■今後の見通し
1. 2023年5月期の業績予想
プロパスト<3236>の売上高は顧客への引渡しをもって計上されるため、物件の引渡し時期に応じて四半期ごとの業績に偏重が生じる傾向がある。2023年5月期第2四半期累計期間は大幅な増収増益となったが、2023年5月期は上期偏重型の計画であり、業績は同社の計画どおりに推移していることから、同社では2022年7月11日付で公表した期初の通期業績予想を維持している。
日本経済はコロナ禍が比較的落ち着いた状況が続くとの想定の下、経済活動の正常化が進み景気が持ち直していくことが見込まれる。しかし、円安や資源価格の上昇に伴うエネルギー価格や食料品の価格上昇が景気の下押し圧力となる可能性がある。同社が属する不動産業界に関しては地価及び建築費がともに上昇しており、新築マンションの販売価格は一段と上昇する可能性がある。物価の上昇や海外の金融当局による利上げの動き等から金利上昇に伴う需要低下懸念はあるものの、供給が抑制されていることや販売価格の先高感などから、需要は底堅く推移することが見込まれる。
このような経済環境の下、同社ではこれまでと同様に首都圏エリアにおける駅近等の利便性の高いレジデンス物件を中心に仕入を行い、分譲開発事業についてはDINKSを主たる顧客ターゲットとして推進する。同時に、賃貸開発事業やバリューアップ事業については富裕層やファンドを主たる顧客ターゲットとして事業展開を図る。物件取得については立地や価格に関しては売却想定価格を意識しつつ、より厳選したうえで取得する。同社の強みである創造デザイン力やプレゼンデザイン力を生かせる分譲開発物件の販売を進める方針だ。また、コストや建築期間等を抑制した賃貸開発物件に取り組むことで事業拡大を図る。さらに、首都圏エリアにおいて割安な収益不動産を精査して購入し、効率的に改修工事を行うことで既存建物の付加価値を高めたバリューアップ物件の売却を併せて展開する計画である。
同社では、2023年5月期の通期業績について期初予想どおりに売上高21,129百万円(前期比19.4%増)、営業利益2,215百万円(同4.2%増)、経常利益1,741百万円(同3.0%増)、当期純利益1,309百万円(同15.3%増)の増収増益を計画している。特に同社が経営上重視する当期純利益は、11期連続の増益を目指している。そのために都心部のなかでも需要が見込める物件を厳選して購入するとともに、現在保有している物件の売却活動を積極的に推進する方針だ。分譲開発事業については、2023年5月期は端境期にあたり、販売物件がないため売上高の計上は予定していない。ただ、2023年10月竣工予定のガレリア ドゥエル神田岩本町の販売予約状況は好調で、2022年7月中旬には全戸完売済であり、2024年5月期から業績に寄与することになる。そのため、2023年5月期の賃貸開発事業の売上高は全社売上高の7割、バリューアップ事業の売上高は3割を占める計画で、両事業とも好調を持続することで、分譲開発事業の落ち込みをカバーする計画である。同社では例年、予想策定時点での保有プロジェクトを前提に慎重な業績予想を発表していることから、業績の下振れリスクは極めて小さく、最終的には予想を上回って着地する可能性が高いと弊社では見ている。
2. 2024年5月期以降の見通し
同社が属する不動産業界では、マンション価格の上昇に伴う契約率低下、2020年からのコロナ禍に伴う郊外への居住増加傾向、2021年に延期された東京オリンピック・パラリンピック後の建設需要の落ち込みの影響等が懸念されるものの、低水準で推移する住宅ローン金利が下支え要因として期待される。国土交通省「建築着工統計調査報告」によると、業界の先行指標となる新設住宅着工戸数は2018年度までの高水準からは減少し、足元ではコロナ禍の影響を受けて落ち込んでいる。ただしコロナ禍が収束すれば長期的にはコロナ禍以前の水準でおおむね横ばいでの推移が見込まれる。最近ではコロナ禍を避けて郊外の不動産を選択する動きも一部には見られたが、テレワークなど在宅時間の増加が住環境の見直しにつながるなかで、引き続き生活・社会インフラが整って利便性の高い都心部の魅力は大きく、コロナ禍の収束後は都心部の需要が郊外に比べて強いという二極化の動きに回帰すると見られる。
こうした経済環境の下、同社では強みである創造デザイン力やプレゼンデザイン力を生かせる分譲開発物件の取得を進める。当面は分譲マンション価格高騰の影響から同社の取扱件数は少ないと予想されるが、分譲開発事業におけるクレーム処理などに関するノウハウは賃貸開発事業やバリューアップ事業にも活用できることから、引き続き重要な事業として推進する。しかし分譲開発事業では、ガレリア ドゥエル神田岩本町が2023年9月に竣工するまでは、業績寄与は見込めない見通しだ。また、借入金利が上昇に転じる状況となった場合、分譲マンションの購入需要にも影響が出ることも懸念されるが、賃貸開発事業に投資する裕福な個人投資家は元々自己資金の割合が高いことから、影響は限定的と見られる。建築費の上昇については、建築費を固定して工事を開始するなど慎重に対応しており、コストや建築期間等を抑制した賃貸開発物件に取り組むことで事業拡大を図る計画だ。さらに、割安な収益不動産を精査して購入し、効率的に改修工事を行うことで既存建物の付加価値を高めたバリューアップ物件の売却を併せて展開する方針である。賃貸開発事業やバリューアップ事業ではファンドが売却先に加わる予定であり、購買層がさらに広がる見通しである。既に同社では今後の業績に貢献すべく、駅近の好物件を積極的に仕入れ始めている。
現在のところ不動産業界各社の業績は総じて好調と言える。直近では新築マンションは富裕層向けの2億円以上の高額物件がよく売れており、一方同社の新築マンションは、DINKS向けの広さ40~60平米、販売価格50~90百万円のマンションが中心であり、大手とは住み分けを狙っている。不動産業界では長期的には仕入力や事業展開の差によって、好調な会社と不調な会社の二極化が進行すると予想される。同社では、今後も事業エリアを限定することで、高収益の物件を確保する計画だ。都心部で駅から徒歩5分程度の好立地物件にターゲットを絞り、買い付けの意思決定を迅速に行うことで他社に先駆けて好物件の仕入が可能になる。好物件の例としては、将来的に事業継承できずに売却に出される好立地の町工場などがある。同社のこうした物件の仕入力に定評のある企画力・デザイン力を加えることで、3事業がうまく補完し合い、2024年5月期以降も堅調な業績を維持できると弊社では見ている。
同社では対外的に中期経営計画を発表していない。同社の事業規模では業績が振れる可能性が大きいため、計画を発表すると投資家をミスリードする可能性があるとの経営判断によるものである。また、コロナ禍やウクライナ情勢など外部環境の不透明感が強いなか、同社としては計画にとらわれず柔軟に経営したいとの考えもあるようだ。ただ同社の経営方針を明確化し、投資家や従業員が同社の将来像を共有するためにも、中期経営計画の正式発表は有意義であると弊社は考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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1. 2023年5月期の業績予想
プロパスト<3236>の売上高は顧客への引渡しをもって計上されるため、物件の引渡し時期に応じて四半期ごとの業績に偏重が生じる傾向がある。2023年5月期第2四半期累計期間は大幅な増収増益となったが、2023年5月期は上期偏重型の計画であり、業績は同社の計画どおりに推移していることから、同社では2022年7月11日付で公表した期初の通期業績予想を維持している。
日本経済はコロナ禍が比較的落ち着いた状況が続くとの想定の下、経済活動の正常化が進み景気が持ち直していくことが見込まれる。しかし、円安や資源価格の上昇に伴うエネルギー価格や食料品の価格上昇が景気の下押し圧力となる可能性がある。同社が属する不動産業界に関しては地価及び建築費がともに上昇しており、新築マンションの販売価格は一段と上昇する可能性がある。物価の上昇や海外の金融当局による利上げの動き等から金利上昇に伴う需要低下懸念はあるものの、供給が抑制されていることや販売価格の先高感などから、需要は底堅く推移することが見込まれる。
このような経済環境の下、同社ではこれまでと同様に首都圏エリアにおける駅近等の利便性の高いレジデンス物件を中心に仕入を行い、分譲開発事業についてはDINKSを主たる顧客ターゲットとして推進する。同時に、賃貸開発事業やバリューアップ事業については富裕層やファンドを主たる顧客ターゲットとして事業展開を図る。物件取得については立地や価格に関しては売却想定価格を意識しつつ、より厳選したうえで取得する。同社の強みである創造デザイン力やプレゼンデザイン力を生かせる分譲開発物件の販売を進める方針だ。また、コストや建築期間等を抑制した賃貸開発物件に取り組むことで事業拡大を図る。さらに、首都圏エリアにおいて割安な収益不動産を精査して購入し、効率的に改修工事を行うことで既存建物の付加価値を高めたバリューアップ物件の売却を併せて展開する計画である。
同社では、2023年5月期の通期業績について期初予想どおりに売上高21,129百万円(前期比19.4%増)、営業利益2,215百万円(同4.2%増)、経常利益1,741百万円(同3.0%増)、当期純利益1,309百万円(同15.3%増)の増収増益を計画している。特に同社が経営上重視する当期純利益は、11期連続の増益を目指している。そのために都心部のなかでも需要が見込める物件を厳選して購入するとともに、現在保有している物件の売却活動を積極的に推進する方針だ。分譲開発事業については、2023年5月期は端境期にあたり、販売物件がないため売上高の計上は予定していない。ただ、2023年10月竣工予定のガレリア ドゥエル神田岩本町の販売予約状況は好調で、2022年7月中旬には全戸完売済であり、2024年5月期から業績に寄与することになる。そのため、2023年5月期の賃貸開発事業の売上高は全社売上高の7割、バリューアップ事業の売上高は3割を占める計画で、両事業とも好調を持続することで、分譲開発事業の落ち込みをカバーする計画である。同社では例年、予想策定時点での保有プロジェクトを前提に慎重な業績予想を発表していることから、業績の下振れリスクは極めて小さく、最終的には予想を上回って着地する可能性が高いと弊社では見ている。
2. 2024年5月期以降の見通し
同社が属する不動産業界では、マンション価格の上昇に伴う契約率低下、2020年からのコロナ禍に伴う郊外への居住増加傾向、2021年に延期された東京オリンピック・パラリンピック後の建設需要の落ち込みの影響等が懸念されるものの、低水準で推移する住宅ローン金利が下支え要因として期待される。国土交通省「建築着工統計調査報告」によると、業界の先行指標となる新設住宅着工戸数は2018年度までの高水準からは減少し、足元ではコロナ禍の影響を受けて落ち込んでいる。ただしコロナ禍が収束すれば長期的にはコロナ禍以前の水準でおおむね横ばいでの推移が見込まれる。最近ではコロナ禍を避けて郊外の不動産を選択する動きも一部には見られたが、テレワークなど在宅時間の増加が住環境の見直しにつながるなかで、引き続き生活・社会インフラが整って利便性の高い都心部の魅力は大きく、コロナ禍の収束後は都心部の需要が郊外に比べて強いという二極化の動きに回帰すると見られる。
こうした経済環境の下、同社では強みである創造デザイン力やプレゼンデザイン力を生かせる分譲開発物件の取得を進める。当面は分譲マンション価格高騰の影響から同社の取扱件数は少ないと予想されるが、分譲開発事業におけるクレーム処理などに関するノウハウは賃貸開発事業やバリューアップ事業にも活用できることから、引き続き重要な事業として推進する。しかし分譲開発事業では、ガレリア ドゥエル神田岩本町が2023年9月に竣工するまでは、業績寄与は見込めない見通しだ。また、借入金利が上昇に転じる状況となった場合、分譲マンションの購入需要にも影響が出ることも懸念されるが、賃貸開発事業に投資する裕福な個人投資家は元々自己資金の割合が高いことから、影響は限定的と見られる。建築費の上昇については、建築費を固定して工事を開始するなど慎重に対応しており、コストや建築期間等を抑制した賃貸開発物件に取り組むことで事業拡大を図る計画だ。さらに、割安な収益不動産を精査して購入し、効率的に改修工事を行うことで既存建物の付加価値を高めたバリューアップ物件の売却を併せて展開する方針である。賃貸開発事業やバリューアップ事業ではファンドが売却先に加わる予定であり、購買層がさらに広がる見通しである。既に同社では今後の業績に貢献すべく、駅近の好物件を積極的に仕入れ始めている。
現在のところ不動産業界各社の業績は総じて好調と言える。直近では新築マンションは富裕層向けの2億円以上の高額物件がよく売れており、一方同社の新築マンションは、DINKS向けの広さ40~60平米、販売価格50~90百万円のマンションが中心であり、大手とは住み分けを狙っている。不動産業界では長期的には仕入力や事業展開の差によって、好調な会社と不調な会社の二極化が進行すると予想される。同社では、今後も事業エリアを限定することで、高収益の物件を確保する計画だ。都心部で駅から徒歩5分程度の好立地物件にターゲットを絞り、買い付けの意思決定を迅速に行うことで他社に先駆けて好物件の仕入が可能になる。好物件の例としては、将来的に事業継承できずに売却に出される好立地の町工場などがある。同社のこうした物件の仕入力に定評のある企画力・デザイン力を加えることで、3事業がうまく補完し合い、2024年5月期以降も堅調な業績を維持できると弊社では見ている。
同社では対外的に中期経営計画を発表していない。同社の事業規模では業績が振れる可能性が大きいため、計画を発表すると投資家をミスリードする可能性があるとの経営判断によるものである。また、コロナ禍やウクライナ情勢など外部環境の不透明感が強いなか、同社としては計画にとらわれず柔軟に経営したいとの考えもあるようだ。ただ同社の経営方針を明確化し、投資家や従業員が同社の将来像を共有するためにも、中期経営計画の正式発表は有意義であると弊社は考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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