■中長期の成長戦略
(2) IT業界の人手不足への対応
厚生労働省が2019年5月に調査した「労働者過不足判断D.I.」によれば、情報通信業の指数は、リーマンショック前の2008年2月調査の39を大きく上回る56となり、人手不足感が一層強まっている。経済産業省は、現在のIT人材数の約90万人に対し、不足数は約17万人と推計している。人材供給が2019年にピークを付ける一方、IT需要は拡大し続けるため、不足数は2020年に36.9万人、2030年に78.9万人に上ると推計している。
ランドコンピュータ<3924>にとっても人手があればいくらでも受注が増やせる状況にあるが、業界における人材争奪戦が激化している。新卒採用に関しては、2018年5月の東証1部への指定替えによる好影響が期待できそうだ。さらに、従業員のモチベーションを高めるため、給与制度の見直しに着手している。次期事業部長候補の育成・研修を行う課長制を取り入れたのに続き、主任制の導入によりチームリーダーを育成し、きめ細かいプロジェクトマネジメントが行えるようにする。戦略的な採用計画に基づく優秀な人材の確保をする一方、管理本部内に「働き方改革推進室」を新たに設置し、ワークライフバランス推進による働きがいのある職場づくりに努める。
3) 高成長サービスラインの事業戦略
高成長サービスラインは、人員に依存しないビジネスに注力する。高成長の実現を目指すパッケージベースSI・サービスは、Salesforce関連の導入支援やカスタマイズの大型案件を開拓する。新たなシステム・パッケージベンダのシステムインテグレータの開拓では、クラウドコンピューティングサービスを利用したパッケージを検討している。また、自社アプリケーション開発による課金ビジネスをスタートさせ、人員にリンクしないビジネスの拡大を図る。
3. マネジメント改革
収益向上のため、マネジメント改革を行う。それらは、「見積り精度向上」「プロジェクト品質向上」「不採算プロジェクト撲滅」「組織強化」により構成される。なかでも「見積り精度の向上」を最重要課題としており、プロジェクト完了時の見積り精度評価を実施し、見積り実績データの蓄積と今後の見積りへのフィードバックをする。「プロジェクト品質の向上」では、プロジェクトの品質管理とプロセスの標準化を推進する。プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)主導により、品質管理や標準化及びプロジェクトマネージャ育成を行い、これにより上級プロジェクトマネージャの知見を同社の管理システムに組み込むことができた。プロジェクトマネジメント力の強化のため、PMP資格の取得推進、ロードマップに沿った組織的なプロジェクトマネージャやプロジェクトリーダーの育成を行う。アジャイル型のパッケージベースSI・サービスであっても、大口案件に関してはウォーターフォール型と同様に要件定義をきっちり行い、不採算プロジェクトの撲滅を図る。
新規事業にビジネスインキュベーション推進部を設立
4. 独自性に関する戦略
独自性に関する成長戦略は、優秀な人材確保と育成である。同社資産(2019年3月期)の89.5%を流動資産が占め、固定資産は10.5%でしかない。人材こそがアセットであり、売上高と利益を生み出す源泉となる。プロジェクトマネジメント力の強化の一環として、PMP資格の取得推進をしている。人材強化に対する投資として、「プロジェクトマネジメント力の強化」「スペシャリストの育成」「人材の確保」「パートナー制度の強化」に取り組む。
ITサービス業界では顧客ニーズがウォーターフォール開発の「受託開発物の納品」からアジャイル開発の「顧客価値の創造」にシフトしつつあり、「受託システム開発型」から「提案サービス提供型」へのビジネスモデルの転換が求められる。顧客は、ITシステムに関して「ハードウェアの所有」や「システムの開発」から、クラウドコンピューティングの浸透もあり、システムを所有せずに「利用する」に移行しつつある。同社は、IT技術と顧客業務ノウハウの両面について高度な専門知識を持つスペシャリストの育成に努める。そのような人材が市場競争力の源泉となる。優れた要件定義ができ、顧客満足度も高めることができる。
そこで同社では、2018年4月に「ビジネスインキュベーション推進部」を設立し、従来の延長上にない新規事業の創出に注力し始めた。
また、アプリケーション開発推進室を中心に、IoT、AI、ブロックチェーンなどの新しいデジタル技術の習得を進めている。AIに関しては、チャットボット関連の自然言語分析に続き、音声や映像分野への拡大を図る。画像認識では、医療向けで大手企業と組み、商社とはIoTを利用した産業用ロボットや物流設備における自動仕分けにAIを活用する。技術的変化が大きな社会変革につながるため、政府は「Society 5.0」のビジョンを発表している。技術革新が加速するため、ITシステム開発は従来のウォーターフォール型では対応できず、アジャイル開発が活用される案件が増加することが見込まれている。大手システムインテグレータでも取り組んでおり、同社も技術習得に余念がない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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(2) IT業界の人手不足への対応
厚生労働省が2019年5月に調査した「労働者過不足判断D.I.」によれば、情報通信業の指数は、リーマンショック前の2008年2月調査の39を大きく上回る56となり、人手不足感が一層強まっている。経済産業省は、現在のIT人材数の約90万人に対し、不足数は約17万人と推計している。人材供給が2019年にピークを付ける一方、IT需要は拡大し続けるため、不足数は2020年に36.9万人、2030年に78.9万人に上ると推計している。
ランドコンピュータ<3924>にとっても人手があればいくらでも受注が増やせる状況にあるが、業界における人材争奪戦が激化している。新卒採用に関しては、2018年5月の東証1部への指定替えによる好影響が期待できそうだ。さらに、従業員のモチベーションを高めるため、給与制度の見直しに着手している。次期事業部長候補の育成・研修を行う課長制を取り入れたのに続き、主任制の導入によりチームリーダーを育成し、きめ細かいプロジェクトマネジメントが行えるようにする。戦略的な採用計画に基づく優秀な人材の確保をする一方、管理本部内に「働き方改革推進室」を新たに設置し、ワークライフバランス推進による働きがいのある職場づくりに努める。
3) 高成長サービスラインの事業戦略
高成長サービスラインは、人員に依存しないビジネスに注力する。高成長の実現を目指すパッケージベースSI・サービスは、Salesforce関連の導入支援やカスタマイズの大型案件を開拓する。新たなシステム・パッケージベンダのシステムインテグレータの開拓では、クラウドコンピューティングサービスを利用したパッケージを検討している。また、自社アプリケーション開発による課金ビジネスをスタートさせ、人員にリンクしないビジネスの拡大を図る。
3. マネジメント改革
収益向上のため、マネジメント改革を行う。それらは、「見積り精度向上」「プロジェクト品質向上」「不採算プロジェクト撲滅」「組織強化」により構成される。なかでも「見積り精度の向上」を最重要課題としており、プロジェクト完了時の見積り精度評価を実施し、見積り実績データの蓄積と今後の見積りへのフィードバックをする。「プロジェクト品質の向上」では、プロジェクトの品質管理とプロセスの標準化を推進する。プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)主導により、品質管理や標準化及びプロジェクトマネージャ育成を行い、これにより上級プロジェクトマネージャの知見を同社の管理システムに組み込むことができた。プロジェクトマネジメント力の強化のため、PMP資格の取得推進、ロードマップに沿った組織的なプロジェクトマネージャやプロジェクトリーダーの育成を行う。アジャイル型のパッケージベースSI・サービスであっても、大口案件に関してはウォーターフォール型と同様に要件定義をきっちり行い、不採算プロジェクトの撲滅を図る。
新規事業にビジネスインキュベーション推進部を設立
4. 独自性に関する戦略
独自性に関する成長戦略は、優秀な人材確保と育成である。同社資産(2019年3月期)の89.5%を流動資産が占め、固定資産は10.5%でしかない。人材こそがアセットであり、売上高と利益を生み出す源泉となる。プロジェクトマネジメント力の強化の一環として、PMP資格の取得推進をしている。人材強化に対する投資として、「プロジェクトマネジメント力の強化」「スペシャリストの育成」「人材の確保」「パートナー制度の強化」に取り組む。
ITサービス業界では顧客ニーズがウォーターフォール開発の「受託開発物の納品」からアジャイル開発の「顧客価値の創造」にシフトしつつあり、「受託システム開発型」から「提案サービス提供型」へのビジネスモデルの転換が求められる。顧客は、ITシステムに関して「ハードウェアの所有」や「システムの開発」から、クラウドコンピューティングの浸透もあり、システムを所有せずに「利用する」に移行しつつある。同社は、IT技術と顧客業務ノウハウの両面について高度な専門知識を持つスペシャリストの育成に努める。そのような人材が市場競争力の源泉となる。優れた要件定義ができ、顧客満足度も高めることができる。
そこで同社では、2018年4月に「ビジネスインキュベーション推進部」を設立し、従来の延長上にない新規事業の創出に注力し始めた。
また、アプリケーション開発推進室を中心に、IoT、AI、ブロックチェーンなどの新しいデジタル技術の習得を進めている。AIに関しては、チャットボット関連の自然言語分析に続き、音声や映像分野への拡大を図る。画像認識では、医療向けで大手企業と組み、商社とはIoTを利用した産業用ロボットや物流設備における自動仕分けにAIを活用する。技術的変化が大きな社会変革につながるため、政府は「Society 5.0」のビジョンを発表している。技術革新が加速するため、ITシステム開発は従来のウォーターフォール型では対応できず、アジャイル開発が活用される案件が増加することが見込まれている。大手システムインテグレータでも取り組んでおり、同社も技術習得に余念がない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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