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エレマテックのニュース
■中長期の成長戦略と進捗状況
1. 中長期の成長戦略の全体像
エレマテック<2715>は期間固定式の中期経営計画は策定していないが、中長期戦略に関する取り組みについての基本方針を策定し、それに基づいて経営を進めている。2018年3月期からはスローガンを、それまでの「elematec+(エレマテック プラス)」から「elematec×(エレマテック クロス)」に改めた。これは“+”に比してシナジー追求を一段と加速させることや、“×”が“クロスオーバー”や“駆ける”にも通じることでスピード感を強調する意図が込められている。
業績計画については、同社は毎年、期初において当該年度と2年後の業績予想を公表している。いわゆるローリング中期経営計画に似たスタイルだ。2020年3月期の開始に当たっては、当期業績予想とともに2022年3月期において売上高2,300億円、経常利益75億円を目指す中期予想を公表している。
この中長期戦略のスローガンは、“「グローバルに高付加価値ビジネスを提供し続ける電子材料商社」を目指す”というもので、キーワードは言うまでもなく “高付加価値ビジネス”だ。これは、会社概要の項で前述した、“自社の有する特長・強みと、独立系技術商社としての機能・知見とを組み合わせ、「付加価値創造」の取り組みを強化する方針”と同じ趣旨だ。
同社にとって“付加価値”とは何か。この問いに対する答えは1つではなく、説明が複雑になりがちだ。簡略化した1つの例として、メーカーに近い存在になることが挙げられる。企画、設計、組み立て・加工といったプロセスを同社自身が担うことでこれらに付随する付加価値を取り込み、マージン(利益率)を高めるようなケースだ。同社は生産設備を保有せず外部に製造を委託することになるのは言うまでもない。ポイントは、こうしたケースは同社にとってまったくの新しいチャレンジというわけではなく、これを実行する基礎力は同社が有する5つのベーシック機能として既に具備しているということだ。付加価値創造の取り組みは5つの機能を発揮する“場”を広げる取り組みと言うことができる。別な言い方をすれば“応用編”ということになるだろうか。
同社が5つの機能を発揮する“場”を広げることは、同社側の事情ばかりでなく、顧客側の事情もある。上記の例で言うと、“付加価値”が顧客側から川上へと移動していることになる。これをスルーしてしまうこともできるが、同社はこれをしっかりと取り込もうということだ。ここで生きてくるのが同社の商材並びに取引先の多様性だ。素材の選定と加工の委託先の選定を自前で完結し、付加価値を取り込むことが可能になる。長期業績推移の項で述べたように、同社は過去長年にわたりこの点の経験と技術を蓄積してきたと思われる。
こうした高付加価値化戦略は、同社の中長期の成長において大きな貢献が期待される。同社のこれまでの成長は、“成長市場”をうまく乗り換えることで達成されてきた。しかし今後は、成長市場という軸に、高付加価値化というもう1つの軸が加わり、2つの軸によって成長を目指すことになる。成長市場の追求はトップライングロース(売上高の成長)に寄与する一方、高付加価値化は売上高と利益の両方に貢献するイメージだ。
現在の中長期戦略「elematec×」は2020年3月期が最終年度となり、同社は2021年3月期からの新たな中長期戦略の策定に取り掛かるとみられる。また同社を取り巻く事業環境は2018年を境に急激に変化してきている。スマートフォンの普及に伴う関連需要の一服、液晶と有機ELによる小型パネル市場での競争激化、米中貿易摩擦の激化に伴う中国の生産活動の減速等々、数え上げればきりがないほどだ。
こうした状況にあって同社は、具体的な成長戦略として、1)自動車、2)自動化/省力化、3)“BtoBtoC”ビジネスの強化、という3つのテーマに取り組んでいる。これらはプロダクトサイクルや物事の本質からいって息の長いテーマであり、次期中期経営計画においても成長戦略の重要な位置を占めると想像される。詳細は以下に述べるが、3つの戦略それぞれが2020年3月期第2四半期においても着々と進捗しており、次期中期経営計画にシームレスにつなげていく体制が順調に整いつつある状況だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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1. 中長期の成長戦略の全体像
エレマテック<2715>は期間固定式の中期経営計画は策定していないが、中長期戦略に関する取り組みについての基本方針を策定し、それに基づいて経営を進めている。2018年3月期からはスローガンを、それまでの「elematec+(エレマテック プラス)」から「elematec×(エレマテック クロス)」に改めた。これは“+”に比してシナジー追求を一段と加速させることや、“×”が“クロスオーバー”や“駆ける”にも通じることでスピード感を強調する意図が込められている。
業績計画については、同社は毎年、期初において当該年度と2年後の業績予想を公表している。いわゆるローリング中期経営計画に似たスタイルだ。2020年3月期の開始に当たっては、当期業績予想とともに2022年3月期において売上高2,300億円、経常利益75億円を目指す中期予想を公表している。
この中長期戦略のスローガンは、“「グローバルに高付加価値ビジネスを提供し続ける電子材料商社」を目指す”というもので、キーワードは言うまでもなく “高付加価値ビジネス”だ。これは、会社概要の項で前述した、“自社の有する特長・強みと、独立系技術商社としての機能・知見とを組み合わせ、「付加価値創造」の取り組みを強化する方針”と同じ趣旨だ。
同社にとって“付加価値”とは何か。この問いに対する答えは1つではなく、説明が複雑になりがちだ。簡略化した1つの例として、メーカーに近い存在になることが挙げられる。企画、設計、組み立て・加工といったプロセスを同社自身が担うことでこれらに付随する付加価値を取り込み、マージン(利益率)を高めるようなケースだ。同社は生産設備を保有せず外部に製造を委託することになるのは言うまでもない。ポイントは、こうしたケースは同社にとってまったくの新しいチャレンジというわけではなく、これを実行する基礎力は同社が有する5つのベーシック機能として既に具備しているということだ。付加価値創造の取り組みは5つの機能を発揮する“場”を広げる取り組みと言うことができる。別な言い方をすれば“応用編”ということになるだろうか。
同社が5つの機能を発揮する“場”を広げることは、同社側の事情ばかりでなく、顧客側の事情もある。上記の例で言うと、“付加価値”が顧客側から川上へと移動していることになる。これをスルーしてしまうこともできるが、同社はこれをしっかりと取り込もうということだ。ここで生きてくるのが同社の商材並びに取引先の多様性だ。素材の選定と加工の委託先の選定を自前で完結し、付加価値を取り込むことが可能になる。長期業績推移の項で述べたように、同社は過去長年にわたりこの点の経験と技術を蓄積してきたと思われる。
こうした高付加価値化戦略は、同社の中長期の成長において大きな貢献が期待される。同社のこれまでの成長は、“成長市場”をうまく乗り換えることで達成されてきた。しかし今後は、成長市場という軸に、高付加価値化というもう1つの軸が加わり、2つの軸によって成長を目指すことになる。成長市場の追求はトップライングロース(売上高の成長)に寄与する一方、高付加価値化は売上高と利益の両方に貢献するイメージだ。
現在の中長期戦略「elematec×」は2020年3月期が最終年度となり、同社は2021年3月期からの新たな中長期戦略の策定に取り掛かるとみられる。また同社を取り巻く事業環境は2018年を境に急激に変化してきている。スマートフォンの普及に伴う関連需要の一服、液晶と有機ELによる小型パネル市場での競争激化、米中貿易摩擦の激化に伴う中国の生産活動の減速等々、数え上げればきりがないほどだ。
こうした状況にあって同社は、具体的な成長戦略として、1)自動車、2)自動化/省力化、3)“BtoBtoC”ビジネスの強化、という3つのテーマに取り組んでいる。これらはプロダクトサイクルや物事の本質からいって息の長いテーマであり、次期中期経営計画においても成長戦略の重要な位置を占めると想像される。詳細は以下に述べるが、3つの戦略それぞれが2020年3月期第2四半期においても着々と進捗しており、次期中期経営計画にシームレスにつなげていく体制が順調に整いつつある状況だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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