決算発表で個別銘柄に関心、円安恩恵の上方修正を評価

著者:冨田康夫
投稿:2015/01/23 19:55

来週の株式相場見通し

 来週の東京株式市場は、欧州中央銀行(ECB)による量的金融緩和の決定に続いて、25日にはギリシャの総選挙が実施され、年初から関心の高い“2大イベント”を通過することになる。ECBの量的金融緩和は、その内容が好感され日米株式相場の上昇につながり、23日の日経平均株価終値は大発会(5日)の水準を上回る1万7500円台を回復して今年の高値に浮上した。

 不透明要因が払拭されたところに、来週から4~12月期の決算発表が本格化することで、ようやく決算内容を吟味しながらの本来の個別銘柄物色の流れが鮮明となりそうだ。10~12月期に急激な円安が進行したことから、輸出関連の業種を中心に上方修正への評価が株価に反映されるケースが目立ちそうだ。日経平均株価の想定レンジは、1万7300~1万7800円とする。

23日の動意株

 第一中央汽船<9132>=急動意。
同社はきょう午前11時に、貨物船「オーシャン・ビクトリー」号が2006年10月に天候悪化による座礁で全損したことに対する英国での損害賠償請求訴訟の第二審判決で勝訴したと発表。これが買いのきっかけとなっているようだ。同社は第一審の判決内容にもとづき訴訟損失引当金58億3600万円を計上しており、現在、勝訴による戻り入れ、および業績に与える影響について精査中としている。

 帝人<3401>=大幅高で新高値。
15年3月期最終損益は200億円の赤字見通しだが、これはリストラ特損によるもので、株価は事業再構築の最終段階にあることで来期以降の回復を買う動きが顕在化している。炭素繊維関連としても注目されており、米GM向けに炭素繊維強化プラスチックを使用した自動車部品が採用されるとの思惑など刺激材料に事欠かない。また、直近は野村証券が22日付で同社の目標株価を従来の360円から410円に引き上げたことが観測されており、物色人気を後押ししている。

 フェイス<4295>=反発し昨年来高値更新。
同社はこの日、知育アプリ専門ブランド「Kidzapplanet/キッザプラネット」と、NHK Eテレで放送中の人気テレビアニメ「がんばれ!ルルロロ」とのコラボレーション企画として「がんばれ!ルルロロのかたちあわせパズル」、「がんばれ!ルルロロのリズムスタンプ」、「がんばれ!ルルロロのはなたばつくろっ!!」の3タイトルをiOS版とアンドロイド版で配信を開始したことを発表した。

 アエリア<3758>=後場に一時ストップ高。
同社は午後1時ごろ、スマートフォン向け本格派オンラインRPG「Klee(クレー)~月ノ雫舞う街より~」のアジアおよび北米、欧州でのリリースに向けて現在開発を進めていることを公表。ユーザー数の拡大などが期待されているようだ。「Klee」は、昨年4月からiOS版、同8月からアンドロイド版を配信。現在までに140万ダウンロードを突破している。

 イーブックイニシアティブジャパン<3658>=急伸。
同社は漫画を主力コンテンツに電子書籍配信を手掛けているが、22日、中国にコミックを中心に電子書籍を配信することを発表したことで、これを好感する買いが集中している。中国は人口の多さに加えて日本の漫画やアニメの人気が高く、今後の有望市場として開拓に乗り出す構え。株価面でも1000円トビ台は中長期波動でみて大底圏にあり、売り物が枯れていたことから上値余地の大きさが意識されている。

 santec<6777>=ストップ高。
同社は22日に、光通信分野で培われた液晶LCOS技術を用いた反射型空間光変調器「SLM-100」を開発したと発表。業績への寄与などが期待されているようだ。空間光変調器は、レーザー加工用光ビーム整形や光学顕微鏡下の細胞操作、光波面補正、基礎科学応用などさまざまな光応用分野で使用されている製品。SLM-100は2月10~12日にかけて米サンフランシスコで開催される「Photonics West 2015」で展示され、3月2日から販売を始める。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想