバリーウェアとは、明確な定義はないものの、一般的に疲労回復をサポートする機能があるウェアのこと。睡眠時に着用するものが多く、着るだけで筋肉の疲労を回復させたり、睡眠の環境を整えたりといった効果が期待できる。
機能も遠赤外線によって血行を促進し、疲労回復をサポートするものや、身体の特定部分に圧力を加えることで血流を改善し、筋肉の疲労回復を促すもの、逆に身体に対する圧力を最小限に抑えることでリラックス効果を高め、全身の疲労回復をサポートするものなどさまざまな製品が商品化されている。
リカバリーウェアの市場規模に関する調査はまだ少ないものの、1500億円規模に達するとの見方もある。また上場企業ではないものの、テレビCMでおなじみのりらいぶ(仙台市泉区)の「リライブウェア」は2017年の販売開始以来、24年10月末までにシリーズ累計販売枚数200万枚以上を突破するなど人気化した商品も続出しており、これらを考慮すると今後も成長が期待できる市場といえる。
●日本人は睡眠不足
昼間に蓄積した疲労はその晩、適度の睡眠をとることでほぼ回復できるようにできている。一般的に脳の疲労は主にノンレム睡眠時に、身体の疲労はレム睡眠、ノンレム睡眠の双方の睡眠時、特にレム睡眠のときに回復するといわれている。
つまり、疲労回復のためには質の高い眠りは欠かすことができないものだが、現代の日本は通勤や通学、受験勉強をこなすための短時間睡眠や夜型生活の増加など、睡眠や体内時計の変調を引き起こすさまざまな要因で溢れている。総務省の「令和3年社会生活基本調査」によると、21年の日本人の睡眠時間は平均7時間54分で、これまで減少傾向が続いていたが、前回調査の16年の7時間40分からはやや増加。とはいえ、睡眠時間が少ないことには大きな変化はない。
OECD(経済協力開発機構)の21年の調査報告では、33カ国中で日本人の睡眠時間は平均7時間22分でワースト1位となっており、ワースト2位の韓国の7時間51分を大きく下回っていた。平均睡眠時間が14分増えても、最下位グループであることには変わりはない。
●コロナ禍経て関心高まるリカバリーウェア
睡眠不足は生活習慣病のリスクを高めることが知られているだけではなく、労働生産性の面では作業遂行能力が下がることが指摘されている。
国がまとめた国民の健康増進を目的とした「健康日本21(第3次)」でも、休養に関する目標項目に睡眠で休養がとれている者の増加を挙げており、睡眠の質の向上は国民的な課題だ。特に、コロナ禍を経て健康意識が高まったこともあり、睡眠への関心は近年高まるばかりとなっている。個々の事情があるため睡眠時間を長くするのは難しいという人でも、睡眠の質向上のためにリカバリーウェアを取り入れる人は多く、これが人気の高まりにつながっている。
●リカバリーウェア関連銘柄は
リカバリーウェア関連銘柄としてまず注目されるのは、コラントッテ <7792> [東証G]だ。医療機器認証を受けた「家庭用永久磁石磁気治療器」をメインに展開。リカバリーウェアでは、磁気の力で睡眠時に血行を巡らし、コリを改善しながら快適な睡眠をサポートする「コラントッテRESNO(レスノ)」シリーズとして、ウェアや磁気枕などを展開している。契約スポーツ選手も多く、大きなイベントを通じて認知度も向上。24年9月期単独決算で営業利益は15億円(前の期比47.6%増)と最高益を更新。25年9月期も同16億5000万円(前期比9.9%増)と連続最高益更新を見込む。
プレミアアンチエイジング <4934> [東証G]は、23年1月にリカバリーウェアブランドのベネクス(神奈川県厚木市)を買収した。ベネクスは、ナノプラチナなどの鉱物を繊維1本1本に練りこんだ独自の特殊繊維「PHT繊維」を使用したリカバリーウェアを手掛けており、血行促進作用により疲労の回復、筋肉のコリの改善などが期待できるという。Pアンチエイの25年7月期第1四半期連結決算は、営業利益6億2200万円(前年同期3500万円の赤字)と大幅黒字転換し、通期予想の同1億5000万円(前期比7.9%増)を上回って着地。第2四半期以降に積極的な投資を実行する計画であるため業績予想は据え置いたが、上振れへの期待は高まる。
MTG <7806> [東証G]は、つけているだけで腹筋や足が鍛えられる「SIXPAD」が有名だが、その「SIXPAD」ブランドから、着ているだけでトレーニング後や睡眠時に疲労回復を図ることができるリカバリーウェアを展開している。天然鉱石を原料とした高純度セラミック(非金属)を練り込んだ独自の特殊繊維「Mediculation」を使用し、身体から放出される遠赤外線(体温)を輻射(ふくしゃ)することで血行を促進する仕組みで、スポーツ選手などの利用者も多い。24年9月期決算でもリカバリーウェア分野の春夏物が想定以上に好調だったとしている。なお、同社は25年9月期に連結営業利益50億円(前期比26.1%増)を見込む。
ゴールドウイン <8111> [東証P]は、高機能ウェアの「C3fit」ブランドから、着る人自身の体温=遠赤外線の力で保温する高機能素材「光電子」を採用したリカバリーウェア「Re-Optimum」シリーズを展開している。同社の9月中間期連結決算は、前期にラグビーワールドカップでの「Canterbury」レプリカジャージ特需があった反動などで営業利益は52億1400万円(前年同期比14.1%減)と減益で着地。25年3月期通期も同181億円(前期比24.1%減)と減益を見込む。
AOKIホールディングス <8214> [東証P]は、身体から発する遠赤外線エネルギーを高濃度セラミック繊維が身体に輻射することで血行を促進し、疲労回復を促すホーム&スリープウェア「リカバリーケアプラス」シリーズを展開。また、ワークマン <7564> [東証S]も同様の効果を有する「メディヒール」シリーズを展開している。
このほか、リカバリーウェア「BAKUNE」シリーズを展開するTENTIAL(東京都品川区)には、パラマウントベッドホールディングス <7817> [東証P]が、SBIインベストメント(東京都港区)と共同運営するCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ファンドを通じて出資している。TENTIALは11月に東京証券取引所への上場申請を行ったことを発表しており、この点からも注目したい。
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