■三和ホールディングス<5929>の中期長期の成長戦略と進捗状況
2. コアビジネスの事業領域拡大と強化
(1) 日本
日本国内市場は少子・高齢化や人口減少の結果、労務コストが高騰している状況にある。一方でオフィス建て替え需要や増加する外国人観光客への対応を背景として建設投資は高水準が続くと期待されている。
こうした事業環境のなか、国内事業の成長戦略は基本的には第二次3ヵ年経営計画と変わっていないと弊社では理解している。基幹事業(軽量・重量シャッター、シャッター関連製品、及びドア製品)では、“シェアアップ”を成長戦略の核として臨む方針だ。建設投資は高水準とはいえ、成熟市場である国内市場ではパイの拡大を期待しくいことが背景にある。シェアアップのための具体策としては、商品力の強化や営業体制の強化などが中心になる見通しだ。国内のグループ会社では、これに加えて、多品種化すなわち取扱商品の拡大や、シナジーの追求、国内グループ会社の最適化(営業地域や生産品目の区割りの変更など。2019年3月期のベニックスと三和システムウォールの役割分担の見直しのようなケースが1つの例)などにも取り組む方針だ。
また、後述するサービス分野の強化とも一部重なるが、メンテ・サービス収入の拡大も重要なテーマだ。これについては防火シャッターや防火ドアといった防火設備の検査法制化が1つの転換点となった。これは2016年6月に施行されたが当初の3年間は移行期間で、2019年6月から完全施行されるという流れとなっている。同社はこの移行期間においてシェア50%の獲得を目指して精力的に活動してきたが、目標を達成した。この過程で獲得した顧客関係をベースに、2019年6月からの完全施行に際しては更なるシェア拡大を目指すとともに、検査の次の段階である補修・改修といった需要を取り込み、収益拡大につなげる方針だ。
以上は主としてトップライングロース(売上高の拡大)に向けた取り組みであるが、弊社では第三次中期経営計画における国内事業での最大の課題は、利益確保のための体質強化だと考えている。より具体的には、2019年3月期にあったような突発的な環境変化に際しても、工程管理、コスト管理を着実に行い所期の利益を実現できる体制の構築ということだ。同社自身、2019年3月期の反省を踏まえて新たな物流管理システムを2020年3月期の下期に稼働させる計画で準備を進めているが、それにとどまらず、工場生産体制(個々の工場単位での強化に加えて、複数の工場間での連携の強化も含む)や、現場での取付工事など、受注から納品までのプロセス全般にわたりプロジェクトマネジメント(工程管理)能力を一段と充実させることが重要だと考えられる
この点について同社は、リードタイムの長期化、計画生産の比率の上昇、工場間での応援生産体制の見直しと拡充、物流におけるデポ(仮置き場)の拡充、工事を担当する職人育成や専従の施行会社の確保、といったテーマをピックアップし、それぞれの改善に取り組んでいる。完了したものから順次稼働させているとみられる。
2020年3月期はいわゆるオリンピック特需の最後のステージに当たる。近年は大きな自然災害が毎年のように発生しているほか、一部建設資材の不足等により、工事が突然停滞・遅延に見舞われる事例も多発している。“突発的な事態”が恒常的に起こっている状況でもある。こうした、ある意味では非常に難しい事業環境のなか、同社が改善された対応力を生かしてどのように収益を確保するか注目したい。
(2) 米国
ODCが担う米国市場では、第二次3ヵ年計画においては“コア事業の拡大と基盤強化による成長”をスローガンに、ドア部門(製品タイプとしてはシャッターやオーバーヘッドドア)の強化や川下事業戦略、開閉機事業の強化に取り組んできた。この点は第三次中期経営計画にも引き継がれている(これらの内容の詳細は2018年6月26日付レポート参照)。
第三次中期経営計画では『コア事業の維持・拡大と共に、周辺事業分野への参入』をスローガンに掲げている。第二次3ヵ年経営計画までの施策を継続しながら、さらに、新規事業として周辺事業分野への参入を目指すということだ。具体的には、ドックレベラーやセキュリティ関連商品、アクセスコントロール機器、ゲート開閉機などの領域への進出を念頭に置いているもようだ。
これらのうちドッグレベラーは、欧州事業で大きな成功を収めていることから北米でも自社で展開していくとみられる。それ以外の製品領域については、M&Aでの良い案件があれば前向きに検討していくというスタンスとみられる(M&Aについては相手があることでタイミングも含めて予想が困難であるため、業績予想には織り込んでいない)。
弊社では、北米についても、国内と同様、利益を着実に確保するための体制作りが第三次中期経営計画の2年間の最重要課題だと考えている。北米市場は、マクロ経済が底堅く推移しているものの、住宅・非住宅ともに2018年後半は成長が減速した。こうした市場要因に、同社の内部的なミスに伴う一時的費用の発生が加わり、2018年下期のODCの営業利益は、前年同期比6.5%の減益となった。こうした事態を未然に防ぐ体制の確立こそがグローバル・メジャーとしてのトップブランドの基盤を確立することだと考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
<SF>
2. コアビジネスの事業領域拡大と強化
(1) 日本
日本国内市場は少子・高齢化や人口減少の結果、労務コストが高騰している状況にある。一方でオフィス建て替え需要や増加する外国人観光客への対応を背景として建設投資は高水準が続くと期待されている。
こうした事業環境のなか、国内事業の成長戦略は基本的には第二次3ヵ年経営計画と変わっていないと弊社では理解している。基幹事業(軽量・重量シャッター、シャッター関連製品、及びドア製品)では、“シェアアップ”を成長戦略の核として臨む方針だ。建設投資は高水準とはいえ、成熟市場である国内市場ではパイの拡大を期待しくいことが背景にある。シェアアップのための具体策としては、商品力の強化や営業体制の強化などが中心になる見通しだ。国内のグループ会社では、これに加えて、多品種化すなわち取扱商品の拡大や、シナジーの追求、国内グループ会社の最適化(営業地域や生産品目の区割りの変更など。2019年3月期のベニックスと三和システムウォールの役割分担の見直しのようなケースが1つの例)などにも取り組む方針だ。
また、後述するサービス分野の強化とも一部重なるが、メンテ・サービス収入の拡大も重要なテーマだ。これについては防火シャッターや防火ドアといった防火設備の検査法制化が1つの転換点となった。これは2016年6月に施行されたが当初の3年間は移行期間で、2019年6月から完全施行されるという流れとなっている。同社はこの移行期間においてシェア50%の獲得を目指して精力的に活動してきたが、目標を達成した。この過程で獲得した顧客関係をベースに、2019年6月からの完全施行に際しては更なるシェア拡大を目指すとともに、検査の次の段階である補修・改修といった需要を取り込み、収益拡大につなげる方針だ。
以上は主としてトップライングロース(売上高の拡大)に向けた取り組みであるが、弊社では第三次中期経営計画における国内事業での最大の課題は、利益確保のための体質強化だと考えている。より具体的には、2019年3月期にあったような突発的な環境変化に際しても、工程管理、コスト管理を着実に行い所期の利益を実現できる体制の構築ということだ。同社自身、2019年3月期の反省を踏まえて新たな物流管理システムを2020年3月期の下期に稼働させる計画で準備を進めているが、それにとどまらず、工場生産体制(個々の工場単位での強化に加えて、複数の工場間での連携の強化も含む)や、現場での取付工事など、受注から納品までのプロセス全般にわたりプロジェクトマネジメント(工程管理)能力を一段と充実させることが重要だと考えられる
この点について同社は、リードタイムの長期化、計画生産の比率の上昇、工場間での応援生産体制の見直しと拡充、物流におけるデポ(仮置き場)の拡充、工事を担当する職人育成や専従の施行会社の確保、といったテーマをピックアップし、それぞれの改善に取り組んでいる。完了したものから順次稼働させているとみられる。
2020年3月期はいわゆるオリンピック特需の最後のステージに当たる。近年は大きな自然災害が毎年のように発生しているほか、一部建設資材の不足等により、工事が突然停滞・遅延に見舞われる事例も多発している。“突発的な事態”が恒常的に起こっている状況でもある。こうした、ある意味では非常に難しい事業環境のなか、同社が改善された対応力を生かしてどのように収益を確保するか注目したい。
(2) 米国
ODCが担う米国市場では、第二次3ヵ年計画においては“コア事業の拡大と基盤強化による成長”をスローガンに、ドア部門(製品タイプとしてはシャッターやオーバーヘッドドア)の強化や川下事業戦略、開閉機事業の強化に取り組んできた。この点は第三次中期経営計画にも引き継がれている(これらの内容の詳細は2018年6月26日付レポート参照)。
第三次中期経営計画では『コア事業の維持・拡大と共に、周辺事業分野への参入』をスローガンに掲げている。第二次3ヵ年経営計画までの施策を継続しながら、さらに、新規事業として周辺事業分野への参入を目指すということだ。具体的には、ドックレベラーやセキュリティ関連商品、アクセスコントロール機器、ゲート開閉機などの領域への進出を念頭に置いているもようだ。
これらのうちドッグレベラーは、欧州事業で大きな成功を収めていることから北米でも自社で展開していくとみられる。それ以外の製品領域については、M&Aでの良い案件があれば前向きに検討していくというスタンスとみられる(M&Aについては相手があることでタイミングも含めて予想が困難であるため、業績予想には織り込んでいない)。
弊社では、北米についても、国内と同様、利益を着実に確保するための体制作りが第三次中期経営計画の2年間の最重要課題だと考えている。北米市場は、マクロ経済が底堅く推移しているものの、住宅・非住宅ともに2018年後半は成長が減速した。こうした市場要因に、同社の内部的なミスに伴う一時的費用の発生が加わり、2018年下期のODCの営業利益は、前年同期比6.5%の減益となった。こうした事態を未然に防ぐ体制の確立こそがグローバル・メジャーとしてのトップブランドの基盤を確立することだと考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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