台頭する不安心理と郵政上場

著者:堀篤
投稿:2015/08/24 18:38

★相場の不安感台頭

8月に入り、ギリシャ問題が一旦解決に向かった後、世界の株式市場のテーマは、大きく変わった。
注目は、ギリシャから中国、そして資源価格へと移った。

資源価格の動向には、中国経済の状況が大きく影響をする。したがって、この問題は、二つであっても一つと考えることもできる。
中国景気指標は悪化し、上海総合指数は3500ポイントまで急落した。WTI(原油先物)は、40ドル台をつけ、35ドル程度までの下落予想が多くなっている。

2週間前、本コラムではこの動向を予測したが、その際に、東京市場は急落後、反発に入るのではないか、と書いた。
その背景にあるのは、東京市場が「世界の主要市場の中で、ディフェンシブ的な役割を果たすようになるのではないか」という期待感だ。
つまり、米国利上げ、原油価格の下落、という二つの現象が、それぞれ円安(米国と日本の金利差拡大)と原材料価格(原油価格は日本の製造業のコストに大きく影響する)の下落、という日本経済へのメリットとなり、中国経済の減退の悪影響(中国市場での需要低下)を相殺する、というシナリオだ。

そうなれば、東京市場では、中国関連銘柄・資源関連銘柄が売り、原油下落メリット銘柄、米国・欧州への輸出銘柄買い、というシナリオが成立する。

しかし、市場はいま、中国経済の減退に対して、当初の予想よりもより大きな脅威を感じつつある。
それは、中国経済の減退が、思った以上に世界経済へ大きな心理的圧迫を与え、中国を市場とする世界中の企業の不振につながり、ひいては、米国・欧州の景気にも、重大な影響を与える、という市場心理の台頭だ。こういった動きは、米国の利上げタイミングが遅くなるだろう、という予測を生み、為替市場では、円高が進み、ドルは125円から122円程度まで下落した。

つまり、東京市場が、ディフェンシブな役割を果たし、世界の他市場が下落する中、資金を集める、というシナリオは、このドル急落によって、現実にはなっていない。


★反発タイミングと郵政上場

とはいえ、急落した市場の中から、東京市場が真っ先に戻りへ入る、というシナリオはまだ有効だ。
日経新聞では、18500円程度が下値の目処という専門家の話が紹介されているが、先週の時点で先物がすでに18900円台に入ってきており、その水準はすぐそこだ。東京市場の反発力が試されるのは、まず、8月月末にかけての1週間だろう。
価格は、18200円~18900円の間となりそうだ。

18200円の節目を割って更に、東京市場が低迷すると、今度は郵政3社の上場に影響を及ぼす可能性が出てくる。
7,8兆円の時価総額見込み(日本郵政)となるこれらの上場が9月10日頃の上場承認、11月4日頃の上場、と言われているが、もし東京市場がさらなる急落を演じれば、これらの承認もタイミングをずらしてくる可能性がある。予定している政府の調達金額が大きく変われば、復興予算などに影響が出る場合もあるからだ。

一方で、もし急落の中、承認を強行した場合、一時的な需給関係への不安から、東京市場は一旦、急落する可能性もある。
そういった意味では、9月10日の東証の判断は注目される。

ただし、もし上場スケジュールを優先し、強行したことによる株価下落が起きた場合は、その一旦急落したところが絶好の買い場になるのではないか。
政府は復興予算の確保や、市場の安定性に寄与するような、なんらかの手をうってくると思われるからだ。


★1テンポ遅れる、中小型株の反発

中小型株は、今回の急落で、大型株よりもさらに大きなダメージを受けているようだ。
3月決算で期待に届かない銘柄が多かったことなどが原因として挙げられているが、そこにはあまり難しい理屈があるようには見えない。
昨年来の大きな動向として、個人投資家が、中小型株よりも、日経平均先物や、ETFといった投資先にシフトしたことが、中小型株の買い手不在に繋がっている。日経平均のボラティリティが大きく、先物と、ブルベアタイプのレバレッジ型ETFが、人気となっている。

こういった背景から、中小型株の下落はよりきつくなり、上昇局面では、その動きが後回しになる、というパターンがここ数年、多くなっているようだ。
米国の金利上昇が遅れ、しばらく金融相場的な市場が続くとなれば、その傾向はさらに顕著になるだろう。


したがって、中小型株の下落は、8月24日の週に大きくなり、反発は来月に入ってからになることが考えられる。
堀篤
日本マネジコ、東京スコットマネジメント代表取締役
配信元: 達人の予想