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―“信用しない”が前提に、カギ握るIDaaS―
9月、デジタル庁が発足した。コロナ禍で浮き彫りとなったデジタル化の遅れを取り戻すべく、今後官民ともにいっそう取り組みが加速していくことになる。株式市場では昨年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の注目度が急上昇したが、その際サイバーセキュリティーにも関心が集まった。あらゆる分野でデジタル化が進めば、それだけサイバー攻撃による被害がより深刻なものとなることから、DX推進と同時進行で対策の強化が急がれる。こうしたなか、性悪説に立ってセキュリティー対策を行う「ゼロトラスト」の概念が広がりをみせている。
●ゼロトラスト対応サービス続々
ゼロトラストは、利用者や端末、ネットワークなど“すべてを信用しない”という前提でセキュリティー対策を講じる考えのこと。これまでは、ネットワークを内部と外部とに分け、その境界で防御するという方法が一般的だった。しかし、クラウドサービスの利用拡大やテレワーク の普及により、社外から業務システムにアクセスする機会も増えており、社内外にかかわらず防御策をとる必要が出てきた。こうした課題への解決策として注目されているのがゼロトラストで、この概念を取り入れたセキュリティー対策への関心が高まっている。
NTTグループのドコモ・システムズと日立製作所 <6501> 、米シスコ・システムズ
また、富士通 <6702> と米パロ・アルト・ネットワークス
●中小型の関連銘柄に注目
ITインフラ構築大手のJBCCホールディングス <9889> は8月27日、ゼロトラストセキュリティーサービス「マネージドサービス for SASE Plus」の提供を行うと発表した。専門のエンジニアと24時間365日体制の運用センターが連携し、セキュリティー改善の提案やテレワークに必要なVPNの設定・運用を支援する。これにより、社内外のどこからでも同じセキュリティーレベルを確保でき、安全で快適なクラウドへのアクセスが可能になる。
ラック <3857> [JQ]は日本マイクロソフトと協業し、ここゼロトラストセキュリティーに向けた取り組みを推進している。同社は各種ゼロトラスト関連サービスも手掛けており、今後の展開が期待される。22年3月期見通しは小幅ながらも増収基調を継続、営業利益はシステム刷新や販管費の増加などにより前期並みを予想する。一方、純利益は前期の特別損失がなくなり大幅増益となる見通し。配当予想は24円で、足もとの利回りは2%台半ばと高めだ。
ブロードバンドセキュリティ <4398> [JQ]は、ゼロトラストネットワークやセキュリティーの構築・運用を支援する「次世代ネットワーク・セキュリティソリューション」を提供している。このサービスは、NTTデータ <9613> などが出資するJSOL(東京都中央区)と共同で展開しており、ゼロトラスト実現に向けた検討段階から、その後の設計や構築、運用までをトータルサポートする。22年6月期業績予想は、売上高15%増収、営業90%増益の見通し。配当は前期から据え置きの10円を見込む。
アセンテック <3565> は仮想デスクトップ関連の製品開発や販売を手掛ける。同社は4月にゼロトラスト・シンクライアント製品を開発する方針を明らかにし、5月にUSB型、7月にはソフトウェア型の製品を発表している。これにより、マルウェア感染や情報漏えいのリスクを回避するとともに、デバイス管理の運用負荷を軽減するという。同社は高成長路線をまい進しており、直近21年2-4月期業績も営業25%増益と好調。あす10日に決算発表を予定している。
ディー・ディー・エス <3782> [東証M]は指紋認証ソフト・機器の開発会社で、独自技術に強みを持つ。同社は6月、ソフトクリエイトグループのエクスジェン・ネットワークスと代理店販売契約を締結し、エクスジェンが手掛けるID統合管理ソフトウェアの販売を行うことを明らかにした。ディディエスの多要素認証基盤とあわせて提供することで、ゼロトラストセキュリティーに取り組む企業を支援するとしている。
●ゼロトラスト実現のカギ握る「IDaaS」
ゼロトラストが広がりをみせるなか、その実現に必要不可欠とされるのがIDaaS(Identity as a Service、アイダース)だ。IDaaSとは、IDやパスワードをクラウド上で一元的に管理し、多要素認証やシングルサインオン(一度の認証手続きで複数のシステムが利用可能となる仕組み)といった機能が搭載されているサービスのこと。これにより、ログインする際の確実な本人確認が可能となり、社内外を問わずセキュリティーを確保することができる。IDaaS関連の代表格としてはHENNGE <4475> [東証M]が挙げられ、マーケットでの注目度は高い。以下、関連銘柄の中から中小型で業績の良い銘柄をピックアップした。
メタップス <6172> [東証M]は、SaaS一元管理ツール「メタップスクラウド」を展開している。社内のSaaS利用状況を把握するSaaS管理機能と、シングルサインオンを可能とするID管理機能が搭載されており、3月の正式リリース以降さまざまなSaaSとの連携を積極化させている。同社の1-6月期業績は、売上高については子会社売却に伴い小幅減収となったものの、営業利益は黒字転換を果たしている。
サイオス <3744> [東証2]は、オープンソースやクラウド製品の開発・販売を手掛ける。同社は、グループ会社のサイオステクノロジーにおいてクラウド型セキュリティーサービス「Gluegent Gate(グルージェントゲート)」を提供している。足もと1-6月期業績は、売上高11%増収、営業5.4倍増益と好調。通期も増収増益の見通しで、配当は前期から据え置きの10円を見込む。
ソフトクリエイトホールディングス <3371> は業務用ソフトの開発を柱にECソリューション事業に注力しており、業績成長を続けている。子会社ソフトクリエイトが6月、ゼロトラスト実現に向けたクラウド統合認証サービスの提供を行うと発表した。このサービスは、同じくソフトクリエ傘下のエクスジェン・ネットワークスとの協業によるもので、自社のクラウドサービスにエクスジェンのクラウド型ID統合管理サービスを組み合わせた。
●トレンド、SBテクなども
トレンドマイクロ <4704> は3月からゼロトラストを実現するセキュリティープラットフォーム「Trend Micro Vision One」を提供、SBテクノロジー <4726> は今年に入りゼロトラストセキュリティーを短期間で構築するサービスを開始した。このほか、ゼロトラストやIDaaSに絡む銘柄として、ネットワンシステムズ <7518> やマクニカ・富士エレホールディングス <3132> 、GMOグローバルサイン・ホールディングス <3788> に加え、ソリトンシステムズ <3040> 、サイバートラスト <4498> [東証M]、ナレッジスイート <3999> [東証M]などをマークしておきたい。
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