明日の株式相場に向けて=「陰の極」脱出も米国発の第2波を警戒
きょう(8日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比258円安の3万4831円と3日ぶり反落。週明け5日にブラックマンデー当時を上回る過去最大の下げ幅に見舞われた東京市場だったが、翌6日は急激なアンワインド局面に移行し、今度は過去最大の上げ幅を記録した。この時点で日経平均株価は、超特大陰線が翌日につけた大陽線をはらむ「陰の陽はらみ」を示現、テクニカル的に前日(7日)が大きな分岐点として注目された。
そして結果は、7日は陽線で前日の終値を大きく上回って引けた。欲を言えば小幅でもマドを開けて陽線を形成すれば、トレンド反転の力強いシグナルとなるところであったが、朝方大きく売り先行で始まった後の切り返しで、展開的には派手だが気迷いも感じられた。目先の難局はクリアしたものの、完全な強気転換にはまだ距離があることを暗示している。そして、きょうの相場はその“迷い”が如実に反映された値動きとなった。朝方は前日同様に日経平均が反落スタートとなり、一時880円安に売られたが、その後は急速に下げ渋り前引け時点では上昇に転じ、値上がり銘柄数もプライム市場全体の64%を占めた。しかし、後場は強弱観対立のなか再び売りに押される展開となり、日経平均は結局マイナス圏で着地。大引けは値下がり銘柄数の方が62%と個別株の騰落数も逆転した。
週明けの暴落を受け、ネット証券の店内では信用評価損益率が全体でマイナス27%、グロース市場のみでマイナス43%となり遂に「追い証ラッシュ」の引き金を引いたが、それが7日には全体でマイナス16%、グロース市場マイナス33%と依然厳しい状況ながらも急改善した。陰の極は通過したようにも見える。しかし、何が変わったかといえばあまり環境面で変化はない。前日、日銀の内田副総裁から一段の利上げに慎重姿勢を示すコメントがリバウンド相場のカンフル剤となったが、これはリップサービスの域を出ず賞味期限は短い。本丸は米景気後退に対する懸念である。あれだけ離れていた米10年債利回りと2年債利回りの逆イールドが解消されるところまで一気に是正が進んだことは、逆に言えば米リセッションの現実味が増したことを意味する。タイムラグを置いて米株の波乱が顕在化した場合、日本株もその影響を受けざるを得ない。改めて円高への誘導も考えられる。
カギを握る半導体関連だが、依然として疑心暗鬼が拭い切れない状況だ。きょうは前日引け後に好決算を発表したレーザーテック<6920.T>がこれまでの暴落の鬱憤を晴らすかのような怒涛の勢いでストップ高をつけ、カイ気配で張り付く人気となった。同社は半導体マスクブランクス検査装置の世界シェアを独占し、最近は先端半導体向け投資拡大の流れに乗り業績成長トレンドに磨きをかけていた。決算発表では受注の伸びが再び顕著となっており、利益も想定を超える好調が確認された。24年6月期の営業31%増益に続き、25年6月期も28%の大幅増益を見込み、初の1000億円大台に乗せる見通しだ。
だが一方で、半導体シリコンウエハーで信越化学工業<4063.T>と世界シェア双璧のSUMCO<3436.T>は急落を余儀なくされ、一時ストップ安に売り込まれた。プライム全上場企業のなかで値下がり率トップである。同社は12月期決算企業だが、第3四半期にあたる24年1~9月期は最終利益が前年同期比75%減と急減する見通しを発表。当然ながらネガティブサプライズとなり、大きく下値を試す展開を強いられた。
レーザーテクとSUMCOは半導体製造装置と半導体素材とで商品カテゴリーこそ異なるが、両社ともに半導体セクターという同じフィールドにありながら明暗がくっきりと分かれる状況となっている。現時点では勝ち組と負け組の見極めが難しい段階で、半導体株の復活に期待する投資家の気勢も上がりにくい。全体指数が急騰・急落する時は個別株も嵐に巻き込まれるのは致し方ないのだが、問題はその嵐が通過した後に復元できるのかどうかという点だ。半導体関連株は、生成AI市場の拡大を背景とした先端半導体需要とそれに付随する設備投資ニーズが再確認されるまで、見切り発車の押し目買いはリスクも大きい。
あすのスケジュールでは7月のマネーストック、3カ月物国庫短証券の入札、6月の特定サービス産業動態統計など。なお、この日は株価指数オプション8月物の特別清算指数(オプションSQ)算出日。海外では7月の中国消費者物価指数(CPI)、7月の中国生産者物価指数(PPI)などに耳目が集まる。なお、シンガポール市場は休場。(銀)
出所:MINKABU PRESS
そして結果は、7日は陽線で前日の終値を大きく上回って引けた。欲を言えば小幅でもマドを開けて陽線を形成すれば、トレンド反転の力強いシグナルとなるところであったが、朝方大きく売り先行で始まった後の切り返しで、展開的には派手だが気迷いも感じられた。目先の難局はクリアしたものの、完全な強気転換にはまだ距離があることを暗示している。そして、きょうの相場はその“迷い”が如実に反映された値動きとなった。朝方は前日同様に日経平均が反落スタートとなり、一時880円安に売られたが、その後は急速に下げ渋り前引け時点では上昇に転じ、値上がり銘柄数もプライム市場全体の64%を占めた。しかし、後場は強弱観対立のなか再び売りに押される展開となり、日経平均は結局マイナス圏で着地。大引けは値下がり銘柄数の方が62%と個別株の騰落数も逆転した。
週明けの暴落を受け、ネット証券の店内では信用評価損益率が全体でマイナス27%、グロース市場のみでマイナス43%となり遂に「追い証ラッシュ」の引き金を引いたが、それが7日には全体でマイナス16%、グロース市場マイナス33%と依然厳しい状況ながらも急改善した。陰の極は通過したようにも見える。しかし、何が変わったかといえばあまり環境面で変化はない。前日、日銀の内田副総裁から一段の利上げに慎重姿勢を示すコメントがリバウンド相場のカンフル剤となったが、これはリップサービスの域を出ず賞味期限は短い。本丸は米景気後退に対する懸念である。あれだけ離れていた米10年債利回りと2年債利回りの逆イールドが解消されるところまで一気に是正が進んだことは、逆に言えば米リセッションの現実味が増したことを意味する。タイムラグを置いて米株の波乱が顕在化した場合、日本株もその影響を受けざるを得ない。改めて円高への誘導も考えられる。
カギを握る半導体関連だが、依然として疑心暗鬼が拭い切れない状況だ。きょうは前日引け後に好決算を発表したレーザーテック<6920.T>がこれまでの暴落の鬱憤を晴らすかのような怒涛の勢いでストップ高をつけ、カイ気配で張り付く人気となった。同社は半導体マスクブランクス検査装置の世界シェアを独占し、最近は先端半導体向け投資拡大の流れに乗り業績成長トレンドに磨きをかけていた。決算発表では受注の伸びが再び顕著となっており、利益も想定を超える好調が確認された。24年6月期の営業31%増益に続き、25年6月期も28%の大幅増益を見込み、初の1000億円大台に乗せる見通しだ。
だが一方で、半導体シリコンウエハーで信越化学工業<4063.T>と世界シェア双璧のSUMCO<3436.T>は急落を余儀なくされ、一時ストップ安に売り込まれた。プライム全上場企業のなかで値下がり率トップである。同社は12月期決算企業だが、第3四半期にあたる24年1~9月期は最終利益が前年同期比75%減と急減する見通しを発表。当然ながらネガティブサプライズとなり、大きく下値を試す展開を強いられた。
レーザーテクとSUMCOは半導体製造装置と半導体素材とで商品カテゴリーこそ異なるが、両社ともに半導体セクターという同じフィールドにありながら明暗がくっきりと分かれる状況となっている。現時点では勝ち組と負け組の見極めが難しい段階で、半導体株の復活に期待する投資家の気勢も上がりにくい。全体指数が急騰・急落する時は個別株も嵐に巻き込まれるのは致し方ないのだが、問題はその嵐が通過した後に復元できるのかどうかという点だ。半導体関連株は、生成AI市場の拡大を背景とした先端半導体需要とそれに付随する設備投資ニーズが再確認されるまで、見切り発車の押し目買いはリスクも大きい。
あすのスケジュールでは7月のマネーストック、3カ月物国庫短証券の入札、6月の特定サービス産業動態統計など。なお、この日は株価指数オプション8月物の特別清算指数(オプションSQ)算出日。海外では7月の中国消費者物価指数(CPI)、7月の中国生産者物価指数(PPI)などに耳目が集まる。なお、シンガポール市場は休場。(銀)
出所:MINKABU PRESS
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