エリアリンク Research Memo(7):売買に依存した経営から脱却し、ストレージ運用を中心とした成長目指す(2)

配信元:フィスコ
投稿:2021/03/10 15:07
■成長戦略

2. 重点戦略
エリアリンク<8914>では基本方針として、売買(流動化)に依存した経営・成長戦略を廃止し、ストレージ運用を中心に成長することを目指す。これまで手掛けてきた売買(流動化)は市況の影響を受ける不安定さを露呈したことに加え、売買を想定した大型の土地付きストレージは運用の難易度が高いなどの問題があった。そこで、今までの成功・失敗事例の分析を踏まえたうえで、重点戦略として、(1)ストレージ(運用)を中心とした経営の継続、(2)ストレージ新商品の展開、(3)底地は新システムで販売・保有する、(4)ESG経営の推進の4点を掲げている。

(1)ストレージ(運用)を中心とした経営の継続
同社では、自社保有を進めることで収益性を改善するとともに、「ストレージミニ(仮称)」の出店を推進する。「ストレージミニ(仮称)」は小型木造ストレージで、資金面で競合他社が追従できないストレージ商品とする。具体的には、木造3階建て・40室規模で展開し、地方10万人都市にも出店可能なものを目指している。他社のストレージが大型スーパーなら、同社の小型木造ストレージはコンビニエンスストアに例えられる。さらに、外壁に「ハローストレージ」のカラー(オレンジ・紺)を採用し、スタイリッシュな外観にする計画だ。

同社では以前、大型の土地付きストレージを人口密集地に出店した際に、室数が多くて埋めるのに苦労をした経験があることから、今回は規模を小さくすることで地方都市にも展開が可能と考えている。また、将来の海外展開を視野に入れた商品として、日本での普及を目指す方針だ。

(2)ストレージ新商品の展開
同社では、住居利用可能な「ハロービズストレージ」を2021年3月に東京都町田市にオープンする予定だ。「ハロービズストレージ」とは、倉庫・事務所・住居・駐車場の機能を兼ね備えたストレージとなる。これまでのストレージの知見を生かし、人も使えるストレージを目指している。2020年出店のビジネスストレージから進化したもので、住居利用可能な倉庫とすることで需要拡大を狙う。主に郊外を中心に出店を計画し、自社保有・受注・販売を織り交ぜながら展開する予定だ。今までのアパートやマンションにはない、新たなニーズに対応することで、新たな顧客開拓を目指している。

加えて、ストレージのサービスを拡充し、認知度の向上を図る。たとえば、運搬サービス 「ハロー宅配便」では、自宅の荷物をトランクルーム収納までワンストップで対応し、顧客の利便性を向上させる。また、交通系ICカード対応セキュリティ物件の展開では、手持ちの交通系ICカードがトランクルームの鍵になる画期的なもので、日常的に管理するカードを増やさずに複数の物件の利用登録を可能にする。まず「トランクハウス24シリーズ」に導入を開始し、順次拡大する予定だ。さらに、サイト 「kurasul(クラスル)」を通じた情報発信により、ストレージを活用した豊かな暮らしを継続的に提案する。

また、同社では、商品力の向上に向けた企画として、2021年より従業員による「商品を知る」プロジェクトをスタートする。土地付きストレージの従業員利用を福利厚生として導入し、利用経験を踏まえ商品やサービスの品質向上を目指す。併せて、運搬サービス「ハロー宅配便」も利用可能とし、サービスを体感させる。従業員によるストレージの「収納グランプリ」の開催も企画しており、最も優れた収納利用について表彰する予定だ。これらの活動により、従業員がユーザー目線での気付きを見つけて物件の改善活動を促進する考えである。

加えて、リーディングカンパニーとして、他社を巻き込み、業界全体としてストレージのすばらしさを広める考えだ。従来は同社が成長することで市場が成長してきたが、今後は業界全体でストレージの魅力を広めることで、市場拡大とともに同社も成長を持続するイメージだ。業界のトップ企業として、自社の成長だけでなく、業界全体の発展を目指すものである。

(3)底地は新システムで販売・保有する
土地権利整備事業については、2020年12月期に課題を整理したことで、2021年12月期以降は新スタイルを確立・展開する計画だ。従来は借地権者へ売却(地下げ)または借地権を買取り(地上げ)をし転売することで収益をあげていたが、今後は様々な「調理方法」で底地を中心としたビジネスの創出を目指す。具体的には、地代収入による利回り(約3%)を目的とした不動産投資家への底地販売や、借地権を買取り、建物(アパート等)をリニューアルして保有・販売するなどである。また、土地権利整備事業ではこれまで手作業が中心であったが、ストレージ事業における顧客管理法を活用することも考えているようだ。

(4)ESG経営の推進
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったものである。同社では、上記の重点戦略とともに、リーディングカンパニーとして、社会課題・環境問題にも配慮した経営を推進することを掲げている。

まず、ストレージ事業を通じて、日本の住環境の改善や、資源の有効活用による環境への配慮で貢献を目指す。具体的には、木造ストレージでは耐用年数より長い「50年活用」を、またコンテナでもメンテナンスを施すことで50~75年の長期活用を計画する。

人材開発にも注力する計画だ。具体的には、コロナ禍より前から在宅勤務社員を採用しているが、今後も子育て・介護を必要とする社員も時短・在宅で働けるなど、多様な働き方を推進する。また、独自のツールで人材育成を図り、社員の業務レベル向上を図る。特に、幹部クラス向けには将来の経営リスク・課題をリスト化し、進捗を管理することで根本的解決策を考え、先手で動くための人材育成メソッドを開発し、その活用を目指す。

同社は、経営理念として「世の中に便利さと楽しさと感動を提供する」ことを、また長期ビジョンとして1. ストレージを通じて人々の豊かな暮らしに貢献する、2. ストック型ビジネスで中長期的に安定成長を実現する、3. ESG経営を推進し、社会課題を解決する、を掲げている。このように、ESG経営を長期的に推進すべき重要な経営課題の1つとして位置付けている。

近年、機関投資家を中心にESGに配慮した企業に投資する傾向が強まっている。その意味でも、同社のESG経営への取り組み状況や今後の進展が注目されよう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)


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