【来週の注目材料】前回節目を超えたISM製造業・非製造業、好調を維持か?

著者:MINKABU PRESS
投稿:2020/08/01 17:10
 米国はサンベルト地域(米国の北緯37度線以南の地域、フロリダ、テキサス、カリフォルニアの南部、アリゾナなどの州で温暖な気候が特徴)を中心に、新型コロナウイルスの感染拡大が依然としてかなり深刻。テキサス州、フロリダ州などで新型コロナによる死者数が過去最多を更新する状況となっています。米経済への影響も深刻で、30日に発表された米第2四半期GDP速報値は前期比年率で-32.9%と統計を開始した1947年以降で最大のマイナス幅を記録しました。これまでの最悪は1958年第1四半期の-10%、リーマンショックの時でも-8.4%にとどまっていますので、記録的な悪化といえます。第1四半期も2月後半から広がった感染拡大の影響で-5.0%とマイナス圏を記録しており、いわゆるリセッション(景気後退)となっています。
 ロックダウン解除などの影響で、第3四半期以降はプラス圏への回復が見込まれており、米議会予算局(CBO)は第3四半期のGDPは前期比年率+21.5%を見込んでいます。ただ、落ち込み幅が大きいこともあり、20年通年での成長率を-5.6%と見込むなど、米経済はかなり厳しい状況です。
 新型コロナウイルスの感染第二波の動きがさらに強まり、ロックダウン再開などが本格化すると、再び経済が大きく落ち込む可能性があるだけに、市場は慎重に状況をみています。

そうした中、今週は米経済動向を見据えるうえで重要な指標が目白押しとなっています。特に注目は3日の米ISM製造業景気指数、5日の同非製造業景気指数、7日の米雇用統計(いずれも6月)です。

ISM製造業景気指数は4月分が41.5とリーマンショック時以来11年ぶりの低水準に落ち込みましたが、その後2カ月連続で回復し、前回6月分は予想の49.5を超える52.6を記録。好悪判断の境である50も上回る好結果となりました。5月からの9.5ポイントの上昇は、1980年8月以来の大幅上昇となります。
内訳をみますと新規受注が56.4と5月から24.6ポイントの大幅上昇。1948年に同統計が開始して以来最大の上げ幅を記録しました。生産も57.3と5月から24.1ポイントの大幅上昇となりました。雇用も5月から10ポイントの大幅上昇となりましたが、水準的には42.1と好悪判断の境である50がまだ遠く、これまでの雇用市場の厳しい状況が意識されました。
なお、2カ月連続で低下することで、逆に好印象を与えたのが入荷遅延です。通常は好況期に多忙から配送が遅延することで、遅延指数が高いことが良い数字となっていますが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて物流が滞っていることによる遅延が発生しており、各指数が軒並み低い数字となった4月に76.0まで大きく上昇しました。この2カ月の大幅低下で56.9まで下がっており、物流正常化への期待につながっています。

ISM非製造業景気指数も4月に41.8まで落ち込んでいましたが、2カ月連続の改善で、前回6月分は予想の50.2を大幅に超える57.1の好結果を記録しました。5月の45.4から11.7ポイントの上昇幅は統計開始以来最大となります。
製造業同様に新規受注の伸びが激しく、61.6と5月から19.7ポイントの上昇。景況感は66.0と5月から25ポイントも伸びています。雇用は5月から11.3ポイントの大幅上昇も、43.1と製造業同様に50がまだ遠いという状況です。

こうした状況をみると、現状でまだ回復途上なのが雇用。その他部門に関しては、いったんは新型コロナ懸念が一服しており、今後への期待が広がるという印象でした。

ただ、その後新型コロナウイルスの感染第二波への懸念が強まる中で、今回の予想が気になるところ。製造業の予想は53.6と前回から若干の上昇も、非製造業は55.0と前回から鈍化が見込まれています。ただ、非製造業に関しては前回が上がりすぎという面があり、製造業・非製造業ともに50をしっかり超える水準が見込まれているだけに、予想前後であれば米景気回復への期待は継続といったところになりそうです。

MINKABU PRESS 山岡和雅

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