とれんど捕物帳 ドル円の下値警戒感は依然として強い印象
今週のドル円は週初に104円台を回復したが、105円台を試すことなく失速している。米株式市場でダウ平均が初の3万ドル台に乗せるなど市場全体の雰囲気が楽観的でドル円も週初は買い戻しが入ったとの解説も聞かれる。ただ、心理的節目の105円台を回復しようという気配までは見られていない。
週初の買戻しについては、この時期に例年見られる光景だが、恐らく感謝祭休暇を前にしたポジション調整が活発に出たものと思われ、ドル円の上値期待が高まった気配は感じられない。先々週も似たような動きが見られ、ドル円は突如105円台に急上昇したものの、105円台を維持できずに失速した。今回も同様の動きが見られており、下値警戒感は依然として強いと見てよいであろう。
今週も様々な話題があったが、米大統領選に勝利したバイデン氏が次期財務長官にイエレン前FRB議長を指名する意向を示している。米上院によって承認された場合、イエレン氏は女性で初めての財務長官となる。同氏は女性初のFRB議長でもあった。これに対して以前から財務長官ポストに意欲を示していたとされるブレイナードFRB理事はFRB理事に留まるよう要請されたという。一部からは、パウエルFRB議長の任期が2022年2月初めまでで、そのあとのFRB議長候補との声も出ているようだ。
ブレイナード理事も女性だが、ラガルドECB総裁を始め、欧米では経済分野の重要ポストでの女性の活躍は目覚ましい。イエレン氏の財務長官候補に対して市場はポジティブに捉えているようで、米株式市場の反応も良好だ。米財務省とFRBの調和が更に強まり、金融緩和や財政拡大への期待を高めているようだ。ただ、ドルについてはさらに下落する可能性があるとの指摘も出ているようだ。
また、今週は11月開催分のFOMC議事録が公表された。「現行の購入ペースを直ちに変更する必要はない」とした一方で、「状況は変更を正当化する可能性」にも言及している。また、債券購入のガイダンス強化の必要性も指摘した。ただ、市場が注目していた12月FOMCのヒントについては示されなかった印象だ。今回の議事録を受け市場からは、12月は債券購入のガイダンスを示すのみで、具体的な変更は来年以降との見方も出ているようだ。
FRBは現在、月800億ドルの米国債と月400億ドルの不動産担保証券(MBS)の計1200億ドルを毎月の購入目標に設定している。直近のデータではFRBのバランスシートは約7.3兆ドルまで膨らんでおり、FRBの購入余力はあと1.2兆ドル程度との試算も出ているようだ。これ以上の債券購入ペース拡大はリスクが大きいとの見方もあり、それよりは現行のペースを保つか若干縮小しつつ、長期金利の上昇抑制を目標に、米国債の購入をより長期ゾーンにシフトするとの見方もあるようだ。ただ、パウエルFRB議長は現行の購入でも長期金利は十分抑制されているとの見解を示していた。いずれにしろ、12月15、16日のFOMCでのガイダンス待ちといったところだ。
今週から米金融機関が来年の見通しを公表し始めている。概ね一致しているのが、ワクチンの普及次第だが、年前半は感染拡大の影響で景気回復は抑制されるが、年後半にかけ拡大が加速するとの見立てが多いようだ。それに伴ってインフレ期待も高まると見ている向きもいるようだが、FRBが平均のインフレ目標を採用したこともあり、利上げには慎重と見られ、為替市場はリスク選好のドル安を見込んでいるようだ。この手の見通しは概ね当たらないことは留意して置きたいところではあるが、現状からすれば理に適った判断であろう。株高・ドル安・円安が来年も期待されているようだ。
さて来週だが、市場ではドル安期待が根強い。来週から師走相場に入るが、今年のポジション調整と来年の予想を反映した動きが混在する月でもある。来年はワクチンへの期待から景気回復の予想も少なくない。足元で感染拡大が続いていることから、序盤こそ景気は圧迫される可能性があるが、春以降は回復が鮮明になるとの予想が多いようだ。その場合、逃避通貨に位置づけられているドルは売られやすいとの見方や、景気回復でもFRBは慎重で、インフレ期待の上昇をある程度容認し、当面低金利政策を維持するとの見方、さらには米財政赤字拡大など、ドル安シナリオを見込む声は圧倒的に多い。そのような中でドル円の上昇シナリオは描きづらい。
また、来週は金曜日に11月分の米雇用統計が発表になる。失業率の低下は続くとの予想だが、改善は鈍化が見込まれているようだ。予想よりも強い数字であれば、それなりの反応は出そうだが、FRBの低金利長期化観測とドル安期待を覆すような流れにはならないであろう。ドル円に関しては少なくとも105円は強い上値抵抗として機能しそうだ。逆に弱い数字であれば、ドル安が加速する可能性も留意される。直近発表の米新規失業保険申請件数からは強い数字は期待しづらいが、米雇用統計ばかりは開けてみないとわからない指標の1つではある。
来週は、場合によっては102円台を触る可能性も警戒したい。
来週のドル円の想定レンジだが、102.50円~105.00円を想定。スタンスは「中立」から「やや弱気」に落としたい。
()は前週
◆ドル円(USD/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓(→)
◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 中立継続
短期 ↑↑(↑↑)
◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑(↑↑)
◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑(↑↑)
◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑↑(↑)
◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑↑↑)
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次回の配信は12月12日(土)の午前を予定しています。
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MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
週初の買戻しについては、この時期に例年見られる光景だが、恐らく感謝祭休暇を前にしたポジション調整が活発に出たものと思われ、ドル円の上値期待が高まった気配は感じられない。先々週も似たような動きが見られ、ドル円は突如105円台に急上昇したものの、105円台を維持できずに失速した。今回も同様の動きが見られており、下値警戒感は依然として強いと見てよいであろう。
今週も様々な話題があったが、米大統領選に勝利したバイデン氏が次期財務長官にイエレン前FRB議長を指名する意向を示している。米上院によって承認された場合、イエレン氏は女性で初めての財務長官となる。同氏は女性初のFRB議長でもあった。これに対して以前から財務長官ポストに意欲を示していたとされるブレイナードFRB理事はFRB理事に留まるよう要請されたという。一部からは、パウエルFRB議長の任期が2022年2月初めまでで、そのあとのFRB議長候補との声も出ているようだ。
ブレイナード理事も女性だが、ラガルドECB総裁を始め、欧米では経済分野の重要ポストでの女性の活躍は目覚ましい。イエレン氏の財務長官候補に対して市場はポジティブに捉えているようで、米株式市場の反応も良好だ。米財務省とFRBの調和が更に強まり、金融緩和や財政拡大への期待を高めているようだ。ただ、ドルについてはさらに下落する可能性があるとの指摘も出ているようだ。
また、今週は11月開催分のFOMC議事録が公表された。「現行の購入ペースを直ちに変更する必要はない」とした一方で、「状況は変更を正当化する可能性」にも言及している。また、債券購入のガイダンス強化の必要性も指摘した。ただ、市場が注目していた12月FOMCのヒントについては示されなかった印象だ。今回の議事録を受け市場からは、12月は債券購入のガイダンスを示すのみで、具体的な変更は来年以降との見方も出ているようだ。
FRBは現在、月800億ドルの米国債と月400億ドルの不動産担保証券(MBS)の計1200億ドルを毎月の購入目標に設定している。直近のデータではFRBのバランスシートは約7.3兆ドルまで膨らんでおり、FRBの購入余力はあと1.2兆ドル程度との試算も出ているようだ。これ以上の債券購入ペース拡大はリスクが大きいとの見方もあり、それよりは現行のペースを保つか若干縮小しつつ、長期金利の上昇抑制を目標に、米国債の購入をより長期ゾーンにシフトするとの見方もあるようだ。ただ、パウエルFRB議長は現行の購入でも長期金利は十分抑制されているとの見解を示していた。いずれにしろ、12月15、16日のFOMCでのガイダンス待ちといったところだ。
今週から米金融機関が来年の見通しを公表し始めている。概ね一致しているのが、ワクチンの普及次第だが、年前半は感染拡大の影響で景気回復は抑制されるが、年後半にかけ拡大が加速するとの見立てが多いようだ。それに伴ってインフレ期待も高まると見ている向きもいるようだが、FRBが平均のインフレ目標を採用したこともあり、利上げには慎重と見られ、為替市場はリスク選好のドル安を見込んでいるようだ。この手の見通しは概ね当たらないことは留意して置きたいところではあるが、現状からすれば理に適った判断であろう。株高・ドル安・円安が来年も期待されているようだ。
さて来週だが、市場ではドル安期待が根強い。来週から師走相場に入るが、今年のポジション調整と来年の予想を反映した動きが混在する月でもある。来年はワクチンへの期待から景気回復の予想も少なくない。足元で感染拡大が続いていることから、序盤こそ景気は圧迫される可能性があるが、春以降は回復が鮮明になるとの予想が多いようだ。その場合、逃避通貨に位置づけられているドルは売られやすいとの見方や、景気回復でもFRBは慎重で、インフレ期待の上昇をある程度容認し、当面低金利政策を維持するとの見方、さらには米財政赤字拡大など、ドル安シナリオを見込む声は圧倒的に多い。そのような中でドル円の上昇シナリオは描きづらい。
また、来週は金曜日に11月分の米雇用統計が発表になる。失業率の低下は続くとの予想だが、改善は鈍化が見込まれているようだ。予想よりも強い数字であれば、それなりの反応は出そうだが、FRBの低金利長期化観測とドル安期待を覆すような流れにはならないであろう。ドル円に関しては少なくとも105円は強い上値抵抗として機能しそうだ。逆に弱い数字であれば、ドル安が加速する可能性も留意される。直近発表の米新規失業保険申請件数からは強い数字は期待しづらいが、米雇用統計ばかりは開けてみないとわからない指標の1つではある。
来週は、場合によっては102円台を触る可能性も警戒したい。
来週のドル円の想定レンジだが、102.50円~105.00円を想定。スタンスは「中立」から「やや弱気」に落としたい。
()は前週
◆ドル円(USD/JPY)
中期 下げトレンド継続
短期 ↓↓(→)
◆ユーロ円(EUR/JPY)
中期 中立継続
短期 ↑↑(↑↑)
◆ポンド円(GBP/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑(↑↑)
◆豪ドル円(AUD/JPY)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑(↑↑)
◆ユーロドル(EUR/USD)
中期 中立から上へトレンド変化
短期 ↑↑(↑)
◆ポンドドル(GBP/USD)
中期 上げトレンド継続
短期 ↑↑↑(↑↑↑)
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次回の配信は12月12日(土)の午前を予定しています。
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MINKABU PRESS編集部 野沢卓美
このニュースはみんかぶ(FX/為替)から転載しています。
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