【日経平均4万円台回復】意外高演出した株式需給、再燃する強気シナリオ
2日の東京株式市場で、日経平均株価はおよそ3カ月ぶりに4万円台を回復した。特段、目新しい買い材料がないなかで意外高を演出した投資主体は、海外勢ではなく国内勢との見方が優勢だ。6月下旬のボーナス支給を機に、新NISA経由で業績に安定感のある高配当利回り銘柄を中心に、物色意欲が強まっているという。空前の規模の設定枠となった企業による自社株買いも、株主総会後の7月以降に本格化するとの期待が高まっている。歴史的な円安進行を受け、この先輸出企業の業績予想の上方修正が相次ぐ場合は、投資資金を更に呼び込み、日本株の上値余地を広げそうだ。
新NISAの開始後、全世界株式(オール・カントリー、通称オルカン)ファンドに対する投資資金の流入が話題となって久しい。1ドル=161円台と37年半ぶりの水準まで進んだ円安の一翼を担ったのは、海外株を投資対象とするファンドの購入に伴うドル買い需要との指摘もある。こうしたなかでドル建て日経平均のチャートをみると、足もとの水準は3月7日につけた年初来高値を1割ほど下回っている。海外投資家にとって円安はドル建てでみた運用成績を押し下げる要因となる。米半導体大手のエヌビディア<NVDA>の株価上昇も直近では一服感があり、米ハイテク株との連動性が高い日本株にこのタイミングで資金を配分する海外投資家はそれほど多くはない。
一方、オルカンブームの陰で、国内の高配当利回り銘柄で構成するアクティブ型のファンドも着実に資金を集めているようだ。直近で株価が急騰を続ける海運大手をみると、日本郵船<9101.T>と商船三井<9104.T>、川崎汽船<9107.T>の配当利回りが3%台。金融株のうち、2日に高値を更新した三井住友フィナンシャルグループ<8316.T>、MS&ADインシュアランスグループホールディングス<8725.T>なども配当利回りは3%台だ。「ボーナスでまとまった資金を手に入れた個人投資家が、業績に安定感があり、配当利回りが比較的高水準な銘柄を物色している」(立花証券・企業調査部参与の鎌田重俊氏)との声が出ている。
個人投資家だけではない。今年に入り上場企業が設定した自社株の取得枠は5月の段階で約9兆円に上る。企業側の取得枠の設定は今後も続くとみられており、年間ベースでの自社株買いの金額は過去最高の規模となる公算が大きい。自社株買いの自粛期間である四半期末の最終週のなかでも6月最終週は株主総会シーズンと重なることとなるが、7月に入れば企業は自社株買いを活発化することが可能となる。海外勢が様子見となるなかで、個人投資家と国内事業法人による買いで日本株が水準を切り上げた──。そんなシナリオが透けて見える。
7月上旬は例年、ETF(上場投資信託)の分配金捻出目的の売り需要がそれなりの規模で出る時期だが、今年に関しては国内勢による買い需要が全体相場を下支えする可能性を指摘する向きもある。東証株価指数(TOPIX)が1989年12月につけた過去最高値(2884.80)の更新まで秒読み段階の状況にあるなか、「TOPIXの最高値更新に歩調を合わせる形で日経平均も最高値を更新し、8月までの間に日経平均が今の水準よりも10%高い4万4000円を試す展開があってもおかしくはない」(立花証券の鎌田氏)との見方も出ている。
7月下旬から本格化する3月期決算企業の第1四半期(4~6月)決算発表を前に、期初想定よりも大幅な円安環境を企業側が業績予想にどう反映させるのかもポイントとなるだろう。1日発表の6月日銀短観では大企業・製造業の今期の経常利益予想が下方修正されるなど、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に関して楽観ムードが強まっているわけではない。欧州政治情勢や日米の金融政策の方向性など不透明要因も横たわっており、「金利上昇メリットの金融株や、防衛費予算の増額に絡んだ防衛関連株、米テック大手の巨額投資計画を受けたデータセンター関連の一角など、業績に直結する『分かりやすい』バリュー株に注目が集まりやすい」(三木証券・商品部投資情報課次長の北澤淳氏)状況にある。足もとの需給相場のなかで製造業を中心に業績予想を引き上げる動きが相次げば、日経平均が力強く新値街道をまい進するシナリオの蓋然性が高まることとなりそうだ。
出所:MINKABU PRESS
新NISAの開始後、全世界株式(オール・カントリー、通称オルカン)ファンドに対する投資資金の流入が話題となって久しい。1ドル=161円台と37年半ぶりの水準まで進んだ円安の一翼を担ったのは、海外株を投資対象とするファンドの購入に伴うドル買い需要との指摘もある。こうしたなかでドル建て日経平均のチャートをみると、足もとの水準は3月7日につけた年初来高値を1割ほど下回っている。海外投資家にとって円安はドル建てでみた運用成績を押し下げる要因となる。米半導体大手のエヌビディア<NVDA>の株価上昇も直近では一服感があり、米ハイテク株との連動性が高い日本株にこのタイミングで資金を配分する海外投資家はそれほど多くはない。
一方、オルカンブームの陰で、国内の高配当利回り銘柄で構成するアクティブ型のファンドも着実に資金を集めているようだ。直近で株価が急騰を続ける海運大手をみると、日本郵船<9101.T>と商船三井<9104.T>、川崎汽船<9107.T>の配当利回りが3%台。金融株のうち、2日に高値を更新した三井住友フィナンシャルグループ<8316.T>、MS&ADインシュアランスグループホールディングス<8725.T>なども配当利回りは3%台だ。「ボーナスでまとまった資金を手に入れた個人投資家が、業績に安定感があり、配当利回りが比較的高水準な銘柄を物色している」(立花証券・企業調査部参与の鎌田重俊氏)との声が出ている。
個人投資家だけではない。今年に入り上場企業が設定した自社株の取得枠は5月の段階で約9兆円に上る。企業側の取得枠の設定は今後も続くとみられており、年間ベースでの自社株買いの金額は過去最高の規模となる公算が大きい。自社株買いの自粛期間である四半期末の最終週のなかでも6月最終週は株主総会シーズンと重なることとなるが、7月に入れば企業は自社株買いを活発化することが可能となる。海外勢が様子見となるなかで、個人投資家と国内事業法人による買いで日本株が水準を切り上げた──。そんなシナリオが透けて見える。
7月上旬は例年、ETF(上場投資信託)の分配金捻出目的の売り需要がそれなりの規模で出る時期だが、今年に関しては国内勢による買い需要が全体相場を下支えする可能性を指摘する向きもある。東証株価指数(TOPIX)が1989年12月につけた過去最高値(2884.80)の更新まで秒読み段階の状況にあるなか、「TOPIXの最高値更新に歩調を合わせる形で日経平均も最高値を更新し、8月までの間に日経平均が今の水準よりも10%高い4万4000円を試す展開があってもおかしくはない」(立花証券の鎌田氏)との見方も出ている。
7月下旬から本格化する3月期決算企業の第1四半期(4~6月)決算発表を前に、期初想定よりも大幅な円安環境を企業側が業績予想にどう反映させるのかもポイントとなるだろう。1日発表の6月日銀短観では大企業・製造業の今期の経常利益予想が下方修正されるなど、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に関して楽観ムードが強まっているわけではない。欧州政治情勢や日米の金融政策の方向性など不透明要因も横たわっており、「金利上昇メリットの金融株や、防衛費予算の増額に絡んだ防衛関連株、米テック大手の巨額投資計画を受けたデータセンター関連の一角など、業績に直結する『分かりやすい』バリュー株に注目が集まりやすい」(三木証券・商品部投資情報課次長の北澤淳氏)状況にある。足もとの需給相場のなかで製造業を中心に業績予想を引き上げる動きが相次げば、日経平均が力強く新値街道をまい進するシナリオの蓋然性が高まることとなりそうだ。
出所:MINKABU PRESS
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