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ファーストコーポレーションのニュース
■業績動向
2018年7月9日に発表したファーストコーポレーション<1430>の2018年5月期決算は、売上高こそ前期比0.6%減の20,818百万円と微減となったものの、営業利益は同8.2%増の2,246百万円、経常利益は同10.9%増の2,233百万円、当期純利益は同11.0%増の1,569百万円と減収増益となった。
同社の事業エリアである東京圏のマンション市場は好調に推移しており、新規の受注は引き続き拡大している。2018年5月期は、前期からの持越案件5件を含む、全10件となり、総額で209億円の受注を確保した。受注実績が200億円の大台に乗せるのは創業来初となる。
ただし、事業を遂行するうえで肝となる用地の確保は苦戦を強いられた。成約案件は、東京都新宿区、稲城市の2件にとどまった。この影響で、受注契約に占める造注方式の案件比率が低下した。
この背景にあるのが、ホテルとの用地確保における競争激化である。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えて、ホテルの建設ラッシュが続いているが、ホテル業界が提示する利回り等の条件で、どうしてもマンションは優位に立てない。良質な用地がホテル建設にさらわれる状況が続いた。
このことは、そのまま不動産売上の不振につながっている。2018年5月期は、工事売上は2,001百万円、対前期比で増加しながらも、不動産売上は3,425百万円ダウン。その結果、全体で減収を余儀なくされた。共同事業収入が1,214百万円のプラスとなって貢献したものの、不動産のマイナスをカバーするまでには至っていない。
利益面では、経常利益で2ケタ増となったのは、完成工事は微増、不動産は低調ながらも、共同事業収入が貢献したため。それでも、工事施工のタスクロスが響いて経常利益は対計画比で158百万円のマイナスとなった。
他方、財務面は順調だ。一般的に建設業、不動産業は借入金が多く、他の産業に比べて脆弱なイメージがあるが、同社は公募増資を実施した上に、安定した利益計上によって内部留保の蓄積も進み、自己資本比率は2017年5月期の35.4%から2018年5月期は37.3%と連続の上昇となった。販売用不動産を除く自己資本比率は45.8%と高い水準となっている。キャッシュ・フローも業容拡大、利益余剰金の拡大によって手元流動性も改善した。
2019年5月期見通しは増収増益を予想
2019年5月期の見通しについては、売上高25,018百万円(前期比20.2%増)、営業利益2,418百万円(同7.6%増)、経常利益2,396百万円(同7.3%増)、当期純利益1,649百万円(同5.1%増)と増収増益を見込んでいる。
前期は初の減収となったことで、数字のみを見ると、成長性に一服感が生じたとの印象を与えたものの、それは前述したように、ホテルとの用地確保の競争激化が大きかった。しかしながら、五輪の足音が近付いてくるとともに、ホテルの用地開発がひと段落した格好となっており、用地確保に関して今後は従来のような正常な状況に戻ることが見込まれている。
そのため、受注額に関しては今期はボトムとなると想定されるものの、今後は徐々に上向くことになるだろう。比率が低下した造注方式に関しても、今後はペースが戻ることは想像に難くない。
他方、建設コストに関しては、高水準が続くものの、価格転嫁が受け入れられる状況になっており、これも収益改善の要因となりそうだ。このほか、共同事業収入が先行きも収益に貢献し、これも連続増益の要因となる。
土地の手当が当面の課題に
マンション開発において「土地を制する者がすべてを制する」(中村利秋(なかむらとしあき)代表取締役社長)と言われるなかで、同社は本格的に土地開発の専任部隊を置き、良質な土地を確保している。そこにデベロッパーと協調しながら良い建物を建てていく──そうした形で事業を進めているが、現実に造注方式の大元となる建設用地の確保が着実に進んでいる。
先述したように、直近の業績一服感は、用地確保においてホテルとの競争激化に起因するなど、マンション需要からきたものではない。今後、用地確保がスムーズになり、造注方式の案件が再び増えるようになれば、成長路線を再び歩むことが想定できる。その意味でも、良質な土地がいかに手当てできるかが、当面の課題となるだろう。
また、今後の成長を考える上で注目できるのが、健常シニア用のマンション、いわゆるアクティブシニア向けのマンションだ。高齢者向けのマンションと言うと、多くの業者が介護付きのサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)で展開し、アクティブシニア向けを手掛ける業者は少ないが、同社はこの分野で先行している。
シニア向けは、そもそもが通勤仕様ではないため、駅前立地でなくて良い。さらに、温泉やジムなど付帯設備の建設などで単価がアップできるなど、利益面でも期待できる案件だ。同社では将来的に全体の2~3割がアクティブシニア向けマンションになるよう目指していく。
大型案件の中には、デベロッパーと共同事業で行うケースもある。これまでも、ルピアコート西大宮、ウエリス新宿早稲田の森、ジオ新宿若松町などいくつか実績があるものの、今後もデベロッパーと組む案件が多くなっていくものとみられる。
受注拡大とともに、顧客となる取引先も増加した。2017年5月期は23社だったのが、2018年5月期には26社に増えたが、その中には、(株)アーネストワン、一建設(株)、NTT都市開発<8933>、日本土地建物(株)、新日鉄興和不動産(株)、三井不動産レジデンシャル(株)、阪急不動産(株)、タカラレーベン<8897>といった大手の著名デベロッパーが多く名を連ねている。今後も取引先が拡大するとともに、ビジネスの幅も広がっていきそうだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野 文也)
<TN>
2018年7月9日に発表したファーストコーポレーション<1430>の2018年5月期決算は、売上高こそ前期比0.6%減の20,818百万円と微減となったものの、営業利益は同8.2%増の2,246百万円、経常利益は同10.9%増の2,233百万円、当期純利益は同11.0%増の1,569百万円と減収増益となった。
同社の事業エリアである東京圏のマンション市場は好調に推移しており、新規の受注は引き続き拡大している。2018年5月期は、前期からの持越案件5件を含む、全10件となり、総額で209億円の受注を確保した。受注実績が200億円の大台に乗せるのは創業来初となる。
ただし、事業を遂行するうえで肝となる用地の確保は苦戦を強いられた。成約案件は、東京都新宿区、稲城市の2件にとどまった。この影響で、受注契約に占める造注方式の案件比率が低下した。
この背景にあるのが、ホテルとの用地確保における競争激化である。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えて、ホテルの建設ラッシュが続いているが、ホテル業界が提示する利回り等の条件で、どうしてもマンションは優位に立てない。良質な用地がホテル建設にさらわれる状況が続いた。
このことは、そのまま不動産売上の不振につながっている。2018年5月期は、工事売上は2,001百万円、対前期比で増加しながらも、不動産売上は3,425百万円ダウン。その結果、全体で減収を余儀なくされた。共同事業収入が1,214百万円のプラスとなって貢献したものの、不動産のマイナスをカバーするまでには至っていない。
利益面では、経常利益で2ケタ増となったのは、完成工事は微増、不動産は低調ながらも、共同事業収入が貢献したため。それでも、工事施工のタスクロスが響いて経常利益は対計画比で158百万円のマイナスとなった。
他方、財務面は順調だ。一般的に建設業、不動産業は借入金が多く、他の産業に比べて脆弱なイメージがあるが、同社は公募増資を実施した上に、安定した利益計上によって内部留保の蓄積も進み、自己資本比率は2017年5月期の35.4%から2018年5月期は37.3%と連続の上昇となった。販売用不動産を除く自己資本比率は45.8%と高い水準となっている。キャッシュ・フローも業容拡大、利益余剰金の拡大によって手元流動性も改善した。
2019年5月期見通しは増収増益を予想
2019年5月期の見通しについては、売上高25,018百万円(前期比20.2%増)、営業利益2,418百万円(同7.6%増)、経常利益2,396百万円(同7.3%増)、当期純利益1,649百万円(同5.1%増)と増収増益を見込んでいる。
前期は初の減収となったことで、数字のみを見ると、成長性に一服感が生じたとの印象を与えたものの、それは前述したように、ホテルとの用地確保の競争激化が大きかった。しかしながら、五輪の足音が近付いてくるとともに、ホテルの用地開発がひと段落した格好となっており、用地確保に関して今後は従来のような正常な状況に戻ることが見込まれている。
そのため、受注額に関しては今期はボトムとなると想定されるものの、今後は徐々に上向くことになるだろう。比率が低下した造注方式に関しても、今後はペースが戻ることは想像に難くない。
他方、建設コストに関しては、高水準が続くものの、価格転嫁が受け入れられる状況になっており、これも収益改善の要因となりそうだ。このほか、共同事業収入が先行きも収益に貢献し、これも連続増益の要因となる。
土地の手当が当面の課題に
マンション開発において「土地を制する者がすべてを制する」(中村利秋(なかむらとしあき)代表取締役社長)と言われるなかで、同社は本格的に土地開発の専任部隊を置き、良質な土地を確保している。そこにデベロッパーと協調しながら良い建物を建てていく──そうした形で事業を進めているが、現実に造注方式の大元となる建設用地の確保が着実に進んでいる。
先述したように、直近の業績一服感は、用地確保においてホテルとの競争激化に起因するなど、マンション需要からきたものではない。今後、用地確保がスムーズになり、造注方式の案件が再び増えるようになれば、成長路線を再び歩むことが想定できる。その意味でも、良質な土地がいかに手当てできるかが、当面の課題となるだろう。
また、今後の成長を考える上で注目できるのが、健常シニア用のマンション、いわゆるアクティブシニア向けのマンションだ。高齢者向けのマンションと言うと、多くの業者が介護付きのサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)で展開し、アクティブシニア向けを手掛ける業者は少ないが、同社はこの分野で先行している。
シニア向けは、そもそもが通勤仕様ではないため、駅前立地でなくて良い。さらに、温泉やジムなど付帯設備の建設などで単価がアップできるなど、利益面でも期待できる案件だ。同社では将来的に全体の2~3割がアクティブシニア向けマンションになるよう目指していく。
大型案件の中には、デベロッパーと共同事業で行うケースもある。これまでも、ルピアコート西大宮、ウエリス新宿早稲田の森、ジオ新宿若松町などいくつか実績があるものの、今後もデベロッパーと組む案件が多くなっていくものとみられる。
受注拡大とともに、顧客となる取引先も増加した。2017年5月期は23社だったのが、2018年5月期には26社に増えたが、その中には、(株)アーネストワン、一建設(株)、NTT都市開発<8933>、日本土地建物(株)、新日鉄興和不動産(株)、三井不動産レジデンシャル(株)、阪急不動産(株)、タカラレーベン<8897>といった大手の著名デベロッパーが多く名を連ねている。今後も取引先が拡大するとともに、ビジネスの幅も広がっていきそうだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野 文也)
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